セシウム
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セシュウム常磐井守泰「種々の汚染対象物への布状セシュウム吸着材の適用経験」『日本原子力学会 年会・大会予稿集』2013年春の年会、日本原子力学会、2013年、629頁、doi:10.11561/aesj.2013s.0.629.0、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}NAID 130004569233。  (要購読契約), 中尾行憲「講89. 胎盤のセシュウム137沈着量について」『日本産科婦人科學會雜誌』第19巻第8号、日本産科婦人科学会、1967年、987-988頁、NAID 110002195198、NDLJP:10665848。 、セシューム[9]とも。
特徴
物理的性質アルゴン中に保存されている高純度のセシウム133

セシウムは非常に軟らかく(全ての元素の中で最小のモース硬度を持つ)、延性に富む銀白色の金属である。少しでも酸素が存在すると金色を帯びてくる[10][11]

融点は28.4 °Cで、常温付近で液体である五つの元素のうちの一つである。金属の中でセシウムは水銀に次いで融点が低い[注 3][13]。加えて、沸点は641 °Cで金属としてはかなり低く、これも金属の中で水銀に次いで低い[14]。比重は1.9であり、比重の軽いアルカリ金属類の中では最も大きい[15]

化合物が燃焼するときに青から紫色の炎を伴うが、これはセシウムの炎色反応によるものである[16][17]。これは主に励起したセシウムの最外殻電子が基底状態に戻る際に発せられる波長455.5 nm、459.3 nmの青色を示す一対のスペクトル線および、697.3 nm、672.3 nmの赤色を示す一対のスペクトル線によるものであり、この特徴的な青色の輝線はセシウムの名前の由来ともなっている[18]。最外殻電子によるスペクトル線が二本に分かれて双子線となる理由は、電子のスピンに二つの方向があるためであり、他のアルカリ金属元素でも同様の双子線が見られる[18]



化学的性質冷水に少量の金属セシウムを加えると爆発する。以下の外部リンクも参照。

金属セシウムは非常に反応性に富み、自然発火しやすい。また、低温でも水と爆発的に反応し、他のアルカリ金属よりも反応性が高い[10]。氷とは-116 ℃でも反応する[13]。高い反応性を持つため、金属セシウムは消防法危険物に指定されている。保存や運送は、乾燥状態にした鉱物油などの炭化水素を満たした容器に入れて行う。同様の理由で、取り扱いはアルゴン窒素などの不活性ガスの下で行わなければならない。真空で密閉されたホウケイ酸ガラスアンプルで保存できる。100 g以上のセシウムは、ステンレス製の容器に密閉されて輸送される[10]

セシウムの化学的性質は他のアルカリ金属、特に周期表で直上にあるルビジウムと似ており[19]、全ての金属陽イオンがそうであるように、セシウムイオンは溶液中でルイス塩基と反応して錯体を形成する。ほかの(放射性でない)アルカリ金属に比べて、原子量が大きく電気的に陽性なので、性質にわずかな違いが生ずる[20]。セシウムは、安定同位体の中では最も電気的に陽性なものである[注 4][13] セシウムイオンはより軽いアルカリ金属のイオンに比べて、より大きく、軟らかい。そのイオン半径の大きさに起因して、他のアルカリ金属元素より多い配位数を取る傾向がある[20]。このような、セシウムイオンの高い配位数を取る傾向とHSAB則における酸としての軟らかさは、セシウムイオンを他の陽イオンから分離するために利用される。この特性を応用して、放射性の 137Cs+ を大量の非放射性のカリウムイオン中から分離するために用いられるなど、核廃棄物の改善において研究が重ねられている[22]。このようにセシウムは基本的にイオン結合性の化合物を形成するが、気体状態では共有結合性の二原子分子であるCs2を形成し、Cs11O3のような一部の亜酸化物においてもCs-Csの共有結合が見られる[23]
構造セシウムの結晶構造。格子定数 a = 614 pm

他のアルカリ金属と同様、金属セシウムは標準状態において体心立方格子構造を取る立方晶であり(α-Cs)、格子定数は a = 614 pm、空間群は Im3m である。41 kbarの圧力下で面心立方格子構造へと相転移し(β-Cs)、その際の格子定数は a = 598 pm となる[24]。更に温度と圧力を上げると、菱面体晶系のγ-セシウムになる。

セシウムのイオン半径は非常に大きいため、イオン半径の小さい他のアルカリ金属元素よりも多い配位数を取る。この傾向は、他のアルカリ金属の塩化物が6配位の塩化ナトリウム型構造を取るのとは対照的に、セシウムの塩化物が8配位の塩化セシウム型構造を取ることに象徴される[20]。塩化セシウム型構造は、塩素原子が立方格子の角の部分に位置し、セシウム原子が立方格子の中央のホールに位置するような、二種の原子からなる8配位の単純な体心立方格子から成っている。臭化セシウム (CsBr) やヨウ化セシウム (CsI)、その他多くのセシウムを含まない化合物もこの塩化セシウム型構造を取る。塩化セシウム型構造は、Cs+ のイオン半径が174 pm、Cl- のイオン半径が181 pmと大きさが近いために形成される[25]
化合物「Category:セシウムの化合物」も参照CsCl 中の Cs と Cl の立方配位の球棒モデル

