スーパー・スプレッダー
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コンタクト・トレーシングを通じ、麻疹結核風疹エムポックス天然痘エボラ出血熱重症急性呼吸器症候群 (SARS) でスーパー・スプレッダーが発生していたことが判明している[10][19]
別病原体との重複感染 

ヒト免疫不全ウイルス (HIV)に加え、淋菌淋病)、C型肝炎ウイルス単純ヘルペスウイルス2型など、最低1つ以上の性感染症に罹患している人物は、ウイルス価が同じで性感染症に重複感染していない人物と比べHIVの拡散確率が8倍高い。重複感染している性感染症の治療が完了すると、拡散確率は重複感染が無い人物と同様のレベルまで戻る[20][21]
集団免疫の不足

集団免疫は、ある疾患へ免疫を持つ人物によって、集団内での疾患拡散が防がれ、結果としてその集団で免疫を持たない人物が感染から守られるという間接的な効果を指す。集団内で免疫を持つ割合が大きくなるほど、感染可能性のある接触機会が減り、アウトブレイクも発生しにくくなる。疫学上、集団免疫は「従属性現象」(英: dependent happening)と呼ばれ[22]、時間を越えて感染性に影響することが分かっている。生存者に免疫力を付けるような病原体が、感受性を有する集団内で伝播する場合、感染の可能性がある接触はどんどん少なくなる。感受性のある個体が残っていたとしても、接触相手に免疫がある可能性が増え、結果として感染拡大が防がれる[16][23]。集団内で免疫力を持つ割合が一定の水準を超えると、その疾患は伝染を起こさないようになるが、この水準のことを「集団免疫閾値」(英: herd immunity threshold)と呼ぶ。この値は病原体の感染価や、ワクチンの有効性、また集団内の接触数によって変動する[24]。またこの閾値はアウトブレイク発生を完全に否定するものではなく、あっても限られたものになるという数字である[23][25][26]
スーパー・スプレッダーが発生したアウトブレイク
「チフスのメアリー」 「メアリー・マローン」も参照ニューヨーク、ノース・ブラザー島にあるリバーサイド病院。マローンはこの病院に強制隔離された。2006年撮影。マローンを風刺した記事

腸チフスは、サルモネラ属のチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica、旧称 Salmonella typhi)によって引き起こされるヒト固有の病気である[27]。感染性は非常に高く、抗菌薬耐性となることも多い[28][29]胆嚢などへの保菌により、無症候性キャリアを作ることもあるが、中でも「チフスのメアリー」(英: Typhoid Mary)として知られたニューヨークメアリー・マローンイングランド・フォークストーン(英語版)の「牛乳屋のN氏」(英: Mr. N. the Milker)の例が広く知られている[30]。2人によるスーパー・スプレッディング事例はほぼ同時期に起きており、マローンが1902年から1909年にかけて51人に感染を広げた一方、N氏は1901年から1915年にかけての14年以上に、200人以上に感染させたと推測されている。N氏は保健当局の申し出を受けて、食品産業を辞めることになった。マローンは料理人を辞めることを拒み、ニューヨーク・ノース・ブラザー島(英語版)にある病院へ強制隔離され、1938年11月に69歳で亡くなるまでこの病院で過ごした[31]

チフス菌はマウスマクロファージに感染し、炎症状態と非炎症状態を繰り返すことが知られている。細菌はマウスに症状を起こさないまま生存と増殖を繰り返すが、この現象で無症候性キャリアの原理を説明できる[32][33][34][35]
1989年の麻疹アウトブレイク 麻疹ワクチン接種率


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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