ゼントラーディ人
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50万年前、銀河に一大星間文明を築き上げた知的生命体プロトカルチャーが、戦闘員として利用するために創造した人種[6][7]。容姿こそ地球人類と酷似しているが、その身長は人類の約5倍[注 1]となっており、地球統合軍にてバトロイド(可変戦闘機の格闘形態)やデストロイドなどの巨大ロボット兵器が実用化されたのも、ASS-1(マクロス)の調査結果から巨人異星人との遭遇・戦闘が想定されたためである。また一部の臓器の数や位置が人類のそれとは異なっており[7]、宇宙の真空中でも生身で短時間活動できるなどの強靱な肉体を持つ者もいる(体格や構造は階級や役職により異なる)。さらに闘争本能の増進も施されており、第一次星間大戦後に地球に帰化したゼントラーディ人のなかには、破壊衝動を抑えきれず暴動を起こす者が相次ぐが、彼らの強靭で大きな肉体は、終戦直後の復興の労働力として重宝される。

出自および構成に関して、テレビ版と劇場版では一部設定が異なる。テレビ版ではゼントラーディ人の敵対勢力は監察軍で、ゼントラーディの男性と女性は同じ艦艇には乗っていないものの、同じ基幹艦隊の指揮下で活動。男性は白兵戦向けの強靭な肉体、女性はパイロットとして適した、小柄で高いGに耐えられるように作られている。劇場版では、プロトカルチャーが単性生殖を実現させた結果、男(ゼントラーディ)と女(メルトランディ)に分断され、戦争に至ったとされている。

反乱や謀反への安全対策として、知能も平均的な地球人の小学生レベルに限定され[7]、戦闘のみに特化された種族のため、美術・音楽(歌)などの文化に免疫がなく、文化活動の場面に遭遇すると、激しく動揺したり興奮状態に陥る。男女の恋愛行動に対しては、とくに異常な反応(カルチャーショック)を示す。

生殖能力はあるものの男女間の交流はほとんどなく、クローン技術により兵士が「製造」されている。プロトカルチャー時代に、試験的に生殖能力を去勢した兵士も製造されたが、戦闘能力が40%低下したために、この措置の本採用は見送られた[7]。また応用技術として、肉体を地球人サイズに縮小する「マイクローン化」や、逆にマイクローンを巨人サイズに戻すことができる「マイクローン装置」を所有している。マイクローン化したゼントラーディ人は生物的に地球人とほぼ同類で交配・混血も可能だが、これは地球人もプロトカルチャーによる、「亜プロトカルチャー[8]」計画によって創り出された生物種であったことに由来しているとされ、地球人も遺伝子が適合すればマイクローン装置により巨人化することが可能である[注 2]。ただし、遺伝子によって巨人化・マイクローン化への適合には個人差があり、繰り返すことができる強靭な遺伝子を持つ者もいれば、わずかな回数でも病気になる者、巨人化すると元に戻れなくなる者もいるとされる[9]
ゼントラーディの歴史
ゼントラーディの誕生からプロトカルチャーの絶滅まで

『超時空要塞マクロス』時点の設定では、紀元前50万年代[10]、銀河に一大星間国家を築き上げながらも、ゼントラーディ側と監察側に分裂して戦争を始めたプロトカルチャーが、戦闘用の兵器として巨人兵を作り上げ、叛乱を起こさないように知能を制限して文化を与えず男女を隔離し、攻撃対象を軍事施設等に限ったうえで、プロトカルチャーの非戦闘員への攻撃を禁じるプログラムを施し、戦争に投入するも、プロトカルチャーは激化する戦闘に巻き込まれ絶滅したとされる[7]

『超時空要塞マクロス』時点で公開された年表では、分裂戦争の開始がプロトカルチャー暦(P.C.)3000年で、P.C.25000年にプロトカルチャーが全滅したとされ、その詳細は記されていない[10]。『マクロス7』以降に発表された年表ではプロトカルチャーの歴史が大幅に変更・追加され、P.C.2600年代にゼントラーディの量産が始まり、プロトカルチャーはゼントラーディの力を利用して宇宙移民を推し進め、星間共和国を樹立したとされる[8]。P.C.2860年に星間共和国が分裂戦争を始め、P.C.2871年、ゼントラーディよりも高位の生体兵器「エビル・シリーズ」が「プロトデビルン」と呼ばれる生命体となり、プロトカルチャーやゼントラーディを洗脳し、のちに監察軍と呼ばれることになる勢力を築き上げ、侵略を開始する[8]。これに対抗するために、プロトカルチャーへの手出しを禁じたゼントラーディへの基本命令が解除され、最終的にプロトデビルンは封印されるものの、星間共和国が崩壊したためにゼントラーディの再コントロールが不可能となり、P.C.25000年、プロトカルチャーは絶滅に至ったとされるようになる[8]

