セブン_(映画)
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日曜洋画劇場
正味約96分


テレビ朝日版は2018年2月10日にWOWOWで放送される際、地上波放送時にカットされた部分を追加録音した「吹替補完版」が放送された[12]

作品解説

フィンチャーは「フリードキンが『エクソシスト』の後に作ったかもしれない種類の映画」としてセブンを製作した。彼は映画撮影技師のダリウス・コンジと仕事をし、「肩越しに後部座席から徐々に見えるようカメラを動かす」というような(『全米警察24時 コップス』の影響を受けた)単純な撮影技法を採用した[13]

銀残しという現像の手法を使い、コントラストの強い映像となっている。特に捜査官が用いるゴム手袋、図書館のライト(バンカーズ・ランプ)、街頭で配られるクーポン(割引券)など、淡いグリーンの配色に執着している。

騒々しい住人や常に降り続くように見える雨、込み合った都市の通りは本作の不可欠な要因である。フィンチャーは「汚い、暴力、倫理の欠如といった、憂鬱にさせる表現。視覚的に、そして文体的に私たちはこの世界を描写したかった。できるだけ本物で、かつ生きるためには必要とされるものすべてを」と述べている。この目的のために、陰気で、しばしば不気味な世界を作るようデザイナーのアーサー・マックスは注文された。「私たちは、都市の中の人々のモラルの腐食を反映させるためセッティングした」とマックスは述べている。

欧米で「ブリーチ・バイパス」と呼ばれる銀残しを多用した本作の映像について、同様の現像処理は日本で実用化され、色彩を制御する研究の一環として撮影監督のヴィットリオ・ストラーロがテクニカラー現像所とともに試行錯誤を繰り返して来たこと、また銀残し処理が行われた本作の上映プリントが100本のみの配給と限られていたという事実があるにもかかわらず、手法として殆ど忘れ去られていた銀残しの大流行とさらなる技術進化を促し、デジタル撮影機器でも同様の画質をより簡便に得られるような機能が付される現状に至っている。フィンチャーは銀残しを含め反映される画質が意図により近くなるようレーザーディスク・DVD・ブルーレイディスクといった先進メディアによるビデオソフトリリースの度に時間を掛けてフィルムスキャンやリマスター作業を繰り返した。

リマスターされたDVDではオリジナルのネガフィルムからHDスキャンされた。そのため、上映用フィルムやマスター・ポジなど複製を繰り返したものよりもシャープで鮮明な画質を得ている。ポジ現像前のネガフィルムからのスキャンなので、製作時にこだわったブリーチ・バイパスの色調整は1からやり直しになり、コンピューター処理によって当時のフィルムを参照しながら色調整するという手段が取られている。

さらにスーパー35で撮影されていたため、画面を上下に微調整でき、上映時に切れてしまった被写体の調整なども行っている。
脚本

脚本のほとんどはアンドリュー・ケビン・ウォーカーがニューヨークにいた期間に書かれている。「ニューヨークで過ごした過去は嫌いだったが、もしそのことがなければ、私はおそらくセブンを書いていなかっただろうことは事実だ」と語っており[14]、毎日犯罪の絶えないニューヨークでの生活と、それに見て見ぬふりする自身に嫌気が差したことを述べている。図書館でミルトンの『失楽園』やダンテの『神曲』などの古典を読み漁りながら数年かけて脚本を書き上げ、本編中にもそれらはそのまま反映されている。サマセットは俳優のウィリアム・ハートがモデルで、名前はウォーカーが好きな著者であるサマセット・モームにちなんで命名されている[14]

フィンチャーは、長編デビュー作の『エイリアン3』が酷評され興行的にも失敗したことで意気消沈し、「新たに映画を撮るくらいなら、大腸癌で死んだ方がマシだ」と述べて、1年半にわたって脚本を読まなかった。その後配給会社から提示されたウォーカーの脚本を読み、一度は放っておいたものの、読み返すうちに魅力を感じ、監督することを承諾した[13]。フィンチャーはウォーカーの許可を得て脚本の一部を書き直した[14]

結末については、あまりにも過酷であることなどから、配給会社から「サマセットがジョン・ドゥを射殺する」という筋書きも検討されたものの、フィンチャーとウォーカーが反対したため採用されなかった。
配役

企画段階では、アル・パチーノがサマセット役として検討されたが、『訣別の街』に出演するため話はお流れとなった。一時はジェレマイア・チェチックの名も挙がっていた[14]

ミルズ役には、デンゼル・ワシントンも候補に入っていた。

同時期にブラッド・ピットには、『アポロ13』への出演オファーがあったが、こちらの作品の出演を選んだ。本編でピットはジョン・ドゥを追跡するシーンで左腕を怪我しているが、実際に腕を骨折している。これはアクションシーンで、スタントマンを用いずに本人が行ったためである。

撮影前のオーディション(すでにミルズ、サマセット役は決定済)の際、後に警部役となるR・リー・アーメイがジョンを演じて観せたが、フィンチャーやピット、フリーマンは「なんというか、容赦が無さ過ぎる」とコメント、結局正キャストとしてケヴィン・スペイシーがジョン役を引き受けるという経緯があった(DVDコメンタリー)。

スペイシーは「映画が公開されるまで自分が出演していることは絶対に宣伝しないでくれ」と言い、観客のサプライズを狙っていたが、宣伝の際に映画会社のクリエイターがうっかり彼の名前を書いてしまい、激怒したという逸話がある。本編では名前はオープニング・クレジットには入っておらず、代わりにエンド・クレジットで最初に名前が表示される。フィンチャーは「主役2人とグウィネス、その次くらいが犯人だろうと予想されるのを防ぎたかった」と述べている。
舞台

撮影はカリフォルニア州ロサンゼルスで行われた。
劇中音楽

オープニングクレジットで流れる音楽は、ナイン・インチ・ネイルズの「クローサー」のリミックスヴァージョンである。カフェで流れるBGMにはヘアカット100の「ラブ・プラス・ワン」が使われている。

サマセットが図書館を訪れているシーンでは、バッハG線上のアリアが流れる(図書館の警備員がサマセットの為に図書館のスピーカーで流す)。

エンディング曲はデヴィッド・ボウイの「ハーツ・フィルシー・レッスン」。アルバム『アウトサイド』に収録されている。プロデュースはボウイ70年代の3部作を手がけたブライアン・イーノ
反響・評価


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