ほとんどすべてセシウム化合物は、セシウムを Cs+ カチオンとして持っており、これがさまざまなアニオンイオン結合している。例外として、アルカリドである Cs- アニオンを含むものがある[26]。他の例外は亜酸化物で見られる。

Cs+ の塩は、アニオンが有色でない限りほとんど無色である。吸湿性であるものが多いが、他の軽いアルカリ金属よりはその度合いは弱い。セシウムの酢酸塩炭酸塩酸化物硝酸塩硫酸塩は水に可溶である。複塩の多くはあまり水に溶けないので、硫酸アルミニウムセシウムは鉱石からセシウムを精製するのに利用される。アンチモンビスマスカドミウムとの複塩(たとえば CsSbCl4)も難溶性である[10]

水酸化セシウムは吸湿性の強塩基性物質である[19]。これはケイ素などの半導体の表面をすみやかにエッチングする作用を持つ[27]。以前は、Cs+ と OH- の相互作用が小さいことから、CsOH は最も強い塩基であると考えられていた[16]。しかし、21世紀に入り、N-ブチルリチウムナトリウムアミドをはじめ、CsOH より塩基性が強い化合物は数多く見いだされるに至った[19]

ヨウ化セシウム (CsI) は、エックス線蛍光倍増管・ガンマ線検出用単結晶に用いられる。
酸化物Cs11O3の球棒モデル。頂点の紫の球はセシウムを表し、三つの赤い球は酸素を表す

アルカリ金属元素は酸素との二元化合物を多く形成するが[28]、セシウムはさらに多くの酸素との二元化合物を形成する。セシウムが空気中で燃焼する際、超酸化物の CsO2 が主に生成する[29]。これは、超酸化物イオン (O2-) のような不安定な陰イオンが、イオン半径の大きなセシウムの格子エネルギー効果によって安定化されるためである[28]。 Cs + O 2 ⟶ CsO 2 {\displaystyle {\ce {Cs + O2 -> CsO2}}}

「通常の」セシウム酸化物である Cs2O は黄色からオレンジ色をした六方晶であり[30]、唯一の逆塩化カドミウム型構造を取る酸化物である[28][31]。250 °Cで蒸発し、400 °Cで金属セシウムと過酸化物 Cs2O2 に分解する[32]。過酸化物およびオゾン化物 CsO3[33][34] 以外にも、いくつかの明るい色をした亜酸化物について研究されている[35]。これらは Cs7O、Cs4O、Cs11O3、Cs3O(暗緑色[36])、CsO、Cs3O2[37] ならびに Cs7O2 が含まれる[38][39]。これらの酸化物に対応した硫化物セレン化物およびテルル化物も存在する[10]
合金

セシウムは他のアルカリ金属や合金をつくり、水銀とアマルガムをつくる。650 °C以下では、コバルトモリブデン白金タンタルタングステンとも合金をつくる。アンチモンガリウムインジウムトリウムとは、明瞭な金属間化合物をつくり、これらは感光性(英語版)がある[10]。リチウム以外の他のアルカリ金属と混ざり、モル濃度で41%のセシウム、47%のカリウム、12%のナトリウムからなる合金は、すべての合金の中で最低の融点 (-78 ℃) を持つ[13][40]。いくつかのアマルガムが研究されていて、CsHg2 は紫色の金属光沢をもつ黒色物質で、CsHg は同様に金属光沢を持つ金色の物質である[41]
同位体詳細は「セシウムの同位体」を参照

セシウムは112から151までの幅の質量数(すなわち、原子核中の核子数)を持つ39種の既知の同位体を有する。これらの内のいくつかは、古い星の中での遅い中性子捕獲プロセス(s過程[42] ならびに超新星爆発時(r過程)に軽い元素から合成される[43]。しかしながら、唯一の安定同位体は78個の中性子を持つセシウム133のみである。セシウム133は+7/2と大きなスピン角運動量を持っており、この同位体を利用してNMR測定による構造解析が行われる(磁場強度11.74 Tのとき共鳴周波数65.6 MHz)[44]137Cs の崩壊

放射性同位体であるセシウム135は230万年という非常に長い半減期を有しており、セシウム137およびセシウム134はそれぞれ30年および2年という半減期である。セシウム137はベータ崩壊によって短命なバリウム137mに壊変し、その後非放射性のバリウムとなる。セシウム134は直接バリウム134に壊変する。質量数129、131、132および136の同位体は、半減期が1日から2週間の間であり、他の大部分の同位体の半減期は2?3秒から数分の1秒である。少なくとも21種類の準安定な核異性体が存在する。3時間未満の半減期を持つセシウム134m以外は非常に不安定で、2?3分以下の半減期で崩壊する[45][46]

同位体元素のセシウム135は、ウランの核反応によって生成する長寿命核分裂生成物の一つである[47]。しかしながら、セシウム135の前駆体のキセノン135は非常に中性子を吸収しやすく、また、しばしばセシウム135に壊変する前に安定同位体であるキセノン136に変わるため、たいていの原子炉においてその核分裂収量は減少する[48][49]

セシウム137はバリウム137mへとベータ崩壊するため、ガンマ線の強い発生源である[50]


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