セミクジラ
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日本の開国前の19世紀から、米国捕鯨団等の西洋型捕鯨が日本近海へ進出し本種の大量捕獲を行ったため、日本の漁獲高が著しく減少し[12][152]、壱岐などの一部地域では沿岸にクジラが来なくなり鯨漁師がいなくなった。

しかし一方、外国捕鯨の介入以前の沿岸捕鯨の段階で、沿岸の個体群には大幅な減少が見られた可能性も指摘されており[144]、古式捕鯨が持続的であったという言説は再考が必要である[145]。欧米諸国がハワイ小笠原諸島釧路を結んだ三角形の海域「ジャパン・グラウンド」における主対象はマッコウクジラであったとされ、数値統計上セミクジラの狩猟は欧米による捕鯨よりも日本の沿岸捕鯨の方が重圧的で個体群への影響が遥かに大きかったという意見もある[153]

これは、当時の大手の鯨組の一つである「深澤組」が寛政時代初期に廃業したことや、特に西海地域での各藩による市場競争から係争にまで勃発し当時の幕府による調停が刊行されるまでに拡大したことからも確認できる[154]。また、上記の通り、「関東諸浦」では文禄の時代の記録であるにもかかわらず、20年程度で(種類こそ不明だが)該当海域からクジラが激減したとされる[130][146]
捕鯨での乱獲「捕鯨」および「日本の捕鯨」も参照

セミクジラ属の英名の「Right Whale」の「Right」は「(捕獲するのに)都合がよい」という意味の「よい」である[155]。前述のようにセミクジラ属は沿岸に近づき、泳ぎが遅く、脂肪が多いために死ぬと海面に浮かぶことが捕鯨においては最適であったためである。日本列島の近海では、中世から19世紀前半までの日本人は手漕ぎの和船により沿岸で捕獲していたが、19世紀になると欧米やソ連等列強諸国の大型捕鯨船が、北大西洋のタイセイヨウセミクジラと同様に北太平洋でもクジラを取り始め、日本の沿岸捕鯨との相乗が発生した結果、20世紀初頭にはすでに絶滅寸前の状態だった[155]。北太平洋では1960年代まで細々と捕獲されたが、現在は商業捕鯨は完全に停止されている。
密猟

前述のように19世紀までの乱獲が祟り、本種の捕獲停止は1930年代に独自に決議されたが、日本を含む数か国は反対の意図もあって会議に欠席しており、実効性は無かった[156]。その後もこれらの国々による捕獲は続き、日本では南東部北海道や厚岸沖での捕獲など、未記載・未報告の記録も含めて相当数が捕獲された[49]。このほか日本は調査捕鯨との名目で数十頭を捕獲した。

その後、1960年代から70年代後半に行われた、当時のソビエト連邦による大規模な違法捕鯨により、更なる世界中の海洋での大型種の激減と生息数回復の停滞を招き[157]シロナガスクジラ等の一部個体群を消滅、または回復不能にまで追い込むほどであった。ソ連が違法捕鯨で捕獲したジャポニカ種は、判明している限りでも700頭弱に上った。ソ連では鯨油を軍事目的に利用していたため軍事機密であり、当時の連邦の科学者達は監視され、一切の捕獲記録は強制的に破棄され、国際捕鯨委員会には実際の捕獲数よりも遥かに少ない数を報告していたとされる。これらの情報は、連邦崩壊後の2012年に、当時の連邦の科学者達による公開資料で判明した[158]。なお、この違法捕鯨には日本もモニタリング義務を怠り、少なくとも放置および互いの違法捕鯨の機密保持という形での関与が明らかになっている[159]

また、日本国内では法律上の取り扱い[注釈 34]の観点から「混獲」と称した意図的な捕獲が行われる懸念がある[8]。さらに、自然死にしては不自然な状態の遺骸が近年にも日本国内で発見されたことがあり[注釈 35]シロナガスクジラコククジラなど他の絶滅危惧種の肉が日本国内の市場で発見されてきたことからも、本種がこれまでに国内で違法に捕獲されてきた可能性や、今後もそれが発生する可能性が根絶されたわけではない[162][163]

結果的に、セミクジラの減少原因は日本、米国、ソビエト連邦の捕殺による影響が多重的に作用したという意見が出されている。
保護大阪湾エコロジーの象徴としてなんばウォークに設えられたセミクジラのオブジェ[53]。「アンブレラ種」、「象徴種」、および「ボン条約」も参照

セミクジラ科は「アンブレラ種」および「象徴種」であり[164]、セミクジラ達の保護を促進する事によって他の鯨類や他の面の環境保護も恩恵を受けるとされる[165]

日本ではセミクジラは漁業法の下で、商業捕鯨による捕獲が禁止されている[166]。しかし、水産資源保護法の対象種には指定されておらず、座礁・漂着、混獲については水産庁の許可があればクジラが利用可だが[166]、日本の水産庁は日本の食文化よりも日本国内外の世論を鑑み[166]、生体は放流し、死骸は埋設することを指導しており、所持販売も禁止している[166][167]


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