スワヒリ語
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文法
名詞クラス

バントゥー諸語全体の特徴でもあるが、名詞はいくつかの部類に分類され、部類ごとに特定の接頭辞が付く。その部類を名詞クラスと称する。さらにどの部類の名詞を形容するかによって形容詞が変化し、どの部類の名詞を主語あるいは目的語にするかによって動詞が変化する。このため、文脈上明らかな場合は 主語や目的語を省略できる。

Meinhof systemに則って単数と複数を別々に数えるなら、祖語には22クラスあったとされ、ほとんどのバントゥー諸語が少なくともそのうち10クラスを有している。スワヒリ語には16クラスあり、うち6クラスが単数名詞、5クラスが複数名詞、1クラスが抽象名詞、1クラスが動詞の不定詞(名詞的な扱い)、3クラスが場所を主として示す。

クラス接頭辞単数意味複数意味
1, 2m-/mu-, wa-mtu人watu人(複数)
3, 4m-/mu-, mi-mti木miti木(複数)
5, 6O/ji-, ma-jicho目macho目(複数)
7, 8ki-, vi-kisuナイフvisuナイフ(複数)
9, 10O/n-, O/n-ndoto夢ndoto夢(複数)
11u-ua花 
14u-utoto子供であること

単数がm-、複数がwa-で始まる名詞は「生物」、とくに「人」を示す(例:mtu(人)・watu(複数)、mdudu(虫)・wadudu(複数))。 単数がm-、複数がmi-で始まる名詞は「植物」を示すことが多い(例:mti(木)・miti(複数))。動詞の不定詞はku-で始められる(例:kusoma(読む))。それ以外のクラスは区分が複雑である。単数がki-、複数がvi-で始まる名詞は、しばしば工具などの「人工物」を示す。このki-/vi-交替は、語根がki-で始まる外来語にまで適用される(例:kitabu(本、アラビア語のkit?bに由来)→vitabu(複数))。このクラスは「言語」も示し(例:Kiswahili(スワヒリ語))、指小辞としても使われる。かつてのバントゥー語では別々だったクラスが合流したものである。u-で始まる名詞はたいてい抽象名詞を示し、複数はない(例:utoto(子供であること?))。n-やm-または接頭辞なしで始まり、単複同形のクラスもある。単数がji-または接頭辞なし、複数がma-で始まるクラスは、しばしば指大辞として使用される。
照応

名詞だけ見る限り所属クラスが不明確な場合でも一致を確かめれば分かる。形容詞や数詞は通常、名詞の接頭辞をとる。動詞は別の接頭辞の体系をとる。(下記参照)

単数   複数
 
mtotommojaanasomawatotowawiliwanasoma
子供1読んでいる子供(複数)2読んでいる(複数)
(一人の)子供が読書している二人の子供が読書している
 
kitabukimojakinatoshavitabuviwilivinatosha
本1十分だ本(複数)2十分だ(複数)
一冊の本で十分だ二冊の本で十分だ
 
ndizimojainatoshandizimbilizinatosha
バナナ1十分だバナナ(複数)2十分だ(複数)
一本のバナナで十分だ二本のバナナで十分だ

同一の名詞語根に異なる名詞クラスの接頭辞を付加することで派生語を作れる。例1:「人」クラスmtoto (watoto)(子供)・抽象名詞クラスutoto(子供であること)・縮小語クラスkitoto (vitoto)(幼児)・増大語クラスtoto (matoto)(年長の子供)例2:「植物」クラスmti (miti)(木)・「人工物」クラスkiti (viti)(椅子)・増大語クラスjiti (majiti)(大木)・kijiti (vijiti)(棒)・ujiti (njiti)(細く高い木)

スワヒリ語の名詞クラスのシステムは文法性の一種とされるが、ヨーロッパの言語に見られる文法性とは異なる点がある。ヨーロッパの言語の文法性がほぼ恣意的であるのに対し、スワヒリ語における名詞のクラス分類は多分に意味的な関連性に基づいているのだ。しかし、名詞クラスを「人」や「木」といった単純なカテゴリーと捉えることはできない。意味が拡張され、拡張された意味に似た単語意味がまた拡張され、ということが行われた結果、名詞クラスは意味で繋がった網となっている。今でもその繋がりは広く理解されているが、非スワヒリ語話者には分かりづらいものがある。

スワヒリ語では普通の人の名詞クラスは「人」だが、盲人などの障害者は「もの」で表現されていた。この障害者差別的な語法に反対し、近年多くの障害者や人権団体などが障害者を「人」クラスで表す語法を広めている。

有名なスワヒリ語にはJamboがあるが、「物事」の意味で、"Hujambo.", "Hamjambo." のように人称接頭辞をつけることで、挨拶の言葉となる。
動詞複合体

スワヒリ語の動詞が動詞そのまま(動詞語幹そのまま)で使われるのは命令形のみであり、通常は主語と対応した接頭辞、時制標識、目的語を示す接頭辞など様々な接頭辞が複合的に付加される。さらに動詞の意味を拡張する接尾辞も追加されることもある。こうした複合体を動詞複合体という。

なお目的語の接頭辞は目的語と照応したものが使われる。
方言と統制機関

標準スワヒリ語は1930年にザンジバル方言を元に定められているが、スワヒリ語には多くの方言が存在する。特に20世紀にスワヒリ語使用域が急拡大するのに伴い、白人入植者や各地のアフリカ人との混交から生まれたケニア内陸部のアップカントリー・スワヒリ(内陸スワヒリ)や、コンゴ盆地のコンゴ・スワヒリなどといった新たな方言が生まれた[12]。とくにコンゴ民主共和国のマニエマ地方などで話される方言はキングワナとよばれる[13]。スワヒリ語を統制する機関は1967年に設立されたタンザニアの国立スワヒリ語審議会(Baraza la Kiswahili la Taifa、BAKITA)と、1998年に設立されたケニアの国立スワヒリ語協会(Chama cha Kiswahili cha Taifa、CHAKITA)がある。
各国の現況
タンザニア

2012年現在、最もスワヒリ語の重要性が高いのはタンザニアである。タンザニアにおいてはスワヒリ語は元々タンガニーカ海岸部のスワヒリ系民族の母語であり、内陸部にも広く浸透していた。これを受けて1960年のタンガニーカ独立と同時においてスワヒリ語は公用語に指定された。1964年には沖合いに浮かぶザンジバルと合併してタンザニア連合共和国となるが、ザンジバルにおいてはもともとスワヒリ語の母語話者がほとんどを占めており、この政策はより推進されることとなった。


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