など、1990年代を通じて日本語として浸透、定着していった。1992年(平成4年)に晴野まゆみが日本初のセクハラ裁判(1989年提訴)で全面勝訴したことは、雇用主へのセクシュアルハラスメント防止措置の義務化を盛り込んだ1997年(平成9年)の男女雇用機会均等法の改正、今日のセクハラ防止ガイドラインが生まれる起爆剤にもなった[34]。
国際労働機関(ILO)が80ヵ国の現状を調査した結果、仕事に関する暴力やハラスメントの規制を持つ国は60ヵ国で、日本は規制の無い国とされた[35]。2018年(平成30年)5月18日、日本政府は野党議員の質問主意書に対して「現行法令でセクハラ罪は存在しない」とする答弁書を閣議決定した[36][37][38]。 厚生労働省の分類では、対価型セクハラと環境型セクハラの2つのタイプに分類される[2]。 職場や学校などにおける立場・同調圧力・階級の上下関係と自身の権限を利用して、下位にある者に対し性的な言動や行為を行い(強要し)、相手が拒否などを示したことによって、降格・解雇、減給や更新拒否などの不利益を与えるセクハラのことである。「パワー・ハラスメント」も参照 職場で働いたり、学校で学んだりする環境を害するような性的嫌がらせのことである。 厚労省の2つの分類に加え、チャットやSNSや電子メールなどでの連絡が原因で起こる「妄想型セクハラ」も増加している[1]。妄想型セクハラは「思い込み型セクハラ」や「疑似恋愛型セクハラ」とも言われており、主にチャットやSNSで連絡を取っているうちに関係性が深まったと思い込みセクハラ発言に至ることである。妄想型セクハラの場合は、セクハラ加害者にはセクハラの自覚が全くなく、セクハラ被害者の拒否や周囲の仲裁が全く聞こえていないことがある。また、類型に「腹いせセクハラ」と呼ばれるものもあり、両者の区別は難しいという[44]。 労働局に寄せられたセクハラ相談件数は、2014年度(平成26年度)で11,289件であった[45]。このうち相談者の内訳は、女性労働者からが59.6%、男性労働者からが5.5%、事業主からが16.4%、その他からが18.6%である[46]。セクハラ相談件数は、男女雇用機会均等法に関する相談のうち45.4%にあたる[2]。 しかし、一般に性犯罪の被害申告率は低く、盗難や強盗の申告率がおおむね6割以上であるのに対し、性犯罪の被害申告率は1割強にすぎない[47]。そのため性犯罪と地続きになっているセクシャルハラスメントの暗数も相当数存在すると考えられ、実際に労働政策研究・研修機構の実態調査によると正社員のセクハラ経験率は34.7%に達するとの結果も出ている[48][49]。 2019年(令和元年)12月2日、厚生労働省の審議会が2019年11月にまとめたハラスメント防止指針[50]では就活生へのセクハラ・パワハラ防止に実効性を欠くとして、慶應義塾大学・上智大学・早稲田大学・国際基督教大学・創価大学・東京大学の学生らでつくる有志団体「セーフ・キャンパス・ユース・ネットワーク(SAY (Safe Campus Youth Network))」が都内で記者会見を開き、指針案の修正と就活セクハラの根絶を訴えるとともに大学を管轄する文部科学省に対して声明文を提出した[51]。厚労省の防止指針では就活生の保護は義務付けておらず、社員に対するのと同様に就職活動をする学生たちへのセクハラ、パワハラも禁止し、相談窓口の設置も義務付けるよう求めている[52]。大学に対しても就活生へのハラスメントの実態調査と相談窓口の設置を求めた[53][54]。 2019年(令和元年)12月11日、セクハラやパワハラの対策を進める厚生労働省は、被害を相談した労働者に不利益な取り扱いをした企業が女性活躍・ハラスメント規制法で社名を公表された場合、ハローワークや職業紹介事業者は一定期間その企業の求人を受理しないことを認めると決めた。不利益な取り扱いを禁じる女性活躍・ハラスメント規制法の施行に合わせ政令を改正。2020年6月から実施する[55]。 2016年度(平成28年度)にわいせつ行為及びセクハラで懲戒処分を受けた教育職員は226人で過去最大であった[3]。加害者の内訳は、男性が223人、女性が3人であり、被害者の内訳は、自校の児童・生徒(元生徒を含む)が52.6%、自校の教職員が16.8%等である。ただし、特に生徒が被害に遭うケースでは、加害者である教師に口止めされたり、親を心配させまいとしたりと子どもが声を上げづらい構造があり、明るみに出るのは氷山の一角とされる[56]。 セクシュアルハラスメントは主に「加害者が男性、被害者が女性」という構図であり、たとえば2015年(平成27年)の労働局への相談件数では、女性労働者からの相談が男性労働者からの相談の10倍以上に達している[46]。しかし、法的には「女性から男性」や「同性間(男性→男性や女性→女性)」でもセクハラは成立する[9]。その中でも、「女性から男性に行われるセクハラ」に関しては、現実問題として男性側の立場が弱いことから『逆セクハラ』といった俗称で呼ばれている[57]。セクハラ相談窓口が被害者が女性であることを前提として作られているケースもあり、男性が被害者の場合、女性が被害者の場合以上に、被害を訴えることが難しい点が指摘されている[58]。一例として、2人の男の加害者による強制性交・わいせつ事件では、2017年から2019年にかけて20代を中心とした100人以上の男性が被害者となったが、実際に被害届を出したのは、わずか9人であった[59]。加害者の男らは、SNSで知り合った男性たちに睡眠薬を飲ませ、わいせつな行為に及んでいた[60]。 就職活動における面接やOB訪問、インターンシップ等における「就活セクハラ」も深刻である。Business Insider Japanが実施したアンケート調査によると、「約5割の学生が就職活動中にセクハラ被害にあっており、そのうち約7割が誰にも相談できずにいる」という[61]。社内や取引先に対するセクハラ対策が進んでいく中、「就活生がブルーオーシャンだ(手を出しても被害を訴えにくいから)」と発言した者もおり[62]、複数の逮捕者も出ている[63]。
類型
対価型セクハラ
酒席で、酌を強要すること。
学校で、教師としての立場を利用して、教師が学生(または学生側の者)に、猥褻行為・性行為・愛人契約を強要すること。
就職活動で、利害関係を利用して、求人側の担当者(または求人側の関係者)が求職者(または求職者の関係者)に、性行為や猥褻行為を強要すること。
職場で、職務上の立場を利用して、上司(または上司側の関係者)が部下(または部下側の者)に、猥褻行為・性行為・愛人契約
商取引で、利害関係を利用して、買い手側の関係者が売り手側の関係者に、猥褻行為・性行為・愛人契約を強要すること。
環境型セクハラ
上司が部下に仕事の域を超えて個人的に親密な関係になることを誘うこと[11]。
ソープランドなどの性風俗店にむりやり誘うこと[41]。
裸踊りを強要すること[42]。
恋愛、結婚、出産のことを尋ねること[注 1]
「(性別)のくせに・・・」「(性別)なら・・・」と発言すること[43]。
妄想型セクハラ
休日にも関わらず業務連絡と見せかけて「休日は何をしているんだ」などプライベートに踏み込んで詮索する
セクハラ発言を拒絶しているのに「自分のことが好きに違いない」と勘違いして、セクハラを継続して行う
日本での実態
職場
学校「スクール・セクシュアル・ハラスメント」も参照
男性へのセクハラ・逆セクハラ
その他
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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