ゾロアスター教
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ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』のヴェンディダード(除魔の書)などでは、自分の親・子・兄弟姉妹と交わる最近親婚を「フヴァエトヴァダタ」と呼び、最大の善徳と説いた。アケメネス朝期の伝承を綴った『アルダー・ウィーラーフの書』では、ニーシャープールの聖職者ウィーラーフの高徳の中で、最も称賛されるのが7人の姉妹と近親婚したこととされる[9]。また、彼は冥界の旅の中で天国で光り輝く者達を見たが、その中に住まう者として近親婚を行った者の姿があった。反対に、近親婚を破算にした女が地獄で蛇に苛まれている記述があり、その苦痛は永遠に続くという。ゾロアスター教の影響下にあった古代ペルシャでは、王族、僧侶、平民など階級の区別なく親子・兄弟姉妹間の近親婚が行われていた。
善悪二元論とゾロアスター教の神々

ゾロアスター教の教義の最大の特色は、善悪二元論終末論である[6]。世界は至高神アフラ・マズダー率いるスプンタ・マンユと悪の霊アンラ・マンユ(アフリマン)、およびそれに率いられる善神群(アムシャ・スプンタ)と悪神群(ダエーワ)の両勢力が互いに争う場で、生命との闘争とされる[6][注釈 1]

最初に2つの対立するがあり、両者が相互の存在に気づいたとき、善の霊(知恵の主アフラ・マズダー)が生命真理などを選び、それに対してもう一方の対立霊(アンラ・マンユ)は・虚偽を選んだ[12]。アフラ・マズダーは、戦いが避けられないことを悟り、戦いの場とその担い手として天・水・大地・植物・動物・人間・火の7段階からなるこの世界を創造した。各被造物はアフラ・マズダーの7つの倫理的側面により、特別に守護された[12]。対してアンラ・マンユは大地を砂漠に、大海を塩水にし、植物を枯らして人間や動物を殺し、火を汚すという攻撃を加えた。しかしアフラ・マズダーは世界を浄化し、動物や人間を増やすなど、不断の努力でアンラ・マンユのまき散らす衰亡・邪悪・汚染などの害悪を、善きものに変えていった。このように、歴史を創造された「この世界」を舞台とした2大勢力の戦いと理解した。
アフラ・マズダーと善神群詳細は「アフラ・マズダー」および「アムシャ・スプンタ」を参照アフラ・マズダー(右)より王権の象徴を授受されるサーサーン朝のアルダシール1世(左)のレリーフ(ナクシェ・ロスタム

アフラ・マズダーは、ゾロアスター教の主神。みずからの属性を7つのアムシャ・スプンタ(七大天使、不滅なる利益者たち)という神々として実体化させ、天空大地植物動物の順番で創成した、世界の創造者である[6]

アフラ・マズダーを補佐する善神(アムシャ・スプンタ)としては、次の7神がある。

スプンタ・マンユ : 人類の守護神。「聖霊」を意味する。アフラ・マズダーと同一視されることもある[6]

ウォフ・マナフ : 動物界の統治者。「善なる意思」を意味し、アフラ・マズダーの言葉を人類に伝達する役割。常に人間の行為を記録し、やがて訪れる「最後の審判」でその記録を詠みあげるとされる[6]

アシャ・ワヒシュタ(アシャ) : 「聖なる火」の守護神。「宇宙を正しく秩序づける正義」に由来し、天体の運行や季節の移り変わりを司る。虚偽の悪魔ドゥルジに対峙する[6]

スプンタ・アールマティ : 大地の守護神。代表的な女神(女性天使)。「献身」「敬虔」の名の通り、宗教的調和や信仰心の強さ、さらに信仰そのものを顕現する。「背教」と「推測」の悪魔タローマティと対立する[6]

クシャスラ(フシャスラ・ワルヤ) : 金属鉱物の守護神。「理想的な領土ないし統治」に由来し、「天の王権」を象徴する。アフラ・マズダーによる「善の王国」建設のために尽力する[6]

ハルワタート : 水の守護神。「完璧」を意味する女性の大天使。アムルタートとは密接不可分とされる[6]

アムルタート : 植物の守護天使。主神アフラ・マズダーの子。名は「不死」に由る。ハルワタートと力を合わせて地上に降雨をもたらす[6]また、善神の象徴は炎とされ、そこから火の崇拝が生まれている


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