タケノコの加工品としては、水煮の缶詰がある。タケノコの水煮は、春の旬の時期以外でも通年市販されており、南九州で多く出回っている細いタイプはコサンチク(鼓山竹:ホテイチクの別称)、関東などで多く出回っている大きいものはモウソウチク(孟宗竹)などの種類がある[2]。水煮の断面に見られる白い粉状のものは、茹でることによって出てくるチロシンというアミノ酸物質で、取り除かずにそのまま食べられる[2]。 タケ類の種類の数は多いが、タケノコとして食用にされるのは数種である[1]。タケ類ではモウソウチク(孟宗竹)、ハチク(淡竹)、マダケ(真竹)、カンチク(寒竹)など、ササ類ではカンザンチク(寒山竹)、ネマガリダケ(根曲がり竹)などである[19]。中でもよく食べられるモウソウチクが最も馴染みがある[1]。ふつうタケノコといえば、モウソウチクのタケノコを指す場合が多い[20]。 モウソウチクの場合、土から顔を出す前に掘るのが望ましい(地面が盛り上がっているのを見分けて掘る)とされる。マダケやネマガリタケのように、30センチメートル (cm) 程度に生長した地上部を折り取って収穫できる種類もある。その他の種類を含めた外見や旬は以下のような違いがある。
種類
温帯性タケ類(単軸型)収穫後のタケノコ(孟宗竹)陳列例老舗京都特産品店でのたけのこ販売例(京都市中京区)
モウソウチク(孟宗竹)日本で最も多く食べられている代表的なタケノコである[14][4][2]。正月用に早どりして出荷される10 cm前後のものは「ちび竹の子」とよばれている[21]。えぐみが少なく、肉厚でやわらかい[18]。時期は3 - 5月で、タケノコの中では最も早い[21]。日本では九州産から始まり、徳島、京都、静岡、関東地方、福島へと産地が北上して5月ごろまで食べられる[2]。皮は黒斑と紫褐色の粗毛に覆われ、稈の直径が最大20 - 25 cmに達するほどタケ類の中でも最も大形であることが特徴[9][3]。原産は中国江南地方といわれ、日本へは1736年(元文元年)に琉球を経由して薩摩(鹿児島)に渡来し、以後各地に分布したとされる[19][21]。主産地の京都地方では、中国出身の禅宗の僧である隠元が、1654年に宇治の黄檗山に孟宗竹を植えたともいわれている[19]。
ハチク(淡竹)やや細身で基部を除いて肉質部は薄く、色は少し黄色みを帯びるが、灰汁が少なく淡泊な味わいで特有の野趣がある[22][17][18]。美味と言われるが出回り量が少ない[23]。時期は4 - 5月で、出回り時期は孟宗竹よりも遅い[21]。淡竹の子を意味する「ハチコ」とも呼ぶ地域がある。稈の直径が3 - 10 cmになる[22]。皮は淡紅色で薄く、寒さに強く北海道南部でも栽培されている[3][17][21]。原産は中国中部とされており、日本にも野生種があるという説もあるが、その渡来時期は不明である[19]。
マダケ(真竹、別名ニガタケ:苦竹)肉質は締まり、灰汁がやや強いが歯ごたえがあって風味は良い[18]。特に発生して間もない段階では別名の通り「苦い」という印象を抱く人もいる[5][23]。ただし、大きく伸びると苦みが少なくなり先端部を収穫して「穂先タケノコ」として食用にする[5]。稈の直径が5 - 15 cmで、皮は薄い黒斑に覆われ、平滑で無毛である[22]。時期は5 - 6月で、出回り時期が孟宗竹や淡竹よりも遅い[18]。主にタケ材に使われるのが本種であるが、タケ材にならない遅く出てきたタケノコが食用に収穫される[18]。原産は中国の浙江および江蘇南部で、日本への渡来時期は不明であるが17世紀には日本でも広く分布していたとみられている[19]。
チシマザサ(別名ネマガリタケ:根曲がり竹)日本原産の細く灰汁が少ない品種で、北海道、本州の日本海沿岸に多く自生し[19][3]、タケノコが美味なことで知られ[18]、長野県から東北地方や北海道などで食用とされる[5][17]。特に津軽地方(青森県)などでよく食される[24]。時期は5 - 6月。