セクションの書法
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付加音 an added note を使うとハーモニーの厚みが増す[7]。これらはそれぞれセブンス・コード(7の和音)およびシックスス・コード(付加6の和音)と呼ばれる。セブンス・コードやシックスス・コードを基調とする音楽では、第6音および第7音は基本的には和声音 a chord tone とみなされる。また、テンション a tension(和声音のようにも使える非和声音)もよく用いられる。4声のセクショナル・ハーモニゼーションで用いる基本的な和音は、トライアドに第7音または第6音を追加した和音である。
ボイシング

クローズ・ボイシングは音の厚みを最大限に活かせるためよく用いられる。4 way close[9] としても知られる。

オープン・ボイシングは緊張感が低く、豊かなサウンドが得られる。個々の声部が独立して聞こえやすいという特徴から、音色の異なる楽器による4声のセクションでは、そのぶんボイス・リーディングに注意を払う必要がある。

オープン・ボイシングはクローズ・ボイシングの:
第2声部を1オクターブ下げて作る。これを drop 2 と言う[7][9]

第3声部を1オクターブ下げて作る。これを drop 3 と言う[9]

第2および第4声部を1オクターブ下げて作る。これを drop 2 & 4 と言う[9]

どれも、単純に声部を1オクターブ下げただけではしばしば好ましくない響きとなるため、そのような場合はボイシングの修正がなされる。

それぞれのボイシングを譜例に示す。クローズ・ボイシング。4 way close としても知られる。 再生[ヘルプ/ファイル]Drop 2 によるオープン・ボイシング。新しい第2声は、テンションに変更できる音は変更される[9](青い音符)。 再生[ヘルプ/ファイル]
Drop 3 によるオープン・ボイシング。第3声をドロップし、第2声がリード・ラインと並行3度をなすように変更される[9](青い音符)。3度の連続が不可能な場合は、部分的にdrop 2でボイシングされたり(橙の音符)、リハーモナイズreharmonization(和声の付け直し)されたりする(トランペット・パートの青い音符)。トロンボーン・パートの青い音符は声部の流れをスムーズにするために変更されているが、リハーモナイズではない(根音の代理音でありGm7のテンションでもある第9音に転位しただけなので和音としては同じものである)。 再生[ヘルプ/ファイル]Drop 2 & 4 によるオープン・ボイシング。第2声と第3声の両方を1オクターブ下げる。 再生[ヘルプ/ファイル]

横のライン

4声のセクショナル・ハーモニゼーションでは、それぞれの声部が同じ方向に進行する並行 similar motion が原則となる。斜行 oblique motion や反行 contrary motion は、使えないわけではないがほとんど用いられない。セクショナル・ハーモニーの目的は対位ではなく、厚みのあるメロディをセクションで創ることだからである。

クローズ・ボイシングでは特に、下声部の旋律的な流れの重要性は低くなる。対位法や伝統的な和声法では個々の声部に対等な独立性が求められるが、セクショナル・ハーモニーの目的は厚みを持つメロディなので、下声部はむしろリード・パートに従属した動きをする方が望ましいのである。

リード・パートはある程度独立して動かしてもよく[7]、セクションの雰囲気も保たれたままである。これが適するのは、特にメロディが装飾的な動きをしているときである。

しかし、下声部に独立した動きをさせることはまずない[7]。聴き手の注意は独立した動きに奪われ、セクショナルな効果が破壊される。音楽的な好ましさの話ではなく、セクションの書法の狙いからは大きく外れるのである。

ほどよい独立性を持つリード・パート。 再生[ヘルプ/ファイル]下声部に独立性を持たせた4声のハーモニー。独立性を持つ下声部(青い音符)に注意が向けられ、セクショナルな効果は失われる。このため頻繁には行われない。 再生[ヘルプ/ファイル]

5声のセクショナル・ハーモニー

5声のセクショナル・ハーモニーの響きはとかく濃密で重々しく、メロディが不明瞭になりやすく、特にシンプルなメロディには大げさすぎてそぐわない。フレーズやコーラスの全体に渡り5声でハーモナイズするのは、ボイシングの点から不可能なこともあるし、できたとしてもたいていは音楽として好ましくない。このことから、奏者が5人いるセクションでも、4声型のセクショナル・ハーモニーが広く使われている。[10]

一方、モダンな音楽のメロディは付加音やテンションと相性がよく、5声のハーモニゼーションとよく合う。

※注意 声部 a voice という語は異なる動きをする旋律を指す。声部の数はパートの数(楽器や歌手の数)と同じではない。複数のパートがユニゾンやオクターブで同じ旋律を演奏する場合、それらは1声と数えられる。
4声型ハーモニーの使用

5パートのセクションの向けの最も一般的な編曲手法は、5パート4声型のハーモニーである。メロディ(リード・パート)を1オクターブ下で重複するのが常套手段である[10]。4声のセクショナル・ハーモニーの音の厚さを保ちつつ、メロディをよりくっきりさせることができる。

クローズ、オープン、それぞれのボイシングによる、5パート4声のセクショナル・ハーモニーの例を示す。

4声のクローズなセクショナル・ハーモニーの1オクターブ下でリード・パートを重複している(青色)。よく用いられるボイシングである。 再生[ヘルプ/ファイル]4声のオープンなセクショナル・ハーモニーの1オクターブ下でリード・パートを重複している(青色)。クローズ・ボイシングよりは用いられないが、響きはいくらか豊かになる。 再生[ヘルプ/ファイル]

クラリネット・リード(ミラー・リード)

クラリネット・リード clarinet lead(ミラー・リード Miller lead とも)は、グレン・ミラー楽団のトレードマーク的なボイシングであり、上述の5パート4声のクローズなセクショナル・ハーモニーの応用である[10]

リード・パートに1本のクラリネットを配し、4本のサクソフォンが下声部でサポートする(2本のアルト+2本のテナー・サックス)。クラリネット?1stテナーで4声のセクショナル・ハーモニーを構成し、2ndテナーはクラリネットのメロディを1オクターブ下で重複する。例を示す。クラリネット・リード clarinet lead によるボイシングの例。ミラー・リード Miller lead とも。スティーブン・フォスター(1826 - 1864)作曲「夢路より」。赤がクラリネット(リード・パート)。青がクラリネットを重複する2ndテナー・サックス。 クラリネット・リード この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
5声のハーモニー
ボイシング

5声のクローズ・ボイシングは、特別なアクセント効果や、軽いフレーズに用いられる[10]。これは高音域で使用される。声部がかなり密集しているため、低音域で使用すると音が濁り、効果が疑わしいからである。5声のセクショナル・ハーモニー。クローズ・ボイシング。 再生[ヘルプ/ファイル]


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