新機能主義は1970年代の欧州統合の停滞によって説得力を失ったが、1986年に調印(翌年発効)された単一欧州議定書によって1992年度までの単一市場導入が決定し、欧州統合は経済的・政治的に進展した。ストーンスウィートとサンドホルツは、これをスピル・オーバーによって説明するのではなく、政治的統合と超国家的制度の形成過程をEU国境の取引の増加に注目して説明する「経済活動ベース(transaction-based)」の統合理論(超国家主義)として確立した[6]。
法的特徴
国家の主体性についての法原理超国家機関は国家の主体性という法原理において、世界貿易機関や国際連合で見られるような、伝統的な国際法学における「国際的」結合とは異なるものでありながら、国家とも根本的に異なる。超国家機関は独自の主権に基づいておらず、その代わりに超国家機関の権限は加盟国から譲渡された主権、いわば派生的主権に基づいている。
超国家的法令の優位性超国家機関の持つ法的特徴は、とりわけ加盟国において自然人および法人に対する直接効果を発する法令を公布する能力を持つことにある。このため多数説によると超国家機関の法令は国内法に優先して適用されることになる。国際法と違って超国家機関の法令は、国内法の規定に違反していようとも加盟国内において承認・受容される(たとえば欧州司法裁判所での提訴など)。超国家的法令の直接効果により自然人・法人も損害賠償を請求することができる。関係法令が訴訟提起時において必要な修正がなされていない場合には、加盟国内の裁判所における既存の国家賠償請求訴訟の枠組みで賠償を求めることができる。
しかしながら欧州連合には、欧州理事会や共通外交・安全保障政策、警察・刑事司法協力のような政府間主義的な機関・枠組みがあり、それらにおいては国家間の協力を基本としている。 超国家的な組織の事例として、欧州連合の一部となっていた欧州共同体や、欧州原子力共同体、東南アジア諸国連合、アンデス共同体、メルコスール、アフリカ連合、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体がある。最も古い事例としては欧州石炭鉄鋼共同体があったが、これはパリ条約が発効から50年で失効する規定があったため、同共同体は2002年に消滅した。 超国家的機関ははっきりとした、また均衡の取れた機構や、参加国間の緊密な法律上の結束を持つことが特徴である。取り決めにより協議や柔軟性を持つ北米自由貿易協定やアメリカ・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定
事例
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 丸山眞男は、近代国家(国民国家)に共通して内在するナショナリズムと「極端なる」日本の「超国家主義(ウルトラナショナリズム)」の実体と淵源を『超国家主義の論理と心理』に著した。日本政治思想史やファシズム研究の文脈では、「超国家主義」はウルトラナショナリズムを意味する[2]。
出典^ Cini, Michelle and Nieves Perez-Solorzano Borragan, (2019). European Union Politics (6th Edition). Oxford University Press. pp. 58, 59
^ 丸山眞男『超国家主義の論理と心理』岩波文庫、2015年、11-40頁。
^ 遠藤乾『ヨーロッパ統合史:増補版』名古屋大学出版会、2014年、131-142頁。
^ “Treaty establishing the European Coal and Steel Community
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