セクションの書法
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セクショナル・ハーモニゼーションは、さまざまな楽器の組み合わせによるセクションにも適用できるが、似た音色の楽器によるセクションに適用するときに最もよい効果が得られる[1]

セクショナル・ハーモニーそれ自体では和声として完成しないため、ベース(バス)による伴奏を必要とする。そのため、本稿ではセクショナル・ハーモニーの譜例にベースも示す。ただし、3声以上のセクションではボトム・パートにベース的な性格を持たせることができ、うまくバランスが取れれば必ずしも伴奏は必要ではない[2](これに関して本稿では#独立性を持つ最下声部でバリトン・サックスによるベース・ラインの一例を示したのみである)。
声部の書法との関連

声部の書法によるクラシック音楽において、声部和声的な厚みを与えたり強調したりする目的で、セクションの書法が慣習的によく用いられている[3]

声部の書法において、同時に演奏されるそれぞれのパートは旋律として独立していて、音楽的に対等であり、どれが主旋律でどれが付随的な旋律というわけではない[4]。これら独立したそれぞれのパートを声部という。クラシック音楽では、和声法が主流になってもなお、この声部書法の手法が受け継がれている[5]

ある声部の旋律に色合いを付けたり強調したりする目的で、声部の書法において、同種または異種の楽器で、その旋律を同じ高さまたはオクターブ離れた位置で同時に演奏させることがよくある[3](これら追加されたパートは和声法の連続1度や連続8度の禁則には該当しない)。

セクションの書法はこれとよく似ている。異なるのは、ユニゾンやオクターブで旋律に色彩を付ける代わりに、3度や6度離れたところに同様の動きをする従属的な旋律を配置し、和声的な方法で旋律に色合いや厚みを付けるところである。[3]セクションの書法においては、このような従属的な旋律を受け持つパートも「声部」と呼ぶが、これは声部書法的な意味での「真の声部」ではない。独立した旋律ではないからである。

クラシック音楽において、セクションの書法が声部の書法に組み込まれることがよくある[3]。次の譜例は2本のフルート、1本のバスーン、そしてチェロの4声部から成る音楽に思われるかもしれない。

フルートのセクショナル・ハーモニーを含む声部書法.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}} フルートのセクショナル・ハーモニーを含む声部書法 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

しかし、第2フルートは、第1フルートとほとんど同じ動きをしており、旋律としての独立性を持たず、真の声部であるとは言えない[3]。第2フルートは第1フルートに和声的な厚みや色合いを添えているに過ぎない。つまり2本のフルートが2声のセクショナル・ハーモニーを奏しているのである。

上の譜例は、実質的には次のような3声から成る音楽であると言える。

実声部のみで書かれた声部書法 実声部のみで書かれた声部書法 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

このような実質的な声部のことを実声部 a real part と呼ぶ[6]

バスーンをセクショナルにハーモナイズすることもできる。このようにしても実質的な声部は3声であることに変わりはない。

バスーンのセクショナル・ハーモニーを含む声部書法 バスーンのセクショナル・ハーモニーを含む声部書法 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

実例

チャイコフスキー作曲「くるみ割り人形」を例に挙げると、「葦笛の踊り」第3小節から40小節にわたりフルートによる3声のセクショナル・ハーモニーが奏でられる。「花のワルツ」では第38小節からホルンによる3?4声のセクショナル・ハーモニーが演奏され、第69?88小節には弦楽器によるダブル・デュエット double duet[注釈 1]を聴くことができる。[注釈 2]
2声のセクショナル・ハーモニー(デュエット)

2声のセクショナル・ハーモニーは、セクショナル・ハーモニーの中で最も音に厚みがない。メロディ楽器が2つしかない時にセクショナルな効果を出したい時の唯一の選択肢である。もっと楽器がある場合でも、2声のハーモニーは薄くて軽いので、後に紹介する多声部で重厚なセクショナル・ハーモニーと対比させると効果的である。2声のハーモニーはその薄さのため、下声部のラインがよく聞こえてしまう。このため、自然な旋律に聞こえるような配慮が下声部のボイス・リーディング(声部連結)に必要となる。

あらゆる音程が使えるが、最も基本となるのは3度と6度のハーモニーである[8]。3度や6度は並行 similar motion させてもよいし、必要に応じて3度から6度へ、あるいはその逆へと入れ替えることもできる。連続3度や連続6度でハーモナイズすると、リード・ラインが和声音であっても、頻繁に下声部に非和声音が現れることになる。自然に聞こえれば3度と6度を入れ替えて回避することもできるし、下声部が付加音(第7音や第6音)やテンションに該当すれば滑らかに並行を続けることができる。ただし、こうした非和声音は、ハーモニーを曖昧にするため、長い音価では使えない。オリジナルのコード進行が2声のハーモニーに適さなければ、修正(リハーモナイズ reharmonization)されることもある。
完全協和音程「ユニゾン」、「完全8度」、「完全五度」、および「完全四度」も参照

完全ユニゾン perfect unison は音が薄いため、通常はフレーズの最初や最後のみに用いられる。

完全8度 perfect octave の使用は完全ユニゾンに準じるが、音はユニゾンほど薄くはならない。

陰伏8度 hidden octave(並達8度)は終止部分以外では避けられる。

完全5度 perfect fifth は独特な癖のある響きをもち、3度や6度を主とする和声とは相性が悪い。和音の根音を含む平行5度は使用できない。しかし、後続の5度音程の片方または両方が非和声音(第6音、第7音、その他)であれば許される。両声の反行 contrary motion の過程で生じる5度や、伝統的なホルンの5度 horn fifth は使用可能である。[8]

完全4度 perfect forth は2声の和声では不協和音程である。

不協和音程

2声のセクショナル・ハーモニーにおいて、不協和音程の適切な解決は何を置いても重要で、遅くとも後続和音で解決されなければならない[8]

不協和音程の処理方法は複数あるが、ここでは性格の異なる2種類の倚音 an appoggiatura、つまりメロディの表情を豊かにするための倚音 an expressive appoggiatura およびリズム効果を狙った倚音 a rhythmic appoggiatura の典型的な処理方法を示す(2声以外でも考え方は同じである)。

※ 強拍または拍の頭にある非和声音で、順次進行で和声音に解決するものを、本記事では便宜的にどれも「倚音」と表現する。

表情を豊かにするための倚音 an expressive appoggiatura(*印)は、不協和音をそのまま保持するか、不協和を強めるようにボイシングをするとよい[8] 再生[ヘルプ/ファイル]リズミックな効果を狙った倚音 a rhythmic appoggiatura(*印)は倚和音 an appoggiatura chord でサポートすると効果的である[8]


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