タイムトラベル
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ヒンドゥ教の神話『マハーバーラタ[注 4]には、カクドミ(英語版)王が天界で創造主ブラフマーと会い、地上に戻るととてつもなく時間が経っていたという話が含まれている[1]

仏教の経典『パーリ仏典』(紀元前29年ごろ成立)には、時間の相対性が説かれている。ブッダの上弟子であった大迦葉は懐疑的なen:Payasiに対して「天上界では時間の流れが人間界よりも遅く、そこの住人は地上の住人よりも長く生きる」と説いている[2]

日本の昔話の「浦島太郎(浦嶋子)」でも、竜宮城から帰って来ると多くの時が流れていたという話が登場する。これが文献に登場する例の初見は、『日本書紀』(8世紀の初めに編纂)の「雄略紀」の雄略天皇22年(478年)秋7月の条の記述である。書籍として出版されたわけではないが、最古にして初の正史(国家の正式な歴史書)に記述されている。

中国にも同様の昔話「爛柯」(文献として残る最古のものは325年刊とされる)がある。王質という木こりが山で碁を打っている数人の童子と出会い、山から帰って来ると多くの時が流れていたというストーリーである。

アイルランド神話『ティル・ナ・ノーグ』にも同様のストーリー展開が見られる。説話『ブランの航海』では、ブラン王子ら一行が美しい海の乙女と「常若の国」に行き楽しく過ごして3年ぶりに故郷に帰ってきたら300年経っていたというものである。

イスラム教の聖典『クルアーン』の「洞窟の章」には、アッラーフによって309年間洞窟で眠っていた男達の話がある。これは「エフェソスの7人の眠り男」と呼ばれる、ローマ帝国の迫害から逃れた人々が洞窟に閉じこめられたが、200年以上たった後、そのうち一人の男が目覚め街に姿を現したという説話が元になっている。これは男たちが眠っていた洞窟と外の世界で時間の流れる速さが違っていると考えることもできる。

他にも古代ギリシアのエピメニデスも59年間眠っていて、その間に歳をとらなかったとされる逸話がある。

とても長く眠ることで未来へ行くストーリーのアメリカ版では、「リップ・ヴァン・ウィンクル」(1820年出版)がある。また、エドワード・ベラミーの「かえりみれば (Looking backward)」(1888年出版)は1887年の上流階級男性が催眠術で眠りに落ち、社会主義的ユートピアが実現された2000年の社会を目の当たりにする物語である。

ルイ・セバスチャン・メルシエの『西暦二千四百四十年 この上ない夢 (L'An 2440, reve s'il en fut jamais)[注 5]』(1770年出版)は、西暦2440年の世界を舞台にしたユートピア小説である。非常に有名な作品である本書では(1771年の初版刊行以来、25版が重ねられた)、哲学者の友人とのパリでの不公正についての激しい議論の後に眠りに落ち、夢の中で未来のパリを訪れる無名の人物の冒険が描かれる。ロバート・ダーントンは本書を「幻想文学であるとの断りはあるが、『西暦二千四百四十年』は真摯(しんし)な未来予測小説として読むことができる」と述べている。[3]
過去へのタイムトラベル

物理学の未解決問題過去へのタイムトラベルは可能か。

サミュエル・マッデンの『20世紀回想』 Memoirs of the Twentieth Century (1733年)は、主に世界各国の英国大使が英本土の大蔵卿へ宛てた一連の書簡と、英国外務省からの若干の返信からなる作品であり、それらの書簡はいずれも1997年と1998年に書かれたとの触れ込みで、その時代の状況について記述されている[4]。しかしながら物語の枠組みでは、これらの書簡は1728年のある晩に、語り手が彼の守護天使から与えられた本物の文書であると述べられている。これらの理由から、ポール・アルコンは彼の著書『未来小説の起源』 Origins of Futuristic Fiction において、「英文学で最初のタイム・トラベラーは、1998年から1728年に国家文書を持ち帰ったある守護天使である」と述べている[5]。ただし、本書では天使がそれらの文書を入手した手段は明らかにされていなかった。後の文章でアルコンは、「マッデンを未来からの訪問者を描いた最初の作家として称賛するのは、寛大に過ぎるかもしれない」と語気を弱めてはいるが、「未来から時間を遡って送り込まれた品物が現代で発見されるという形式による、巧みなタイムトラベルの着想を持ち込んだ最初の作家として、評価に値する」とも述べている[4]

SFアンソロジー『彼方の境界』 Far Boundaries (1951年)では編者のオーガスト・ダーレスが、1838年にダブリン・リテラリー・マガジンで匿名の作者により執筆された『神隠しの馬車: 時代を超えた男』 Missing One's Coach: An Anachronism という題の短編を、最初期のタイムトラベル作品として定義している[6]。この作品では、木の下でニューカッスルを離れる馬車を待っていた語り手が、突然に千年前の世界に放り込まれ、修道院で8世紀の聖職者ベーダ・ヴェネラビリスと遭遇し、未来の世紀の発展についていささか皮肉めいた説明を行う。これらの出来事が現実の出来事であったのか、単なる夢に過ぎなかったのかは最後まで明らかにされない。語り手は、初めに木の根元に居心地の良さそうな場所を見つけて、腰を下ろしたと述べ、「疑い深い読者諸氏は、私がうたた寝をしたのだと言うかもしれない」が、「そんなことはなかったと断言する」。修道院の者たちが誰も彼と初対面であるように見えないことや、ベーダが語り手との話に口ごもり、他の修道僧らが何かの害が彼に与えられたのだと思い込んでなだれ込んできたところで、突然に語り手は自分が現代(1837年の8月)の木の下に戻っているのに気付き、丁度待っていた馬車が彼の目の前を通り過ぎていき、もう一晩ニューカッスルに足止めされる羽目になるという唐突な終わり方などの、作中の多数の夢のような要素は、別の可能性を読者に暗示している[7]

チャールズ・ディケンズの1843年の小説『クリスマス・キャロル』は、主人公のエビネザー・スクルージが、過去、現在、未来のクリスマスを訪れることから、一部の者からはタイムトラベルを描いた最初の作品であると見なされている[8]。ただし、スクルージは各々の時代を受動的に観察するのみであり、その時代から物理的な影響を受けたり、自らが干渉するわけではない。

より明確なタイムトラベルの実例は、フランスの植物学者にして地質学者であったピエール・ブアタールによる、彼の死後1861年に出版された有名な書籍『人類以前のパリ』 Paris avant les hommes の中に見出される。


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