ソポクレス
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これらはギリシア悲劇に長く続く伝統として受け継がれていった[19][20]
テーバイに関する三作

神話上の登場人物、オイディプースは、父を殺し、母と交わる。しかし彼は、いずれも自分の父母であることを知らずに、その行為を行った。オイディプースの子孫は三代にわたって呪われる運命となる。ソポクレスの悲劇、『オイディプース王』、『コローノスのオイディプース』、『アンティゴネー』の三作はいずれもオイディプースが治めていたころのテーバイ王家の運命に関する悲劇であるか、もしくはその後日談である[21]

この三作を一冊の本にまとめて出版することがよく行われているが[22]、三作はそれぞれ、異なる年のディオニューシア祭のために書かれたものである上、一作目が書かれてから三作目が書かれるまでの間に36年の月日が経っており、制作時期が大きく異なっている。制作の順序は神話上の時系列に沿ったものではなく、『アンティゴネー』、『オイディプース王』、『コローノスのオイディプース』の順で制作された。もとより三部作として制作されたものではなく、むしろ異なる三つの連作悲劇から抜き出された作品の寄せ集めである。そのため、テーバイ三作のストーリーにはいくつかの矛盾がある[21]。ソポクレスはこれらの三悲劇のほかにも、テーバイに関係する悲劇を書いている。そのうちの一つが『エピーゴノイ(英語版)』であるが、断片だけしか現代に残らなかった[23]
その他の悲劇作品

テーバイ三作のほかにソポクレスの作品としては、『アイアース』、『トラキスの女たち』、『エーレクトラー』、『ピロクテーテース』の四作が残っている。『ピロクテーテース』は前409年の悲劇コンテストで一等を取った作品である[24]

『アイアース』はトロイア戦争の誇り高き英雄、テラモーンの息子アイアースに焦点を当てる。アイアースは、アキレウスの形見の鎧が、自分ではなくオデュッセウスに送られることを知ると深く動揺する。そして、裏切りへと駆り立てられ最終的には自殺してしまう。メネラーオスアガメムノーンがアイアースへの敵意を募らせる中、オデュッセウスは、アイアースを丁重に葬るよう、両王を説得する。

『トラキスの女たち』は十二の難行を成し遂げた英雄ヘーラクレースを意図せず殺してしまったデーイアネイラの悲劇を基にしたものである。なお、劇の題名は女声のコロスが「トラーキースの女たち」を演じることにちなむ。ヘーラクレースの妻デーイアネイラは騙されて、ヒュドラの毒を媚薬と思い込み、夫の衣服の一つにそれを染み込ませる。ヘーラクレースは毒の苦しみにさいなまれながら死ぬ。真実を知ったデーイアネイラは自殺する。

『エーレクトラー』はアイスキュロスの悲劇『コエーポロイ』の筋書きにおおむね沿った物語であり、エーレクトラーオレステースが母クリュタイムネーストラーとその情夫アイギストスを殺し、二人に殺された父アガメムノーンの仇を討つ神話の詳細を語る。

『ピロクテーテース』はトロイア戦争に参戦したピロクテーテースの物語の再話である。ヘーラクレースの強弓を受け継いだピロクテーテースは、トロイアへ向かう途上、ギリシアの軍船に見捨てられ、レームノス島に置き去りにされる。ところが、ギリシア方は彼の持つ弓なしではいくさに勝てないことを知る。彼らはオデュッセウスとネオプトレモスを島に送り、ピロクテーテースを連れてこさせようとする。しかしながら、かつての仕打ちを忘れていない彼は復帰を断る。ピロクテーテースにトロイアへ行くことを説得しえたのは、デウス・エクス・マキナとして唐突に現れたヘーラクレースだけであった。
断片が残る作品

