ゾンビ映画とは、映画のジャンルの一つを指す。ゾンビは、通常、生き返った死体やウイルスに感染した人間として描かれる架空のクリーチャーである。一般的には、人を食う存在として描かれている。ゾンビ映画は一般的にホラージャンルに分類されるが、中にはアクション、コメディ、SF、スリラー、ロマンスなど、他のジャンルにまたがるものもある。「ゾンビ・コメディ」や「ゾンビ・アポカリプス」など、異なるサブジャンルが展開されている。ゾンビは、幽霊、グール、ミイラ、フランケンシュタインの怪物、吸血鬼などとは異なるため、このリストにはこれらの種類のアンデッドをテーマにした映画は含まれてはいない。 ヴィクター・ハルペリン
歴史
ハイチの民間伝承に登場するゾンビをモチーフにした現代のゾンビは、20世紀後半にジョージ・A・ロメロ監督の代表作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)をきっかけに大衆文化の中に登場した[4]。この映画には続編として『ゾンビ』(1978年)が製作され、当時、最も商業的に成功したゾンビ映画となった。その後、その続編の『死霊のえじき』(1985年)がゾンビ三部作の第3弾として製作され、『サンゲリア』(1979年)や『バタリアン』(1985年)など、多くの作品に影響を与えた。しかし、1980年代から1990年代にかけてのゾンビ映画は、1970年代後半の『ゾンビ』ほどの商業的成功を収めることはできなかった[5]。
1980年代の香港映画では、18世紀から19世紀の清朝時代の伝承に由来するゾンビのような中国の妖怪キョンシーが登場し、『霊幻道士』(1985年)で人気を博したキョンシー映画の波が押し寄せた。香港のキョンシー映画は1980年代半ばから1990年代初めにかけて東アジアで人気を博し、その大ヒットによって台湾映画『幽幻道士』(1986年)などが製作されることとなった。一方で、1988年にはアメリカでゾンビ映画『ゾンビ伝説』が製作された。
その後、1996年に日本で発売されたサバイバルホラーゲー『バイオハザード』や『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』に触発されて、1990年代後半に東アジアでゾンビ映画のリバイバルが始まり、香港のゾンビコメディ映画『Bio Zombie』(1998年)や日本のゾンビアクション映画『VERSUS』(2000年)など、低予算のアジアのゾンビ映画が続々と公開されることとなった[6]。その後、「バイオハザード」や「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」などのゾンビゲームの世界的な成功に触発され、2000年代初頭には[6]、イギリス映画『28日後...』(2002年)、続編の『28週後...』、映画『バイオハザード』シリーズ、2004年の『ゾンビ』のリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』、イギリスのパロディ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)など、欧米のゾンビ映画の新しい波が起こり、ゾンビ映画のリバイバルは世界的なものとなった[7] [8] [9]。これらの映画の成功により、ゾンビ映画というジャンルは1970年代以来見られなかった商業的成功の新たなピークを迎え始めた[5]。
『28日後...』、『ハウス・オブ・ザ・デッド』、『バイオハザード』シリーズ、『ドーン・オブ・ザ・デッド』など、2000年代に制作されたゾンビ映画[10]では、従来のゾンビよりも俊敏で、凶暴で、知的で、強いゾンビが登場する[11]。これらの新しい高速で走るゾンビは、「バイオハザード」の走る犬のゾンビや、「ハウス・オブ・ザ・デッド」の走る人間のゾンビなど、ビデオゲームが起源となっているとされることもある[10]。
2010年代後半になると、欧米ではゾンビ映画が衰退し始めた[9]。一方、日本では、低予算の和製ゾンビコメディ『カメラを止めるな!』(2017年)が予想外の大ヒットとなり、予算の1000倍以上の興行収入を記録して興行史に名を残した[12]。また、韓国では『新感染 ファイナル・エクスプレス』がゾンビブームの火付け役となった[13]。『新感染』の関連作品も登場したほか、『感染家族』や『王宮の夜鬼』といった他ジャンルとの融合作品も登場した[14]。