このようにして広範な地域に広がったスンナ派は、スンナ派と一口に言っても、例えば東南アジアの国インドネシア・ジャワ島のスンナ派と中央アジアの国ウズベキスタンのスンナ派と、西アフリカの国マリ共和国のスンナ派の間で実態に違いが見られる。ジャワにはジャワ神秘主義があるし、ドゥクンと呼ばれる一種の黒魔術師すら認められる。シーア派が教理によって多様化したのと異なり、多様な地域に根付き土着化したことで多様な宗派を形成するようになった。 しかし、歴史的にスンナ派内部では、自らの多様性に対し、預言者の時代を見習い(見直し)、“退廃した”社会をただそう、より“正しい”社会になろう、という復古改革運動がしばしば見られる。特に近代に至ってサウジアラビアでワッハーブ派の改革運動が生まれ、その影響を受けてコーラン・スンナの規定を厳格に適用することで多様性・土俗性を廃そうとするイスラム原理主義と通称される初期イスラーム復古運動へとスンナ派ムスリムの一部は現在も進みつつある。特に近代のスンナ派の復古運動は時に反帝国主義・反共産主義・反ユダヤ主義・反米などの意識と結びつき、無視できない潮流となっている。
復古改革運動
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 「スンニー」はアラビア語で範例を意味する語「スンナ」の形容詞形[3]。
出典^ a b “Mapping the Global Muslim Population
^ イスラームの歴史1, p. 121.
^ 鎌田繁