ソポクレスに関連付けられている詩劇の数は、下のリストに示すように120作品を越えるが[25]、いつごろ制作されたものであるかわかっている作品はほとんどない。『ピロクテーテース』は前409年に書かれたことが知られている。また、『コローノスのオイディプース』は前401年に上演されたことがあることだけがわかっている。上演時にソポクレスは既に亡くなっており、その上演はソポクレスの孫の成人の儀式における出来事であった。古代ギリシアの祭祀のために詩劇を書く場合、三つの悲劇に一つのサテュロス劇を添えて一組の四部作として奉呈するのが慣わしであった。大多数の作品の制作年代が不明であることに伴い、それらが、どの作品と組み合わされて一組となっていたのかがわからなくなっている。もっとも、テーバイに関する三作品が、ソポクレスの生前まとめて上演されたことはないことは確実である。

『イクネウタイ(英語版)』(追いかけるサテュロスたち)の断片は、エジプトで1907年に発見された[26]オクシュリュンコス・パピュロスと呼ばれる古文書群から見つかった『イクネウタイ』の断片を集めると全体の半分程度になった[26]サテュロス劇はほとんどすべてが失われ、完全な形で残っているのはエウリーピデースの『キュクロープス』だけである[26]。新発見のソポクレスの作品の断片は、『キュクロープス』に次いで、最も多くの詩句が伝わるサテュロス劇である[26]。オクシュリュンコス・パピュロスからは悲劇『エピーゴノイ(英語版)』の断片も見つかった。肉眼では読めなくなっていたパピュロスに赤外線を照射し、その反射スペクトラムを得るという衛星写真など宇宙技術で培われた技術を利用して失われた数行を再現することに成功した[27][28]。『エピーゴノイ』の内容は、二度目のテーバイ攻めの物語である(→エピゴノイ参照)[23]。以下は断片だけが伝わるソポクレス作品の一覧である。body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper{margin-top:0.3em}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ul,body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper>ol{margin-top:0}body:not(.skin-minerva) .mw-parser-output .columns-list__wrapper--small-font{font-size:90%}

Aias Lokros (Ajax the Locrian)

Aias Mastigophoros (Ajax the Whip-Bearer)

Aigeus (Aegeus)

Aigisthos (Aegisthus)

Aikhmalotides (The Captive Women)

Aithiopes (The Ethiopians), or Memnon

Akhaion Syllogos (The Gathering of the Achaeans)

Akhilleos Erastai (Lovers of Achilles)

Akrisios

Aleadae (The Sons of Aleus)

Aletes

Alexandros (Alexander)

Alcmeon

Amphiaraus

Amphitryon

Amycos

Andromache

Andromeda

Antenoridai (Sons of Antenor)

Athamas (two versions produced)

Atreus, or Mykenaiai

Camicoi

Cassandra

Cedalion

Cerberus

Chryseis

Clytemnestra

Colchides

Cophoi (Mute Ones)

Creusa

Crisis (Judgement)

Daedalus

Danae

Dionysiacus

Dolopes

Epigoni (The Progeny)

Eriphyle

Eris

Eumelus

Euryalus

Eurypylus

Eurysaces

Helenes Apaitesis (Helen's Demand)

Helenes Gamos (Helen's Marriage)

Herakles Epi Tainaro (Hercules At Taenarum)

Hermione

Hipponous

Hybris

Hydrophoroi (Water-Bearers)

Inachos

Iobates

Iokles

Ion

Iphigenia

Ixion

Lacaenae (Lacaenian Women)

Laocoon

Larisaioi

Lemniai (Lemnian Women)

Manteis (The Prophets) or Polyidus

Meleagros

Minos

Momus

Mousai (Muses)

Mysoi (Mysians)

Nauplios Katapleon (Nauplius' Arrival)

Nauplios Pyrkaeus (Nauplius' Fires)

Nausicaa, or Plyntriai

Niobe

Odysseus Acanthoplex (Odysseus Scourged with Thorns)

Odysseus Mainomenos (Odysseus Gone Mad)

Oeneus

Oenomaus

Palamedes

Pandora, or Sphyrokopoi (Hammer-Strikers)

Pelias


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