セクションの書法
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一方、モダンな音楽のメロディは付加音やテンションと相性がよく、5声のハーモニゼーションとよく合う。

※注意 声部 a voice という語は異なる動きをする旋律を指す。声部の数はパートの数(楽器や歌手の数)と同じではない。複数のパートがユニゾンやオクターブで同じ旋律を演奏する場合、それらは1声と数えられる。
4声型ハーモニーの使用

5パートのセクションの向けの最も一般的な編曲手法は、5パート4声型のハーモニーである。メロディ(リード・パート)を1オクターブ下で重複するのが常套手段である[10]。4声のセクショナル・ハーモニーの音の厚さを保ちつつ、メロディをよりくっきりさせることができる。

クローズ、オープン、それぞれのボイシングによる、5パート4声のセクショナル・ハーモニーの例を示す。

4声のクローズなセクショナル・ハーモニーの1オクターブ下でリード・パートを重複している(青色)。よく用いられるボイシングである。 再生[ヘルプ/ファイル]4声のオープンなセクショナル・ハーモニーの1オクターブ下でリード・パートを重複している(青色)。クローズ・ボイシングよりは用いられないが、響きはいくらか豊かになる。 再生[ヘルプ/ファイル]

クラリネット・リード(ミラー・リード)

クラリネット・リード clarinet lead(ミラー・リード Miller lead とも)は、グレン・ミラー楽団のトレードマーク的なボイシングであり、上述の5パート4声のクローズなセクショナル・ハーモニーの応用である[10]

リード・パートに1本のクラリネットを配し、4本のサクソフォンが下声部でサポートする(2本のアルト+2本のテナー・サックス)。クラリネット?1stテナーで4声のセクショナル・ハーモニーを構成し、2ndテナーはクラリネットのメロディを1オクターブ下で重複する。例を示す。クラリネット・リード clarinet lead によるボイシングの例。ミラー・リード Miller lead とも。スティーブン・フォスター(1826 - 1864)作曲「夢路より」。赤がクラリネット(リード・パート)。青がクラリネットを重複する2ndテナー・サックス。 クラリネット・リード この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
5声のハーモニー
ボイシング

5声のクローズ・ボイシングは、特別なアクセント効果や、軽いフレーズに用いられる[10]。これは高音域で使用される。声部がかなり密集しているため、低音域で使用すると音が濁り、効果が疑わしいからである。5声のセクショナル・ハーモニー。クローズ・ボイシング。 再生[ヘルプ/ファイル]

オープン・ボイシングはよく用いられる。5つもの異なる音が同時に響くと、過剰な重々しさや非常な緊張感を感じさせる。このため、できる限り澄んだ響きがするようにボイシングされる。5つもの声部を常に調和させて書くのは時として非常に困難である。たとえばメロディが第9音、第5音、根音であれはボイシングに適するが、第3音、第7音、第6音ではきわめて困難なことがある[10]。回避する1つの方法は、部分的に4声でボイシングすることである。これによるハーモニーの充実感の損失はそれほどでもなく、外れた音も出さずにすむので、無理に5声にこだわるよりよい。5声のセクショナル・ハーモニー。オープン・ボイシング。 再生[ヘルプ/ファイル]

よく澄んだ響きを得るために、ボイシングには倍音列が考慮される。原則として、基本となる三和音部分を最下部に配分する。低音域では、基本的に広い音程で配分される。密集した音程や、高次倍音は高音域に配分すると響きがよい。

メロディやオリジナルのハーモニーが5声のボイシングに適さない場合は、しばしばハーモニーが修正される。代理和音 a substitute chord との交換、トニック化 tonicization、クロマチック・コード a chromatic chord によるアプローチといった手法が用いられる。

代理和音はポピュラー和声を参照のこと。クロマチック・コードは目的のコードに半音上または下からアプローチする和音。上の譜例の1小節目3拍目表の8分音符による和音は裏拍の和音への上からのクロマチック・コードである。
横の流れ

5声のハーモニーは音が厚く、サポート・パートは1つ1つの旋律として聞こえない。だから、サポート・パートのボイス・リーディングの重要性はとりわけ低い。ボイス・リーディング(横のライン)とボイシング(縦の構造)とどちらを優先すべきかと言えば、明らかに縦の構造である。これは声部の書法と矛盾する点である[10]

しかしながら、次項のようにボトム・パートに独立性を持たせる場合がある。その時はボトム・パートの横の流れは適切に配慮されることになる。
独立性を持つ最下声部

サックス・セクションにおけるバリトン・サックスは、セクションとの融合も非常によい。一方、独立した動きができるだけの十分な存在感や重量感も備えている。このため、バリトン・サックスに独立したパートを演奏させることは非常によい用法であり、非常に効果的なことがある[10]

左の譜例では、バリトン・サックスが独立したベース・ラインを演奏している。右の譜例ではリード・パートと反行させている。いずれもバリトンに独立性を持たせることができる。

バリトンに独立性を持たせた5パートのサクソフォーン・セクション。バリトン・サックスはベース・ラインを、残りの4本のサクソフォーンは上声部で4声のセクショナル・ハーモニーを奏でている。終止部は響きを豊かにするために声部が拡げられている(赤枠部)。 サックス・セクションにおけるバリトン・サックスの独立性 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 バリトンを上外声と反行させた例。 バリトンを上外声と反行させた例 この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

このほかにも、オルガン・ポイントやオスティナート、フィルイン fill-in といった手法でも独立性を発揮する。

バリトン・サックスと同様な性質を持つ低音楽器なら、この方法が適用できる。たとえば、クラリネット・セクションにおけるバス・クラリネット木管セクションにおけるバスーンにである。[10]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ダブル・デュエットとは、ある2声のセクショナル・ハーモニーを、同度または異なるオクターブで重複したものである[7]。ここでは、第1および2ヴァイオリンによる2声のセクショナル・ハーモニーを、ヴィオラおよびチェロの2声が1オクターブ下でまるまる重複している。
^ 小節番号は次の版のスコアに付けられたものを使用した。Чайко?вский, Пётр『チャイコフスキー「胡桃割人形」組曲』(第21刷)音楽之友社、1986年5月20日(原著1953年8月20日)、95-99, 110-116頁。 

出典^ a b c Delamont, Gordon 著、株式会社エー・ティー・エヌ 訳『モダン・アレンジ・テクニック』(第1版)株式会社エー・ティー・エヌ、東京都港区元麻布3-12-41六本木ビレッジ・ビル〈Composing/Arranging〉、1988年1月30日(原著1965年)。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-7549-1324-8


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