1960年代にはCDC社、1970年代にはクレイ社が、ベクトル演算を中心としたスーパーコンピュータでコンピューター業界でのシェアを伸ばした。また、コンピューターの各種シミュレーションでの民間の利用が拡大したことで、スーパーコンピュータの需要も拡大した。
1980年代にはNECなどの日本のメーカーが海外にも進出し、日米スパコン貿易摩擦にも発展した。
1960年?1980年ころのスーパーコンピュータは、ベクトル型計算機で利用用途が特化され汎用性が低く、巨大で高価であったため、現在では揶揄の意を込めて「巨艦主義」と呼ばれることもある。この表現は海戦史を踏まえたものであり、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけては、海戦では戦艦の攻撃力が勝負の鍵を握り、各国は戦艦を巨大化・巨砲化させることを競ったものの、第二次世界大戦中に、いつのまにか勝利の鍵が巨大戦艦ではなく空母や戦闘機の性能のほうに移ってしまい、戦艦の存在の無意味化が起き、日本の戦艦大和や戦艦武蔵などもむなしく撃沈されてしまったことになぞらえたものである。
1990年代後半に入るとパソコンの普及とパソコン用CPUの処理能力の向上が背景となり、パソコン用で安価なx86やPOWERなどのプロセッサを数百?数千個搭載して計算能力を実現するスカラー型のスーパーコンピュータが台頭し、スーパーコンピュータのコンテストであるTOP500でも上位を占めるようになった。また、スカラー型はCPUの搭載数に応じてスケーラビリティがあるため、中規模の企業や研究所などでも小型のスーパーコンピュータを導入して、費用対効果を保ちながら科学技術計算を行うことができるようになった。
2010年代に入りスーパーコンピュータの開発において中国の台頭が著しく、ランキングに占める数でアメリカを超え[6]、処理性能の世界最高をめぐり日米と争うようになり、米中貿易戦争の対象にもなった[7]。
2010年代後半からは既に大量生産されているGPU[注 1]で汎用計算を行うGPGPUの導入が進んでおり、従来のようにカスタムCPUを新規設計する場合と比べてコストパフォーマンスを向上させる事が可能になってきている。究極の例としては2022年に単一マシンとして世界初のエクサスケールコンピュータとなった米HPEの「フロンティア」が挙げられ、GPGPUは世界の最先端を競う分野でもかなり信頼されていると見ることができる。 初期段階では主に軍事用に用いられた。現在のスーパーコンピュータは、高速演算、大量演算を必要とする分野に広く利用されており、たとえば次のような分野である。 なお、「計算能力によるコンピューティング」[注 2]と、「計算容量によるコンピューティング」[注 3]は、関連はあるものの異なるものである。一方の「計算能力によるコンピューティング」は、典型的には「大きな問題を最大のコンピューティングパワーを使用して最短時間で解決する」考え方であり、あるシステムで解決できるサイズや複雑さの問題が、他のコンピュータでは解決できない。他方、「計算容量によるコンピューティング」はそれとは対照的に、大小の問題を解決したりシステムの稼動準備をするために、コンピューティングパワーを効率的な費用対効果で使用する考え方である。 スーパーコンピュータといえども、プロセッサ、メモリ、ストレージ、ネットワークなどのハードウェアと、その上で動くオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションなどのソフトウェアから構成される点では一般的なコンピュータと同じである。ただし、スーパーコンピュータのユーザは、本体とは別に用意された端末で操作したり、あるいはSSH・telnet経由で(遠隔で)操作を行う。 スーパーコンピュータに搭載されるプロセッサの役割も、(普通のコンピュータ同様に)計算処理を行うことである。 一般的なコンピュータと(最近の)スーパーコンピュータの大きな違いは、処理を並列に実行する点にある。通常の単純なプロセッサは、一命令あたり一つの演算だけを行うスカラープロセッサで、一般的なパーソナルコンピュータ(PC)に搭載されるプロセッサ数も1つかごく少数である。スーパーコンピュータでは、1クロックで複数の演算を一度に行うベクトルプロセッサを採用し、システムの中に数十個から数十万のプロセッサを搭載し計算を同時に実行することで高いスループットを実現する構造となっている。
主な用途
機械・土木・建築分野での構造力学。機械の設計、橋梁の設計など。
電気工学・物理学分野での電磁界解析。アンテナの設計、高周波回路の設計、無線通信の伝播設計など。
機械、化学、地球物理学(大気・海洋)分野での流体力学。輸送機器の機体設計、エンジン、タービンなどの原動機の設計、気象予報、気候変動予測、環境汚染物質の増減の予測、農業など。
化学、物性分野の化学反応、固体物理学。計算化学(構造体、化合物、生物学上の高分子、ポリマー)、結晶の物性、第一原理計算など。
原子力利用分野の核反応。原子炉内の核分裂反応、核融合の研究、核兵器の研究など。
構成要素
プロセッサ
Size:107 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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