タバコ
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Nicotiana tabacum はリンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[4]

日本の法令上の平仮名表記は、たばこ事業法2条1号によりタバコ属の植物を指し、その葉は「葉たばこ」(同法2条2号)である。カタカナ表記は農作物として耕作し、葉たばこを得、それを原材料として製造たばこを得る基盤となるタバコ属の植物を指す。そして、その加工製品は製造たばこで、同法2条3号によって「葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、噛み用又は嗅ぎ用に供し得る状態に製造されたもの」と規定される。
名称・語源

日本語のタバコの直接の語源はスペイン語ポルトガル語の「tabaco」である。「NOVO DICIONARIO DA LINGUA PORTUGUESA」によるとタイノ族のtabacoに由来する語で、インディオのY字型の喫煙具のことを意味した[5]

スペイン語の「tabaco」自体の由来についてははっきりしない[6]。伝統的に行われている説としては、カリブ海で話されていたアラワク語族の言語の一種(おそらくタイノ語)でタバコの葉またはパイプを意味する語を借用したというものがあるが、「tabaco」の語は大航海時代以前の1410年ころからすでにスペインやイタリアで使われており、アラビア語で一種の薬草を意味した「?abb?q」または「?ubb?q」に由来するともいう[7]

この単語がフランス語では「tabac」、ドイツ語では「Tabak」、英語では「tobacco」となった。

日本ではスペイン語やポルトガル語の音に近い「タバコ」として広まった。漢字当て字としては「多巴古」、「佗波古」、「多葉粉」、「莨」、「淡婆姑」などが用いられる事があるが、「煙草」と書かれる事が最も多い。中国語では「香煙」と呼ぶ。なお、山口県の一部地域には「煙草谷」(たばこたに)という姓がある。
生物的特徴タバコの果実タバコの種子

タバコはナス科タバコ属(Nicotiana)の南アメリカの熱帯原産の植物である[1]。栽培種としては一年草として扱われているが、原産地ではもともと多年草である[1]

タバコ属には約50の種が含まれるが、大規模に栽培される種は、タバコの他とNicotiana rustica(ルスティカタバコ、マルバタバコ)の2種に限られる。Nicotiana tabacumはシルベストリス(N-sylvestris)という野生種と、トメントシフォルミス (N-tomentosiformis) など、トメントーサ節の野生種とを祖先とする複二倍体である[8]

タバコの種子の形状は回転楕円体である。質量は約50 μg。タバコの種子は光を感知するため発芽には太陽光が必要である。発芽温度は25℃である。

成長すると茎は直立して草丈はおよそ 2 mになる[1]。茎は繊維質で、薪などの代わりとして炊事などに利用されてきたが、電気やガスの普及に伴い利用価値は無くなっており、そのまま次期の肥料として畑に廃棄される。

葉は約30 cmの大きさの楕円形[1]。葉は30枚から40枚が着生し、このうち、葉たばことして採取するのは約6割である。これは位置によってニコチンの含有量が異なるためである。日本国内では葉を5種類に区別し、上から上葉・本葉・合葉・中葉・下葉と呼ぶ。上葉は6%程度、下葉は1%程度のニコチンを含む。葉の長さは20 cmから60 cm、幅は10 cmから30 cm程度である。葉の表面には液を分泌する細胞があり、特有の臭気を帯びる。また、葉には腺毛が多数あり、空気中のポロニウム210を吸着することが知られている[9]

花は夏期に総状花序で茎の先端部分に付く[1]。花冠の形状は漏斗に似ており先端が五裂する[1]。色は種類によって異なるが、栽培種では基部がく、先端は淡紅色のものが多い[1]。果実1つ当り3000粒程度の種子を含む。
毒性

全草にニコチンを含んでおり、誤食すると嘔吐や下痢などの症状を起こす[1]。また、誤食により筋肉の痙攣や麻痺といった症状が現れることがある[1]

この毒性によって、虫害が防がれる[10]。喫煙による影響については「喫煙」を参照
関連する名前

葉がタバコに似ているところから名付けられたものに以下のようなものがある。

イワタバコイワタバコ科

ヤブタバコキク科

栽培たばこ畑(関東地方 6月伊江島のタバコ畑
品種

先述のように喫煙用の葉タバコの主な栽培種には Nicotiana tabacum(ニコチアナ・タバカム)と Nicotiana rustica(ニコチアナ・ルスチカ) の2種がある[11][12]

葉タバコの主な品種にはNicotiana tabacum 種(ニコチアナ・タバカム)に属する黄色種とバーレー種、さらにオリエント種などがあり、世界の生産量は黄色種が約6割、バーレー種が1割強、オリエント種が1割弱、残り2割が在来種とその他品種となっている[11][12]

黄色種 - 葉は肉厚で鮮明な黄色を呈しており還元糖の糖含量が高い品種[11][12]。温帯地域を中心に世界でも最も多く栽培されている品種[11][12]

バーレー種 - 葉肉は薄く乾燥した葉は褐色[11][12]。黄色種よりも冷涼な地域で栽培されている品種[11][12]

オリエント種 - 草丈が低く葉も小さい品種[11][12]。主に地中海性気候の石灰岩地帯で栽培され、日本ではほとんど栽培されていない[11][12]

葉タバコの栽培ステージは発芽期、育苗期、茎葉展開期、開花摘芯期、葉肥大期、成熟収穫期からなる[11]。なお、ナス科の植物なので同じ畑で連続して栽培すると連作障害を起こし収量が減る。
発芽期?育苗期

タバコの種子は直径約0.5oと非常に小さく粗挽きのコーヒー粉に似ている[11][12]。非常に微細で初期成長も緩慢なため、圃場に直播きせず、ビニールハウス内の親床で育苗してから定植する[11][12]。種子には土が被らないようにし、24?27°Cに保温して水をまき湿潤環境を保てば7?10日で発芽する[11]

発芽から定植までの期間を育苗期といい、発芽20?25日後に親床または育苗箱から健壮な苗を選んで「子床」に移し育苗してから定植する方法と、最初から苗床に播種して7?8枚の葉が展開するまで育てて圃場に定植する方法がある[11]
茎葉展開期?開花摘芯期

定植7?10日後に苗が活着すると茎葉展開期となって生育が早くなり、50?60日後には茎の先端部分に花枝が現れ開花期に入る[11]。しかし、葉に充分な栄養を行き渡らせる必要があるため、開花直後に「心止め」と呼ばれる花枝を含む花全体を摘み取る摘芯作業を行う[11][12]
葉肥大期?成熟収穫期

摘芯後は葉肥大期と呼ばれ腋芽を随時に摘み取りながら葉の成長を促すと上部の葉が大きく厚く成長する[11]

葉が成熟して黄色に変化し始めると成熟収穫期となる[11]。黄色種では成熟の進行が始まる下位葉から順次着位別(下葉、中葉、合葉、本葉、上葉)に4?5回に分け収穫する[11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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