この三作を一冊の本にまとめて出版することがよく行われているが[22]、三作はそれぞれ、異なる年のディオニューシア祭のために書かれたものである上、一作目が書かれてから三作目が書かれるまでの間に36年の月日が経っており、制作時期が大きく異なっている。制作の順序は神話上の時系列に沿ったものではなく、『アンティゴネー』、『オイディプース王』、『コローノスのオイディプース』の順で制作された。もとより三部作として制作されたものではなく、むしろ異なる三つの連作悲劇から抜き出された作品の寄せ集めである。そのため、テーバイ三作のストーリーにはいくつかの矛盾がある[21]。ソポクレスはこれらの三悲劇のほかにも、テーバイに関係する悲劇を書いている。そのうちの一つが『エピーゴノイ(英語版)』であるが、断片だけしか現代に残らなかった[23]。 テーバイ三作のほかにソポクレスの作品としては、『アイアース』、『トラキスの女たち』、『エーレクトラー』、『ピロクテーテース』の四作が残っている。『ピロクテーテース』は前409年の悲劇コンテストで一等を取った作品である[24]。 『アイアース』はトロイア戦争の誇り高き英雄、テラモーンの息子アイアースに焦点を当てる。アイアースは、アキレウスの形見の鎧が、自分ではなくオデュッセウスに送られることを知ると深く動揺する。そして、裏切りへと駆り立てられ最終的には自殺してしまう。メネラーオスとアガメムノーンがアイアースへの敵意を募らせる中、オデュッセウスは、アイアースを丁重に葬るよう、両王を説得する。 『トラキスの女たち』は十二の難行を成し遂げた英雄ヘーラクレースを意図せず殺してしまったデーイアネイラの悲劇を基にしたものである。なお、劇の題名は女声のコロスが「トラーキースの女たち」を演じることにちなむ。ヘーラクレースの妻デーイアネイラは騙されて、ヒュドラの毒を媚薬と思い込み、夫の衣服の一つにそれを染み込ませる。ヘーラクレースは毒の苦しみにさいなまれながら死ぬ。真実を知ったデーイアネイラは自殺する。 『エーレクトラー』はアイスキュロスの悲劇『コエーポロイ』の筋書きにおおむね沿った物語であり、エーレクトラーとオレステースが母クリュタイムネーストラーとその情夫アイギストスを殺し、二人に殺された父アガメムノーンの仇を討つ神話の詳細を語る。 『ピロクテーテース』はトロイア戦争に参戦したピロクテーテースの物語の再話である。ヘーラクレースの強弓を受け継いだピロクテーテースは、トロイアへ向かう途上、ギリシアの軍船に見捨てられ、レームノス島に置き去りにされる。ところが、ギリシア方は彼の持つ弓なしではいくさに勝てないことを知る。彼らはオデュッセウスとネオプトレモスを島に送り、ピロクテーテースを連れてこさせようとする。しかしながら、かつての仕打ちを忘れていない彼は復帰を断る。ピロクテーテースにトロイアへ行くことを説得しえたのは、デウス・エクス・マキナとして唐突に現れたヘーラクレースだけであった。 ソポクレスに関連付けられている詩劇の数は、下のリストに示すように120作品を越えるが[25]、いつごろ制作されたものであるかわかっている作品はほとんどない。『ピロクテーテース』は前409年に書かれたことが知られている。また、『コローノスのオイディプース』は前401年に上演されたことがあることだけがわかっている。上演時にソポクレスは既に亡くなっており、その上演はソポクレスの孫の成人の儀式における出来事であった。古代ギリシアの祭祀のために詩劇を書く場合、三つの悲劇に一つのサテュロス劇を添えて一組の四部作として奉呈するのが慣わしであった。大多数の作品の制作年代が不明であることに伴い、それらが、どの作品と組み合わされて一組となっていたのかがわからなくなっている。もっとも、テーバイに関する三作品が、ソポクレスの生前まとめて上演されたことはないことは確実である。 『イクネウタイ
その他の悲劇作品
断片が残る作品
Aias Lokros (Ajax the Locrian)
Aias Mastigophoros (Ajax the Whip-Bearer)
Aigeus (Aegeus)
Aigisthos (Aegisthus)
Aikhmalotides (The Captive Women)
Aithiopes (The Ethiopians), or Memnon
Akhaion Syllogos (The Gathering of the Achaeans)
Akhilleos Erastai (Lovers of Achilles)
Akrisios
Aleadae (The Sons of Aleus)
Aletes
Alexandros (Alexander)
Alcmeon
Amphiaraus
Amphitryon
Amycos
Andromache
Andromeda
Antenoridai (Sons of Antenor)
Athamas (two versions produced)
Atreus, or Mykenaiai
Camicoi
Cassandra
Cedalion
Cerberus
Chryseis
Clytemnestra
Colchides
Cophoi (Mute Ones)
Creusa
Crisis (Judgement)
Daedalus
Danae
Dionysiacus
Dolopes
Epigoni (The Progeny)
Eriphyle
Eris
Eumelus
Euryalus
Eurypylus
Eurysaces
Helenes Apaitesis (Helen's Demand)
Helenes Gamos (Helen's Marriage)
Herakles Epi Tainaro (Hercules At Taenarum)
Hermione
Hipponous
Hybris
Hydrophoroi (Water-Bearers)
Inachos
Iobates
Iokles
Ion
Iphigenia
Ixion
Lacaenae (Lacaenian Women)
Laocoon
Larisaioi
Lemniai (Lemnian Women)
Manteis (The Prophets) or Polyidus
Meleagros
Minos
Momus
Mousai (Muses)
Mysoi (Mysians)
Nauplios Katapleon (Nauplius' Arrival)
Nauplios Pyrkaeus (Nauplius' Fires)
Nausicaa, or Plyntriai
Niobe
Odysseus Acanthoplex (Odysseus Scourged with Thorns)
Odysseus Mainomenos (Odysseus Gone Mad)
Oeneus
Oenomaus
Palamedes
Pandora, or Sphyrokopoi (Hammer-Strikers)
Pelias
Peleus
Phaiakes
Phaedra
Philoctetes In Troy
Phineus (two versions)
Phoenix
Phrixus
Phryges (Phrygians)
Phthiotides
Poimenes (The Shepherds)
Polyxene
Priam
Procris
Rhizotomoi (The Root-Cutters)
Salmoneus
Sinon
Sisyphus
Skyrioi (Scyrians)
Skythai (Scythians)
Syndeipnoi (The Diners, or, The Banqueters)