セクションの書法
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これを drop 3 と言う[9]

第2および第4声部を1オクターブ下げて作る。これを drop 2 & 4 と言う[9]

どれも、単純に声部を1オクターブ下げただけではしばしば好ましくない響きとなるため、そのような場合はボイシングの修正がなされる。

それぞれのボイシングを譜例に示す。クローズ・ボイシング。4 way close としても知られる。 再生[ヘルプ/ファイル]Drop 2 によるオープン・ボイシング。新しい第2声は、テンションに変更できる音は変更される[9](青い音符)。 再生[ヘルプ/ファイル]
Drop 3 によるオープン・ボイシング。第3声をドロップし、第2声がリード・ラインと並行3度をなすように変更される[9](青い音符)。3度の連続が不可能な場合は、部分的にdrop 2でボイシングされたり(橙の音符)、リハーモナイズreharmonization(和声の付け直し)されたりする(トランペット・パートの青い音符)。トロンボーン・パートの青い音符は声部の流れをスムーズにするために変更されているが、リハーモナイズではない(根音の代理音でありGm7のテンションでもある第9音に転位しただけなので和音としては同じものである)。 再生[ヘルプ/ファイル]Drop 2 & 4 によるオープン・ボイシング。第2声と第3声の両方を1オクターブ下げる。 再生[ヘルプ/ファイル]

横のライン

4声のセクショナル・ハーモニゼーションでは、それぞれの声部が同じ方向に進行する並行 similar motion が原則となる。斜行 oblique motion や反行 contrary motion は、使えないわけではないがほとんど用いられない。セクショナル・ハーモニーの目的は対位ではなく、厚みのあるメロディをセクションで創ることだからである。

クローズ・ボイシングでは特に、下声部の旋律的な流れの重要性は低くなる。対位法や伝統的な和声法では個々の声部に対等な独立性が求められるが、セクショナル・ハーモニーの目的は厚みを持つメロディなので、下声部はむしろリード・パートに従属した動きをする方が望ましいのである。

リード・パートはある程度独立して動かしてもよく[7]、セクションの雰囲気も保たれたままである。これが適するのは、特にメロディが装飾的な動きをしているときである。

しかし、下声部に独立した動きをさせることはまずない[7]。聴き手の注意は独立した動きに奪われ、セクショナルな効果が破壊される。音楽的な好ましさの話ではなく、セクションの書法の狙いからは大きく外れるのである。

ほどよい独立性を持つリード・パート。 再生[ヘルプ/ファイル]下声部に独立性を持たせた4声のハーモニー。独立性を持つ下声部(青い音符)に注意が向けられ、セクショナルな効果は失われる。このため頻繁には行われない。 再生[ヘルプ/ファイル]

5声のセクショナル・ハーモニー

5声のセクショナル・ハーモニーの響きはとかく濃密で重々しく、メロディが不明瞭になりやすく、特にシンプルなメロディには大げさすぎてそぐわない。フレーズやコーラスの全体に渡り5声でハーモナイズするのは、ボイシングの点から不可能なこともあるし、できたとしてもたいていは音楽として好ましくない。このことから、奏者が5人いるセクションでも、4声型のセクショナル・ハーモニーが広く使われている。[10]

一方、モダンな音楽のメロディは付加音やテンションと相性がよく、5声のハーモニゼーションとよく合う。

※注意 声部 a voice という語は異なる動きをする旋律を指す。声部の数はパートの数(楽器や歌手の数)と同じではない。複数のパートがユニゾンやオクターブで同じ旋律を演奏する場合、それらは1声と数えられる。
4声型ハーモニーの使用

5パートのセクションの向けの最も一般的な編曲手法は、5パート4声型のハーモニーである。メロディ(リード・パート)を1オクターブ下で重複するのが常套手段である[10]。4声のセクショナル・ハーモニーの音の厚さを保ちつつ、メロディをよりくっきりさせることができる。

クローズ、オープン、それぞれのボイシングによる、5パート4声のセクショナル・ハーモニーの例を示す。

4声のクローズなセクショナル・ハーモニーの1オクターブ下でリード・パートを重複している(青色)。よく用いられるボイシングである。 再生[ヘルプ/ファイル]4声のオープンなセクショナル・ハーモニーの1オクターブ下でリード・パートを重複している(青色)。クローズ・ボイシングよりは用いられないが、響きはいくらか豊かになる。 再生[ヘルプ/ファイル]

クラリネット・リード(ミラー・リード)

クラリネット・リード clarinet lead(ミラー・リード Miller lead とも)は、グレン・ミラー楽団のトレードマーク的なボイシングであり、上述の5パート4声のクローズなセクショナル・ハーモニーの応用である[10]

リード・パートに1本のクラリネットを配し、4本のサクソフォンが下声部でサポートする(2本のアルト+2本のテナー・サックス)。クラリネット?1stテナーで4声のセクショナル・ハーモニーを構成し、2ndテナーはクラリネットのメロディを1オクターブ下で重複する。例を示す。クラリネット・リード clarinet lead によるボイシングの例。ミラー・リード Miller lead とも。スティーブン・フォスター(1826 - 1864)作曲「夢路より」。赤がクラリネット(リード・パート)。青がクラリネットを重複する2ndテナー・サックス。 クラリネット・リード この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
5声のハーモニー
ボイシング

5声のクローズ・ボイシングは、特別なアクセント効果や、軽いフレーズに用いられる[10]。これは高音域で使用される。声部がかなり密集しているため、低音域で使用すると音が濁り、効果が疑わしいからである。5声のセクショナル・ハーモニー。クローズ・ボイシング。 再生[ヘルプ/ファイル]

オープン・ボイシングはよく用いられる。5つもの異なる音が同時に響くと、過剰な重々しさや非常な緊張感を感じさせる。このため、できる限り澄んだ響きがするようにボイシングされる。5つもの声部を常に調和させて書くのは時として非常に困難である。たとえばメロディが第9音、第5音、根音であれはボイシングに適するが、第3音、第7音、第6音ではきわめて困難なことがある[10]。回避する1つの方法は、部分的に4声でボイシングすることである。これによるハーモニーの充実感の損失はそれほどでもなく、外れた音も出さずにすむので、無理に5声にこだわるよりよい。5声のセクショナル・ハーモニー。オープン・ボイシング。 再生[ヘルプ/ファイル]

よく澄んだ響きを得るために、ボイシングには倍音列が考慮される。原則として、基本となる三和音部分を最下部に配分する。低音域では、基本的に広い音程で配分される。密集した音程や、高次倍音は高音域に配分すると響きがよい。

メロディやオリジナルのハーモニーが5声のボイシングに適さない場合は、しばしばハーモニーが修正される。代理和音 a substitute chord との交換、トニック化 tonicization、クロマチック・コード a chromatic chord によるアプローチといった手法が用いられる。

代理和音はポピュラー和声を参照のこと。


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