タコ
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タコ墨はイカ墨よりアミノ酸や多糖類、脂質が少なくさらさらしている[3]。タコはさらさらの墨を煙幕のように利用しており敵を一時的に麻痺させる成分を含んでいる(イカの場合は墨の塊を出現させ敵から逃げる)[3]。タコ墨が料理にあまり用いられないのは、イカ墨と比べて墨汁嚢が取り出しにくく、さらに1匹から採れる量もごく少量であることが理由である[7]

外敵に襲われた際、捕らえられた腕を切り離して逃げることができ、その後、腕は再生するが、切り口によって2本に分かれて生えることもあり、8本以上の腕を持つタコも存在する。極端なものでは、日本で96本足のあるタコが捕獲されたことがあり、三重県の志摩マリンランドに標本として展示されていた。志摩マリンランドの休館により2022年現在では同県の鳥羽水族館で展示されている。

マダコでは自分の腕を食べる行動が観察されている。この行動は何らかの病原体によって引き起こされると考えられており、腕を食べ始めたタコは数日以内に死亡する[8]
吸盤タコの吸盤

オスは4本の腕の吸盤の大きさが、メスに比べてばらつきがある。タコの吸盤は、たいていのものには吸着できる。切断された腕であってもその活動は約1時間続く。しかし、タコの吸盤は切断されたものであっても、自分の体には吸着することはなく、この原理については判明していない。ただしタコの皮膚を取り除き、同じタコの腕を切断して近づけると、その腕の吸盤は皮膚を除去した部分に吸着する。また皮膚を貼り付けた物体に、切断されたタコの腕を近づけると、その部分にはくっつかず、皮膚のない場所にはくっつくという現象が確認できることから、皮膚に何らかの自己認識機構が存在するという説がある[9]。吸盤には味覚を司る感覚器があるとされる[4]。吸盤の表面は古くなると剥がれて更新される。古い吸盤表面を剥がすために激しく腕をくねらせて互いにこすり合わせることがある。種類の異なる2枚の貝殻を組み合わせ、護身用として持ち歩くメジロダコ
東ティモールディリ県近海にて2006年撮影。

タコの吸盤は主に筋肉の収縮を利用しており、歯の付いた角質の環を利用することで張り付くイカの吸盤とは構造が異なる[3]
生殖と寿命

8本の触腕のうち1本は交接腕と呼ばれ、先端が生殖器になっている。これがメスの体内に挿入され精莢が受け渡されることで受精が成立する[10]。たいていのタコの雌は、生涯に1回のみ産卵し[4]、卵が孵化したのちに死んでしまう[4]。タコでは平衡石を用いた年齢推定が行えないため、一部の種を除いて、どれくらい生きるのかはわかっていない[11]
認知能力・感受性

タコの脳には 5 億個のニューロンがあり、犬や 3 歳の子供と同じくらいの知能で[12]、一説には最も賢い無脊椎動物であるとされている[13][14]。形を認識することや、問題を学習し解決することができる。例として、密閉されたねじぶた式のガラスびんに入った餌を視覚で認識し、ビンの蓋をねじって餌を取ることができる。また、白い物体に強い興味を示す。身を守るためには、保護色に変色し、地形に合わせて体形を変える、その色や形を2年ほど記憶できることが知られている。また、1998年には、インドネシア近海に棲息するメジロダコ(en。右列に関連する画像あり)が、人間が割って捨てたココナッツの殻を組み合わせて防御に使っていることが確認され[4]2009年12月、「無脊椎動物の中で道具を使っていることが判明した初めての例」として、イギリス科学雑誌『カレント・バイオロジー (Current Biology) 』に特集され[15][16][17][18]二枚貝貝殻や持ち運び可能な人工物を利用して身を守る様子が詳しく紹介された。(動物の道具使用については別項「文化 (動物)」も参照のこと)。

2021年、イギリスの専門家チームは、300以上の科学的研究を調査に、タコは「感性のある存在」であり、喜び、興奮だけでなく、痛み、苦痛、害も経験できるという「強力な科学的証拠」があると結論付けた[19]。この調査を受け、2021年11月に、イギリス政府の審査委員会は「タコやカニや大型エビにも苦痛の感覚がある」として、同国で審議されている動物福祉法案の保護対象に感覚をもつ動物として追加した[20]

前述の報告書の著者らは、次のように述べ、高い動物福祉が要求されるタコ養殖は「不可能」としている[21]

大量のタコは決して近接して一緒に飼うべきではありません。これをすると、ストレス、衝突、高い死亡率につながります...死亡率10?15%という数字は、どんな種類の養殖でも受け入れられるものではありません。

また、タコの商業養殖の実現が間近となっていることを受け、イギリス政府は将来「輸入養殖タコの禁止を検討する可能性がある」ともいう[20]。アメリカのワシントン州は世界で初めてタコ養殖を法的に禁止[22]カリフォルニア州ハワイ州では、タコの養殖を禁止する法案が提出されている[23]
睡眠

タコは2つの睡眠段階を持ち、そのうちの1つはレム睡眠に相当することが発見された[24][25][26]。この段階では、タコは体色や筋肉の動きを変えることがあり、「夢」を見ている可能性がある[24][25][26]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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