セミクジラ
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セミクジラ属[注釈 13]コククジラザトウクジラは季節的な回遊を行う種類では沿岸性が顕著で浅瀬を好み、日本列島だけでなく世界各地の沿岸捕鯨で主対象とされていたことから、本来は(来遊数の差こそあれど)東京湾[50][51]伊勢湾[52]大阪湾瀬戸内海[53]有明海[54][55]なども含めた日本列島のほぼ全域の海岸がこれらの種類の生息域であった可能性がある[注釈 14]

近年の日本では、知床半島三陸沖、房総半島内外、東京湾南部から相模湾駿河湾など伊豆半島周辺[61][62]から伊豆諸島小笠原諸島に至る海域や熊野灘奄美大島などでセミクジラが冬から初夏にかけてごく稀に確認されている。

日本海側での過去50年内の確認は非常に少なく[63][64]ストランディングと捕獲記録も数件である。過去の記録からすると北西太平洋での南限は中国南部や台湾であり、東部北太平洋ではオレゴン州カリフォルニア半島ハワイ諸島などで近年の記録がある。

採餌場については、東部北太平洋では南東部ベーリング海(ブリストル湾)に集中が見られ、アラスカ湾コディアック島周辺でも確認されていることから、これらの海域が東部のセミクジラの重要な生息域とされる。現在、定期的な集中が確認されているのはブリストル湾のみであり、この海域に回遊する個体群は31頭が写真判別されているが、これらを含めても東太平洋での総個体数は50頭を超えないと言われる。

西部北太平洋において近年の目撃が目立つのは、カムチャッカ半島から幌筵島を中心とした北部千島列島などの沿岸域[65]やカムチャッカ半島の南東沖に集中しており、ベーリング海からカムチャッカ半島千島列島樺太などのオホーツク海周辺が西部個体群の採餌分布域であると推測されている。

科学的証拠が存在する唯一の南北の回遊例は、南東部ベーリング海からハワイ諸島にかけてである[66]
繁殖・越冬海域アナカパ島(2017年)伊豆諸島新島にてテールスラップをする個体(2011年3月)。浅瀬を頻繁に利用するのもセミクジラ科の普遍的な特徴である。

繁殖についても、ほとんど何も生態情報が得られていない。一世紀以上もの間、東太平洋で仔鯨は確認されてこなかった。他のセミクジラ科と同様に、平均で3 - 5年に1頭を出産するという非常に遅い繁殖頻度の可能性があり、回復を妨げる一因にもなっている。

過去の捕鯨記録および現在の状況においても、本種が繁殖や出産、子育てを行った海域は一切判明していない。北大西洋南半球の種類は、冬 - 春期にかけて低緯度の温暖で波の静かな沿岸海域に集まることが知られており、半島海岸沿い等の地形を好んで利用する。また、自分が育った湾や海岸や海域に数年の一定周期で戻ってくるという習性も確認されている。

しかし本種の場合は、その生息数自体の少なさに加え、近年の沿岸での確認例が非常に稀であり、過去の捕鯨記録などの解析でも冬・春季の発見が非常に少なく、沿岸での発見・捕獲自体が少ないこと、それに反して沖合での発見が非常に多い、などから、本種は他の2種よりも沖合性が強かった可能性も示唆されている[67]。回遊経路はおろか、本来は沿岸性が非常に強いはずのセミクジラ科において、本種のみ越冬海域および出産/育児海域が過去の捕獲記録上でも一切判明していない[68]

しかし、本種も水深が数メートルの浅瀬に頻繁に現れたり、狭い[69]フィヨルド[70]港湾[71]に入り込むなど他のセミクジラ属に匹敵するほどに強い沿岸性を持っており[34]日本列島における古式捕鯨の主対象であっただけでなく、主に親子連れを含めて多数が冬から春にかけて捕獲されていたことからも、本種がかつては浅瀬に頻繁に出現していたり、親子連れが沿岸を頻繁に利用していたことがうかがえる。上記の通り沖合性が強かった可能性が指摘される一方で、人間活動の影響で沿岸の個体群が統計が取られる以前の早い段階で壊滅したり、沿岸の生息域を放棄した可能性[注釈 15]が示唆されている[注釈 16][67]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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