プロトカルチャー滅亡後、巨人たちは主を失ったまま50万年ものあいだ宇宙をさまよい、戦闘を続けることになる。
地球人類との接触と第一次星間大戦

1999年、監察軍の砲艦(のちのSDF-1 マクロス)が地球に落着する。2009年、これを追跡していたゼントラーディ軍のブリタイ艦隊が地球を訪れる。この時、マクロスのブービートラップが発動し主砲が自動的に発射され、地球人とゼントラーディは戦争状態に突入する。地球人類が失われた反応兵器を使用していることからブリタイ艦隊は全面攻撃を行わず、マクロスの捕獲および調査を行おうとする。

マクロス艦内に潜入したゼントラーディ兵は地球人類とのカルチャー・ギャップに大きな衝撃を受ける。特にアイドル歌手リン・ミンメイの歌声は多くのゼントラーディ兵に影響を与える。ブリタイは上官である基幹艦隊司令長官ボドルザーに地球について報告するが、ボドルザーは地球の文化を危険なものと見なし、殲滅しようとする。一方で、ブリタイ艦隊の中には地球人との和平を望む声が高まり、ボドル基幹艦隊対マクロス・ブリタイ艦隊の連合軍との決戦となる。マクロス・ブリタイの連合艦隊はリン・ミンメイの歌声を流し、カルチャーショックを誘ったうえで母艦内に突入し、ボドルザーを倒す。ボドルザーの配下だった艦隊はフォールド(超空間航行)して他の基幹艦隊に合流したものもいれば、地球人類と和平を結んだものもいる。

2010年4月、生き残った地球人類とゼントラーディによって「新統合政府」が樹立され、共存の道を歩み始める。一方で、ボドル基幹艦隊も銀河系内に数多く存在する基幹艦隊のたったひとつにすぎず、ほかの基幹艦隊と遭遇する危険は残っている。
第一次星間大戦後のゼントラーディ

テレビ版の第28話以降、および『マクロス7』などの続編では旧ブリタイ・アドクラス艦隊将兵の多くがマイクローン化して新統合政府に参加しており、新統合軍にも所属している。地球人とゼントラーディ人のハーフやクォーターも数多く誕生している[注 3]。『マクロス7』などの続編ではテレビシリーズと劇場版の設定が混ざっており、男性をゼントラーディ、女性をメルトランディと呼ぶこともあれば、女性であってもゼントラーディと呼ぶ両方のケースがある[注 4]。大戦後の2度の巨人ゼントラーディ人による反乱により、地球では巨人サイズでの居住が禁止されたが、マクロス7船団にはエキセドル・フォルモら非マイクローンのゼントラーディ人が少数所属しており、マクロス・フロンティア船団でも一部区画にて巨人ゼントラーディ人と地球人・マイクローンとの共存が行われている。

なお第一次星間大戦でのボドル基幹艦隊による軌道爆撃により、人類の生存者は約100万人とされ、帰順したゼントラーディ人約800万人より少数となった[13][注 5]。このため以後の「地球人類」は、マイクローン化した帰化ゼントラーディ人の方が多いことになる[13]

マクロスF』においては、大まかに元ブリタイ・アドクラス艦隊指揮下の帰化ゼントラーディ人と、元ボドル基幹艦隊指揮下の帰化ゼントラーディ人に分類され、前者のゼントラーディは比較的穏健派に属し、地球人類との共存共栄に積極的だが、後者ゼントラーディは上位指揮系統の壊滅により否応なく人類に降伏、和平に応じた勢力であることから、新統合政府に反感を抱いて、反社会的なテロ活動を起こす者も存在するとされる[注 6]。全員がそうとは限らず、大多数のゼントラーディ人の生存者は、新統合政府主導の地球人類との融和・帰化政策に恭順的であり、戦闘種族としての彼らの能力と経験は後年の宇宙移民時代においてもたいへん重宝されている。

身体的な特徴として、寒色系の肌の色が挙げられるが、地球人とさほど変わらない者も多い。劇場版や『マクロスプラス』以降の続編では、旧シリーズにはなかった要素として、尖った耳が特徴として加わっている。地球人との混血児にも純血児ほどではないが耳の端がやや尖っているといった細かな描き分けがなされている。その他、青・緑・ピンクといった純血の地球人には存在しない色の頭髪を持つ者も多く、ハーフやクォーターでもそうした人物が多い。また『マクロスF』では、一部のゼントラーディ人は頭髪が意思や感情により動く能力を持ち、クォーターであるランカ・リーもその能力を受け継いでいるという設定が加えられた。

兵器としてプロトカルチャーにより文化的な思考能力を永く封印されていたが、地球文化との接触によるカルチャーショックの結果、創造的な思考能力を取り戻す。ゼネラル・ギャラクシー社にてVF-9YF-21の開発に関わったアルガス・セルザー、星間運輸会社および民間軍事会社S.M.Sを創設したリチャード・ビルラー(『マクロスF』)などといった技術者や企業経営者も輩出している。


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