法律的には、2つの段階に区分される。 セクシャルハラスメントの被害者が裁判を起こすハードルは高いとされる[67]。その根底には、職場での力関係の差や、調査する側が加害者に近い立場・精神構造である可能性があること、個別事例に対して行政指導ができないことなどがある。また、加害者がセクハラを認めず、謝罪を行わないこともある。こうした背景もあり、被害者がセクハラ行為を立証しようとする中で孤立を深め、加害者からは「やっていない」と言われ、周囲からは「嘘をついているのでは」と疑われてしまうケースも多い[68]。 そうした構造的、心理的な要因からセクハラの暗数は多く、たとえば2019年(令和元年)の日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)による調査では、セクハラ被害を相談・通報をした人は3割程度であった[68]。また、相談・通報した先で「不適切な対応」を受ける場合も多く、4割のケースでは「事情を話したが、調査もされず放置された」という[68]。 セクハラは被害者の主観が重要だと人事院が述べてはいるが、判例では客観性が重要だとされ、一般通常人の判断が基準とされている[要出典]。厚生労働省の事業所に対する指針措置では、被害者加害者の主張が異なった場合には、第三者への聞き取り調査などさらなる事実確認が必要である[69]。 菊池安希子 (2010年) はセクシャルハラスメントを受けた被害者を支援する方法について、「被害者の不快を加害者に伝えることで速やかな行動改善につながる場合も少なくない。具体的には被害内容と意思表示した手紙を内容証明郵便で送るなどの方法がある。(支援者が被害者と)協働して文案を作成すると良いだろう」と述べた[70]。また、証拠資料の整理、リーガル・アドバイス(法律・法令にもとづく助言)、職場の環境調整などの準備とともに、被害者への心理的支援も重要である[70]。さらに菊池は、セクシャルハラスメント事案における関係調整の重要性に言及し、「セクハラ被害の回復援助では、多種の関係調整を行う。(1)関係機関や専門職(弁護士、医師)などのリソースと本人をつなぐ。(2)加害者との関係調整(例:職場復帰の際の約束事を公正証書化するまでの条件調整の支援を被害者の側にたって行う)。(3)職場復帰の関係調整(早めから管理職などに二次被害や被害者の反応についての教育も含めた関係調整を折々に行う)」と述べている[70]。 なお、セクハラ被害が心的外傷となり、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) といった症状を発症するケースもあり、その際の医療的・心理的ケアも重要である(詳細は「心的外傷後ストレス障害 (PTSD)#治療」を参照)[70]。 2019年(令和元年)10月28日、厚生労働省は、労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の分科会で、被害を相談した労働者に対する不利益取り扱いの禁止について、企業規模にかかわらず2020年(令和2年)6月1日から義務化する案を示した[71]。それを受けて改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)が成立し、2020年6月1日から施行された[72]。 この節には、過剰に詳細な記述が含まれているおそれがあります。百科事典に相応しくない内容の増大は歓迎されません。内容の整理をノートで検討しています。(2018年12月) アメリカでは1986年にヴィンソン対メリター・セービング銀行の裁判で初めて[注 2]、合衆国最高裁判所がセクシャルハラスメント行為がアメリカの公民権法第7編(性を理由とする雇用差別の禁止)に違反する性差別である、と認定した[74][75][76]。 グッドウィル・グループがニューヨーク市で経営するレストラン「MEGU」における事例。2006年9月、同店のアジア系女性従業員が、勤務中にセクハラを受けたとして2000万ドルの損害賠償請求訴訟を起こした。AP通信によると、女性は長期に渡って同店の日本人料理長から調理道具や手で乳房や女性器を触られたり、性的な言葉をかけられたという。また、同店でのパーティーの際、別の調理師(事後に解雇)により店外に連れ出されレイプされたという(『USFL』2006年9月22日 [1] 2008年3月に、アデランスの大阪市内の店長を務めていた男性が、兵庫県内の店舗の従業員指導に携わった際、当時従業員であった女性に対し、「ノルマを達成できなければ、自分の彼女になるか、研修もしくは転勤だ」などと言って、無理矢理キスをしようとしたり、体を触るなどのセクハラ行為をしていたことが、2015年1月20日、新聞各社により報じられた。女性は警察への被害届提出を同社幹部から止められたと主張。PTSDと診断され休職したのち、2011年9月に退職を余儀なくされた。女性は同社を相手取り、約2,700万円の支払いを求め大阪地裁に提訴していたが、2014年11月28日付で、解決金1,300万円を支払う(うち半分は男性が負担)ことで和解が成立。和解条項には、男性の勤務地や出張先が、女性の居住地域にならないよう同社が努めることも盛り込まれた[78][79][80]。 2006年、北米トヨタ自動車の元社長秘書(日本人女性)が、同社社長(日本人男性)によるセクハラと同社の対応の不備に対して両者などに1億9000万ドルの損害賠償請求訴訟を起こした事例。その後トヨタ側から巨額の和解金(一説には50億円)が支払われた。 1996年、MMMA(米国三菱自動車製造)は米国政府機関の雇用機会均等委員会 (EEOC) に公民権法違反で提訴され、「日本企業では、女子社員はゲイシャであることを求められている」との日本文化論、大規模なジャパンバッシング、消費者からの不買運動を経て、最終的には約48億円の支払いで和解。 大阪大学は2007年11月20日、医学系研究科の男性教授(47歳)が教え子の女子学生にセクハラ行為をしたとして諭旨解雇処分にしたと発表した。 2018年に京都市の瓜生山学園が運営する京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)が東京都内で行った「ヌード」をテーマとした公開講座に参加した大学OGの美術モデルの女性が講座内容に疑問を呈して講座を主宰した大学に講座内容の改善と対策を求めた。
一次被害
強要(例。部下・同僚の異性の「意思に反して」性的関係を求める)。意に反するとは、「要求を受け入れないと昇進させない」などと対価を示した場合は相手が拒まなくてもセクハラになりえ、そうでない場合は相手が拒んだ後にしつこく強要した場合がセクハラになるという指針を人事院が作成している[66]。これらの行為は、不同意わいせつや不同意性交などの刑事案件となる。
二次被害
中傷(例。上記を断られた報復に、社内外に事実無根のことを流され、噂を理由に仕事を外されたり、解雇される)
周囲の同調(例。中傷を信じた周囲の異性達が続々と性交を要求したり、断られた報復に集団で被害者潰しにかかったりする)
被害者のPTSD(例。中傷を耳にした人達から白眼視され、いじめられ、心に深い傷を負う)
被害者の精神障害(例。美しくあることで傷つくと無意識のうちに記憶、美しく装うこと・異性を極度に恐れる。
被害者の生活の破綻(例。職場でひどい目にあった記憶が強すぎて社会復帰できず、生活が困難になる)
被害者の人間不信による人間関係の破綻(例。信頼した人々から傷つけられた結果、引きこもり化)
項目のうち、1と2は労働事件(刑事事件)、3から6は民事事件(損害賠償請求訴訟)に相当する。
立件の難しさ
被害者支援
主な事例
アメリカ
MEGU
PKO隊員、南スーダンなどの現地女性に性交渉を要求していたことが報じられた。訴えは6年間で480件に上り、ハイチ地震 (2010年) の起きたハイチでは220人以上が薬やベビー用品などと引き換えにPKO隊員との性交渉に応じていた[77]。
アデランス
北米トヨタ自動車詳細は「北米トヨタ自動車セクハラ訴訟事件」を参照
米国三菱自動車
大阪大学
京都造形芸術大学詳細は「京都造形芸術大学#ヌード講座による「セクハラ」裁判」を参照
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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