ソーセージ
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1914年(大正3年)、第一次世界大戦が開戦となると日独は交戦国となり、ドイツ人であったマーチン・ヘルツは収容所へ入れられそうになったが、市蔵が当時の神奈川県知事に掛け合い、最小規模の食肉加工業を知事より許され、ヘルツと市蔵はハム・ソーセージの製造販売会社、合資会社サシズヤ商会を設立し市蔵が代表者となる。市蔵は大正6年11月1日に開催された「第1回神奈川県畜産共進会」に日本で初めて出品し、1920年(大正9年)に独立。横浜市元町1丁目に合名会社大木ハム製造商会を設立。自身の事業に励むかたわら、大正末期から昭和初期にかけて東京帝国大学や東京農業大学で食肉加工技術の講義を担当するとともに、農商務省の嘱託(無給)で各地で豚肉加工の講習会を行い技術を各地に伝えた。また、自身の工場にも多くの弟子を受け入れ、1人前になるとその技術を必要とする企業の要望に応じ派遣した。1937年(昭和12年)に発行された大木ハム製造商会のパンフレットには、市蔵が日本で初めて製造を始め、またその弟子数十人を全国に派遣しているとともに、大学等の講習会で教えを受けた者は万人を超えるとの記述がある。この流れに属するものは大木流と呼ばれている。

1915年(大正4年)9月から1920年(大正9年)1月までの間、千葉県千葉郡幕張町実籾(現・習志野市東習志野)に第一次世界大戦中に日本の捕虜となったドイツ兵約1000人が収容されていた「習志野俘虜収容所」があった。1918年(大正7年)高栄養価食品としてソーセージに注目していた農商務省は、ドイツ国内でソーセージ職人だったカール・ヤーンら5人が収容所内でソーセージを製造している事を聞きつけ、千葉市に新設された農商務省畜産試験場の飯田吉英技師を収容所に派遣し、カール・ヤーン達からソーセージ製造の秘伝を公開してもらった。このソーセージ製造技術は農商務省の講習会を通じて、日本全国の食肉加工業者に伝わった。この事から、習志野市は「日本のソーセージ製法 伝承の地」といわれるようになった。また、捕虜となったドイツ人の何人かは日本にとどまり、ヘルマン・ウォルシュケアウグスト・ローマイヤーカール・ブッチングハウスなどは日本にソーセージの文化を広める事に貢献するのであるが、当時は日常に親しまれていた食品ではなく、普及するまでには相当の時間を要した。一方、北海道では1919年に来日したカール・ワイデル・レイモンの功績が大きい。一般社団法人日本記念日協会は2015年(平成27年)から、11月1日を「ソーセージの日」と認定したが、これが1917年(大正6年)11月1日、「第1回神奈川県畜産共進会」に出品され(大木市蔵の作。出品名義は「江戸清」高橋清七)、品評会に出品された最初の国産品であったことに因む。
JAS規格による分類

日本では日本農林規格(JAS)によりさまざまなソーセージの独自規格が定められており、原材料や調理法やケーシング(腸もしくはフィルムの皮)によっていくつかの表示できる名称が定められている[16]

元々は第二次世界大戦後の物資が不足していた時代に、模造食品が横行し食べた人に健康被害などが頻出したことから始まった法制度である[16]
ソーセージ[16]
家畜、家兎の肉を塩漬したりひき肉にしたりしたものを調味料及び香辛料で調味して、練り合わせた後、ケーシング等に充填。それをくん煙にしたり、加熱したり、乾燥させたりしたもの[16]。でんぷんや小麦粉、コーンミール、植物性たんぱく、乳たんぱくなどは結着材料として原材料中15%までなら良いとしている。それ以外に野菜や穀類、チーズ、ベーコン、ハムなども原材料中50%までなら加えても良いとされている。
ケーシング・大きさ別[16][17]


ウインナーソーセージ - 太さ20ミリメートル未満で羊腸を使用したもの

フランクフルトソーセージ - 太さ20ミリメートル以上36ミリメートル未満で豚腸を使用したもの

ボロニアソーセージ - 太さ36ミリメートル以上で牛腸を使用したもの
これらは名称の由来となった地名の製法と必ずしも一致しない。
原料別[16]


