タイムトラベル
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タイムマシンの使用によるタイムトラベルを描いた最初の作品は、エンリケ・ガスパール・イ・リンバウの1887年の作品『時間遡行機』 El Anacronopete である[10]。この作品では、鋳鉄でできた電気推進のマシンによって、人が時間を逆行してタイムトラベルすることができた。

時間を移動するためのマシンというアイデアは1895年に出版されたH・G・ウェルズの小説『タイム・マシン』により広まった。これは未来へのタイムトラベルものである。これに先行して1888年にウェルズは『時の探検家たち』 en:The Chronic Argonauts と題されたやや知名度の劣る作品を手掛けており、これは過去へのタイムトラベルものであった。タイムマシンのコンセプトが大衆に受け入れられるきっかけとなった本書はしばしば後のタイムトラベルを扱ったあらゆるSF小説に影響を与えた作品と見なされている。

これ以降、科学とフィクションの両面でタイムトラベルの概念が広く知られるようになったが、タイムトラベルが現実に可能であるか否かという問題は依然として未解決のままである。現代物理学においても、過去へのタイムトラベルの方が未来へのタイムトラベルよりも難しいと考えられている(時間はもともと未来へと流れていくものであるため、逆行する方がより不自然な流れとなる)。
タイムトラベル物語の歴史といくつかの構造

ウェルズの『タイム・マシン』は未来へのタイムトラベルを題材としたが、その後のSF作品では未来だけではなく過去へのタイムトラベルを扱った作品もまた多く生み出されている。これらの作品では、必ずしもタイムマシンの登場は必須ではなく、超能力によるタイムトラベルや超常現象によるタイムトラベルなども含まれている。

作品の傾向として、未来へのタイムトラベルは『タイム・マシン』に代表されるような悲観的な未来社会が題材とされる場合が多い。これはウェルズの作品が当時のイギリスの階級問題や労働問題を未来社会になぞらえていたように、現代社会の問題点を未来に投影し描くことで現代に問題を提起する作家の意図が強いためである。

一方、過去へのタイムトラベルでは現代と過去で繋がる問題や危機が頻繁に題材とされ、過去の改変により現代の事象も影響を受けるタイムパラドックスにより、歴史が書き換わった場合に訪れる危機や現代の悲観的状況を打開するドラマが多く描かれている。また不可逆的な時間を遡る現象の特性から、経験してきた時代をもう一度体験したい、生前の時代を垣間見たい、人生をやり直せたらとの読者の願望を反映したノスタルジックな内容の作品も少なくない。これらは歴史小説的側面を持つ作品もある。過去へのタイムトラベルは、荒唐無稽になりがちな未来社会を扱った作品よりも、時代考証や史実を踏まえることでよりリアルな描写が可能である。そのためか、現代への影響が想像しやすく読者が感情移入しやすいという評価もある。
タイムパラドックス

「タイムパラドックス」はこの項目へ転送されています。

競走馬については「タイムパラドックス (競走馬)」をご覧ください。

Vaundyの楽曲については「タイムパラドックス (Vaundyの曲)」をご覧ください。

タイムパラドックス(Time Paradox / 時間の逆説)は、タイムトラベルに伴う矛盾や変化のことであり、物語のテーマとしてしばしば扱われる。具体的には、タイムトラベルした過去で現代(相対的未来)に存在する事象を改変した場合、その事象における過去と現代の存在や状況、因果関係の不一致という逆説が生じることに着目したものである。

SF作品の中においてタイムパラドックスは、歴史に関わる重大な出来事や危機、思考実験として頻繁に題材とされている。タイムパラドックスによる危機やその回避のサスペンス性、展開の意外性による面白さが時間を題材とするSFで多用される理由で、作品の醍醐味ともなっている。

タイムパラドックスの最も有名な例に、親殺しのパラドックスと呼ばれるものがある。過去へ遡ったタイムトラベル者が自分の誕生前の両親を殺害した場合どのような効果が発生するかという問題である。以下の3つに場合分けできる。
どう画策しても殺すことはできない(矛盾が生じない)。[注 6][注 7]

両親は自分を生む前に死亡するので自分も消滅する。そうすると自分が過去へ遡ることもなくなり両親が死ぬこともなくなる。矛盾である。[注 8]

両親が死んで自分が生まれない世界が、自分が生まれてやってきた未来世界から分岐する(パラレルワールド)。両親が無事だった過去(そもそも時間移動すらしなかった世界)には何の影響もないので、これは矛盾とは言わない。

矛盾が生じない場合でも、過去の改変が未来に与える影響を扱った作品も多い。これには些細な過去の改変がバタフライ効果のように連鎖しながら拡大波及し、未来の方向性を大きく変更してしまうとする立場と、些細な改変は一時的なゆらぎに過ぎず、その後は収束し未来の方向性に大きな影響を与えないとする立場がある。SF作家のポール・アンダースンは、歴史に大きく関わる人物の暗殺や史実の妨害など、未来社会に重大な影響を与える歴史の改変を防ぐための組織のアイデアを、オムニバス長編『タイムパトロール』(Gurdians of Time、1960年)で発表した。またこの小説では「歴史が改変可能であるならば、何をもって正しい歴史とするか」という疑問も提示されている。この疑問はあくまでフィクション作品上で発生するものであり、過去へのタイムトラベルがありえない現実の歴史では存在し得ない。
タイムパラドックスと矛盾

タイムパラドックスの矛盾を説明するため、タイムトラベル者による歴史の改変で時間軸が分岐し元の世界と並行した別の世界が生まれるとするパラレルワールドの概念がある。この概念を発展させ、タイムトラベル者の介在がなくとも歴史上の重要なポイントで世界が枝分かれしていると解釈する立場もある。この概念を大幅に作品に取り入れた最初期の小説に、可能性として存在する二つの歴史「ジョンバール」と「ギロンチ」の抗争を描いた、ジャック・ウィリアムスンの『航時軍団』(The Legion of Time、1938年)がある。

このパラレルワールドの発想に類似したものに、量子力学多世界解釈がある。これは@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}物理的な相互作用が時間上にも及ぶ[要出典]とするもので、この理論に基づくと、過去の改変が行われても素粒子レベルで世界の再構成が行なわれるため、結果としてタイムパラドックスは生じない。ただし、二つの別々の世界でのタイムトラベルの瞬間前後で物体や情報量が生成・消滅するため、エネルギー保存の法則エントロピー増大の法則相対性理論等、古典力学の法則は破綻する。また、多世界解釈もタイムトラベルの瞬間前後で相関のない情報量が割り込むため破綻してしまうという問題が解決される訳ではない。


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