アイスランド政府は、NATOのイギリス戦闘機を管制空域から締め出して国交を断絶するとほのめかした。9月16日にNATOの将軍がレイキャヴィークで交渉にあたった結果、10月にイギリス艦隊はすべて本国に帰還した。
1973年11月8日、アイスランドはイギリス船が50海里内の一部の水域でのみ操業することを認める協定を結び、第二次タラ戦争は終結した。これにはイギリスの年間漁獲量を13万トンまでに制限することが前提であり、また1975年11月までの暫定的なものだった。
同年、イギリスは欧州自由貿易連合(EFTA)を脱退し欧州経済共同体 (EEC) に加盟しているが、この紛争に非協力的だったのが一因とも言われている。 度重なる制限にもかかわらず、アイスランド近海の水産資源は回復傾向を見せず、1975年10月、アイスランドは自国の漁業専管水域を200海里へと拡大する新法を制定した。先の協定が期限満了を迎えた11月13日、両国の間でふたたび武力衝突が起こる。軍艦と警備艇同士の衝突はこれまでで最も激しかったが、やはり奇跡的に死者は出なかった。 1976年2月19日には遂にアイスランドはイギリスと国交断絶するに至る。NATO加盟国同士の国交断絶はこれが初の事例だった。一方で同月、EECはイギリスの主張に反してヨーロッパ全域に200海里排他的経済水域を設定することを決定。イギリスは梯子をはずされた形となる。 NATOの交渉により、同年6月1日、アイスランドの200海里内では、イギリス漁船は最大24隻まで操業可能、かつ年間の漁獲量は5万トンまでとする協定に両国が合意。翌2日に協定が発効し、両国の断絶関係も終了。一連の紛争は終結した。 この大幅な妥協による解決はイギリスの北洋漁業に大きな打撃を与え、1500人の漁師と、7500人の漁業関係者が解雇された。また、イギリスはフランスとの中間線を巡る裁判(英仏大陸棚事件)にも敗れ、フォークランド戦争で勝利するまで国民は長らく自信喪失の状態となった。 一方、勝利したにもかかわらずアイスランドでのタラ資源は大きな回復を見せなかった。現在でもカナダ沿岸を含む北大西洋のタラ漁船には、過去の漁獲量に応じて漁獲割り当てが決まるという強い制限がかけられている。この割り当てシステムは、漁師が超過を免れるため一度水揚げして死んだ魚を海に投棄する行為を引き起こしていると非難されている。 アイスランドの主張が認められたことを機に、世界各国は200海里排他的経済水域を設定。日本のような遠洋漁業を行う既存の漁業関係者は縮小を迫られることになった。漁業権を巡っての国際裁判も広く行われるようになる。
第三次タラ戦争
その後
参考資料
マーク・カーランスキー 『鱈 世界を変えた魚の歴史』 池央耿訳、飛鳥新社、1999年、ISBN 487031360X
グンナー・カールソン 『アイスランド小史』 岡沢憲芙、小森宏美訳、早稲田大学出版部、2002年、ISBN 4657027182
関連項目
タラ・タイセイヨウダラ
乱獲
北海大陸棚事件
ロブスター戦争 - ブラジル・ペルナンブーコ州沖合での漁業権を巡り、1961年から1963年にかけてブラジルとフランスの間で起きた紛争.
カラスガレイ戦争
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、タラ戦争に関するカテゴリがあります。
“The Cod War”. 2008年5月16日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2006年3月26日閲覧。
“Fisheries jurisdiction case: United Kingdom v. Iceland(1972年の裁判判決)”. Internet Guide to International Fisheries Law. 2007年10月10日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2006年2月18日閲覧。
典拠管理データベース: 国立図書館
⇒イスラエル
アメリカ
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