セミクジラ
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さらに、上記の通り定置網にかかった個体が意図的に捕殺される危険性があり[8]密猟の可能性がある事例[160]や、食用に販売された後に市場で発見・報告された事例も存在する[169]

また、現在では日本以外のアジア諸国沿岸での確認はきわめて稀であり、近年の混獲による死亡事故は全て日本での発生である。カムチャッカ半島で1件の混獲死があったが、これは日本漁業の流し網によるものだった[注釈 36]

日本捕鯨協会は、過去、セミクジラの資源量は極めて低い水準にまで落ち込んたが、現在では完全に保護され、絶滅の危機にはないとしている[171]が、IUCN によるレッドリスト等では本種、特に北東太平洋個体群は世界で最も絶滅の危機に瀕した大型鯨類の一種とみなしている[172][173][174]
生存への脅威と課題日本列島で発生した、セミクジラ科への脅威の一つとされる有害藻類ブルーム(水の華)[175]

沿岸性の鯨類全てに共通する問題だが、漁業用の定置網による混獲や船舶との衝突など人間の生活との間に生じる事故が大きな問題である。さらに、ベーリング海ホッキョククジラと本種の雑種の可能性がある個体が発見されたことで、新たなる脅威が危惧されている[176]。温暖化で北極の氷が溶け、かつては流氷などにより遮断されていた他種との分布が重なり始め、交配が発生することである。危惧されているのは、ホッキョククジラやタイセイヨウセミクジラとの交配である。両種とも絶滅危惧ではあるが、太平洋のセミクジラよりは個体数が多いので、交配が度重なりハイブリッドの個体数が増えると、最終的にはセミクジラを圧迫し、「種」としての絶滅を助長してしまいかねない。類似した問題はシロナガスクジラナガスクジラの間にも発生している[177][178]

本種はタイセイヨウセミクジラとは互いに違う大洋に生息するが、北極の氷が溶けると互いの大洋への行き来が可能となる[注釈 37]。大西洋では、ホッキョククジラがタイセイヨウセミクジラの繁殖行動に参加していた観察記録も存在する[179]。一方で、オホーツク海北西部、シャンタル諸島とその周辺では温暖化が提唱される以前よりもセミクジラとホッキョククジラの共存が確認されており、現在でも観察例がある[180]

なお、北西航路に氷が無くなると船舶が航海できるようになるため、その航路が北太平洋のセミクジラの回遊ルートを横切り、船との衝突による死亡数が増加する可能性を示唆する研究者もある[181]。また、気候変動により海水の酸性化や変動、海流や水温、餌生物の発生範囲の変化が懸念されており、大西洋の亜種では回遊の変化がすでに確認されている。環境汚染や騒音が与える影響も依然として無視できない状況である。

また、個体数が大幅に低下しただけでなく、繁殖速度が低く、人間の影響を受けやすいセミクジラ科にとってはシャチの存在も脅威であり(セミクジラ科に限らず絶滅危惧種や絶滅危惧の個体群の生物にとってシャチの襲撃は懸念要素の一つである[182])、気候変動によってシャチの分布が拡大しているためにセミクジラ科や他の北方性の鯨類にとって危険性が増加した可能性も指摘されている[9][183]
関連項目

鯨神

雲見くじら館

利田神社 - 東京湾で発生した「寛政の鯨」事件にまつわる神社であり、該当事件の種類はセミクジラであるとされる場合が目立つ[184]が、シロナガスクジラ等のナガスクジラ科の可能性も指摘されている[185]

脚注.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、セミクジラに関連するメディアがあります。[脚注の使い方]
注釈^ 後述の通り、本来は北太平洋のほぼ全域に分布した可能性があるが、近年ではオホーツク海カムチャッカ半島コマンドルスキー諸島アラスカ州以外での確認はごく稀である。
^ セミクジラ属自体が繁殖速度が遅いだけでなく、北米側の個体群は判明している限りは雄の個体数が雌の個体数よりも大幅に多い[5]タイセイヨウセミクジラの場合は、気候変動などもふくめて生息環境の悪化によって健康状態が悪化し、小型化や繁殖率の低下が確認されている[6]


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