特級 - 豚肉および牛肉やそれらの脂肪層、調味料、香辛料だけでつくられたもの。結着材料は使用できない。

上級 - 豚肉および牛肉やそれらの脂肪層、調味料、香辛料に結着材料を加えたもの。結着材料の使用は5パーセント以下であること、でんぷんや小麦粉、コーンミールなどは3パーセント以下であること。

標準 - 馬肉、めん羊肉、山羊肉、家禽、家兎肉など指定された種類の肉が使用できる。

混合ソーセージ - 魚肉及び鯨肉が15パーセント以上50パーセント未満のもの[18]

魚肉ソーセージ - 魚肉及び鯨肉が50パーセント以上のもの
魚肉及び鯨肉の原材料に占める重量の割合が15パーセント以上になると「ソーセージ」の規格を外れる。
加工法別


セミドライソーセージ - 製品の水分量が55パーセント以下のもの[19]

ドライソーセージ - 製品の水分量が35パーセント以下のもの[19]

赤いウインナー

日本独自の商品として、赤色102号コチニール色素などで表面を赤く着色したウインナー・ソーセージがある。これは良質の素材を用いることができなかった昭和中期に考案されたもので、プレスハムなどと同様に発色の悪さを隠すための苦肉の策であったと伝えられている。

しかしながら現在では、たこさんウィンナーに代表されるお弁当の定番として多くの日本人の支持を得ているほか、アニメなどを通じて「日本固有の食材」として海外にもその存在が認知されている。

基本的には、あまり高級なウインナー・ソーセージには使用されず、お弁当に使われるような比較的に安価な商品において着色されることが多い。
ソーセージ料理「ソーセージ料理の一覧(英語版)」を参照

大きさによって、一本丸ごと使う場合もあれば、ハムのようにスライスする場合もある。

ホットドッグ

アメリカンドッグ

カリーヴルスト

ボスナ

ヴルストゼンメル

ビゴス

バンガーズ・アンド・マッシュ

健康への影響「赤肉 (栄養学)#加工肉」も参照

IARC発がん性リスク一覧の発がん性があるとされるグループ1に加工肉が追加されている[20]
食中毒

ソーセージはボツリヌス菌の語源である。ソーセージによる食中毒は、1,000年以上前から起きていたが、ハムとともに発症要因であると判明したのは1870年のことであった。このときラテン語でソーセージを意味する「ボトゥルス(botulus)」を元に「ボツリヌス(ボトゥリヌス)中毒」と名付けられ、のち1895年に原因菌のボツリヌス菌が発見された。

なお、ボツリヌス菌が作り出す毒素は100で1-2分加熱すれば失活される。今日の日本では、食品メーカーから流通する製品の多くは加熱殺菌済みである。
ことわざ・比喩「ドイツのソーセージ#ソーセージにまつわるドイツの慣用句」を参照
ソーセージと法律(政策)は作る過程を見ない方がいい
ドイツのことわざ。どんなにきれいにまとまった良い政策でも、その立法過程(政治)は根回しなどで、醜悪であるということ。
ソーセージの中身は肉屋と神様しか知らない[21]
スウェーデンのことわざ。真実とは当事者以外には分からないものなので、むやみに他人の言葉を信じて騙されないようにという意味。両者とも、完成品であるソーセージからは実際に使われている肉の種類や添加物、製造現場の衛生状態などは判別困難であり、ひき肉(内臓などを混ぜることもある)や動物の腸など材料の姿も思い浮かばないことから。
ダブル・ミーニングのネタとして
ソーセージ/ウィンナー、またはその語が男性陰茎を暗喩するダブルミーニングとしてギャグに使われることが多々ある。(映画『オースティン・パワーズ』シリーズ、空飛ぶモンティ・パイソンスパムの多い料理店』など)英国では「Gentleman's Sausage」がそのままそれを意味するスラングとして通用しており、『トップ・ギア』前司会者ジェレミー・クラークソンも番組中で使用していたとされる。[22]
脚注[脚注の使い方]^ 大辞林 第三版
^ wiktionary:en:sausage
^ 宮崎正勝『知っておきたい「食」の日本史』角川ソフィア文庫・P217
^ Andrew Dalby and Sally Granger, A classical Cookbook(Los Angeles,CA,1996)


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