タンパク質を構成しないアミノ酸
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アミノイソ酪酸

デヒドロアラニン

双子アミノ酸の立体中心

L-α-アミノ酸の一部では、2つの末端のどちらがα炭素であるかについては曖昧である。タンパク質中では、システイン残基は他のシステイン残基とジスルフィド結合を形成して、タンパク質を架橋することができる。2つの架橋したシステインは、シスチン分子を形成する。システインとメチオニンは、一般的には直接のスルフリル化で形成されるが、いくつかの種はトランススルフレーション経路で形成され、ここでは活性化されたホモセリンまたはセリンがシステインまたはホモシステインと融合してシスタチオニンを形成する。似た化合物にランチオニンがあり、2つのアラニン分子がチオエステル結合で結合したもので、様々な生物で見られる。同様に、ジリンマメの毒であるジェンコル酸では、2つのシステインがメチレン基で繋がっている。ジアミノピメリン酸は、ペプチドグリカンの架橋や脱炭酸によりリシンの前駆体として用いられる。

シスチン

シスタチオニン

ランチオニン

ジエンコル酸

ジアミノピメリン酸

生物誕生前のアミノ酸と代替生化学「代わりの生化学」も参照

隕石中やユーリー-ミラーの実験等の生物誕生以前の環境を再現する実験では、20種類よりも多くのアミノ酸が見られ、その中のいくつかは標準よりも高い濃度となった。ここから、宇宙のどこかでアミノ酸を基盤とする生命が全く別に現れたとしても、共通するアミノ酸は高々75%に過ぎないことが予測される[7]。最も顕著なのは、アミノ酪酸が欠けていることである。

グリシンに対する割合 (%)
分子放電による生成割合マーチソン隕石内の割合
グリシン100100
アラニン18036
α-アミノ-n-酪酸6119
ノルバリン1414
バリン4.4
ノルロイシン1.4
ロイシン2.6
イソロイシン1.1
アロイソロイシン1.2
tert-ロイシン< 0.005
α-アミノ-n-ヘプタン酸0.3
プロリン0.322
ピペコリン酸0.0111
α,β-ジアミノプロピオン酸1.5
α,γ-ジアミノ酪酸7.6
オルニチン< 0.01
リシン< 0.01
アスパラギン酸7.713
グルタミン酸1.720
セリン1.1
トレオニン0.2
アロトレオニン0.2
メチオニン0.1
ホモシステイン0.5
ホモセリン0.5
β-アラニン4.310
β-アミノ-n-酪酸0.15
β-アミノイソ酪酸0.57
γ-アミノ酪酸0.57
α-アミノイソ酪酸733
イソバリン111
サルコシン12.57
N-エチルグリシン6.86
N-プロピルグリシン0.5
N-イソプロピルグリシン0.5
N-メチルアラニン3.43
N-エチルアラニン< 0.05
N-メチル-β-アラニン1.0
N-エチル-β-アラニン< 0.05
イソセリン1.2
α-ヒドロキシ-γ-アミノ酪酸17

直鎖状側鎖

遺伝コードについては、進化の過程で遺伝コードが成立する際に偶然決まり、そのまま現在まで凍結されたものだとする偶然凍結説が提唱されており、20種類の標準アミノ酸の中で直鎖状の側鎖を持つものがアラニンのみである理由は、単純にバリンロイシンイソロイシンの冗長さのためかもしれない[7]。しかし、直鎖状側鎖を持つアミノ酸は、より安定なαヘリックスを形成すると報告されている[12]

グリシン(水素側鎖)

アラニン(メチル側鎖)

α-アミノ酪酸(エチル側鎖)

ノルバリン(n-プロピル側鎖)

ノルロイシン(n-ブチル側鎖)

ホモノルロイシン(n-ペンチル側鎖)

カルコゲン

セリン、ホモセリン、O-メチルホモセリン、O-エチルホモセリンは、それぞれ、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、O-メチルヒドロキシメチル基、O-メチルヒドロキシエチル基を側鎖に持つ。一方、システイン、ホモシステイン、メチオニン、エチオニンは、それぞれのチオール置換体である。セレノール置換体は、セレノシステイン、セレノホモシステイン、セレノメチオニン、セレノエチオニンである。Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus、Penicillium chrysogenum等のいくつかの種は、硫黄のない環境では、テルロシステイン、テルロメチオニンを作ってタンパク質に取り込むことができる[13]

ヒドロキシル側鎖を持つヒドロキシグリシンは、非常に不安定である。
拡張遺伝コード詳細は「拡張遺伝コード」を参照
役割

細胞内、特に独立栄養生物の細胞内では、タンパク質を構成しないアミノ酸のいくつかは代謝中間体として見られる。しかし、多くのアミノ酸はケト酸として作られ、最後の段階でアミノ化されるため、タンパク質を構成しないアミノ酸が代謝中間体になることはかなり少ない。

オルニチンシトルリンは、アミノ酸異化の一部分である尿素回路で生成される[14]

一次代謝に加え、タンパク質を構成しないアミノ酸のいくつかは、小分子や非リボソームペプチドを作るための二次代謝の前駆体や最終生成物となる。
翻訳後のタンパク質への取込み「翻訳後修飾」、「リン酸化」、「ミリストイル化」、および「パルミトイル化反応」も参照

タンパク質を構成するアミノ酸のように遺伝コードでコードされていないが、非標準アミノ酸のいくつかはタンパク質中で見られる。これらは、タンパク質中の標準アミノ酸の側鎖が翻訳後修飾されたものである。このような翻訳後修飾は、しばしばタンパク質の機能や制御に必要なものである。例えば、グルタミン酸のカルボキシル化物であるγ-カルボキシグルタミン酸は、カルシウムカチオンとより結合しやすく[15]、プロリンのヒドロキシル化物であるヒドロキシプロリンは、結合組織コラーゲン)の維持に不可欠である[16]。他の例として、真核生物の翻訳開始因子EIF5Aに含まれるヒプシンは、リシン残基を修飾したものである[17]。このような修飾は、タンパク質の局在を決めることもある。例えば、長い疎水性の官能基が付加すると、タンパク質はリン脂質膜に結合しやすくなる[18]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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