スロットマシン
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バーチャルリールとは、1982年に米国ネバダ州リノ在住のインゲ・S・テルナエス[注釈 6]により特許申請され、1984年に認可された、リールマシンに関する技術理論である。これは、マシンの稼動から得られる利益を減らすことなく、より高額のジャックポットを容易に提供できるマシンを作ることを目的とするもので、その手段として、従来は機械的な動作で得ていたゲームの結果を、コンピュータで電子的に得るようにしようというものである(詳細は後述「動作原理」参照)。前出のバーリー社は、1980年にこの理論を応用した初めてのリールマシン「E-1000」シリーズを発表している。

1985年、日本のユニバーサル社(現ユニバーサルエンターテインメント)は、バーチャルリールを実現する目的で、二人の米国人開発者によってリール機構にコンピュータ制御されたステッピングモーターが採用されたリールマシンを、ラスベガスに初めて投入した。バーチャルリールとステッピングモーターの組合せは他社製品にも瞬く間に広まり、現代のリールマシンの必須要件となった。これは30年以上経過した現在も変わっていない。

ステッピングモーターのリールマシンへの導入自体は、1982年に、英国ウェールズのJPM社によって、国内市場向けの「ナッジ・マシン」と呼ばれるスロットマシンで既に行われている。このマシンでは、リールが停止した後も、プレイヤーがボタンを操作することによって更にシンボルを上下にずらすことができる「ナッジフィーチャー」で、ステッピングモーターの特性が利用されていた。ただ、このゲーム機が設置されている地域は非常に限られており、これを現代の新機軸リールマシンの直接の起源として結びつけるには根拠となる資料が不足している。

日本においては、英国よりも更に早い1980年に、やはり国内市場向けの「パチスロ」に、ステッピングモーターが使用されていたとの記録が残っている。これは、パチスロがストップボタンによってプレイヤーの任意のタイミングでリールを停止させるゲームであるため、パチスロの内部で行われる電子的な抽選結果に反するゲーム結果とならないようリールを制御する目的に使用されたものであるが、この事実と、ラスベガスで初めてステッピングモーターを使用したリールマシンを展開したのが日本のパチスロメーカーであったユニバーサル社(当時)であることを考え併せると、現代リールマシンの最も重要な技術改革の一端は、日本を起源とする可能性が高い。
動作原理

1980年代中頃以前、すなわちステッピングモーターが導入される以前のリールマシンは、ハンドルを引く動作を利用して伸ばしたばねの力を動力源としてリールを回転させ、リールの停止及び表出したシンボルの検知は、歯車、金属製のアーム、接点式スイッチなどを組み合わせて機械的および電気的に行っており、どのシンボルが表出するかは、実際にリールが停止するまでわからなかった。このような機械的な構造は、物理的な制約が多く、ゲーム性や射幸性の幅を拡げるにも限界があった。また、レバーを引く程度や要する時間などにより、いわゆる「攻略」することができるものも一部に存在し、「リズムボーイズ」と呼ばれるプレイヤー層によってカジノ収益が脅かされることもあった[2]

現代のリールマシンは、コンピュータプログラムを搭載したIC基板とステッピングモーターをその構成の核として、バーチャルリールという考え方で動作している。バーチャルリールとは、ゲームの結果として表出するシンボルを、コンピュータプログラムの中に仮想的に格納されているシンボル群から「ランダムナンバージェネレーター」[注釈 7]と呼ばれる乱数発生回路によって電子的に決定するという手法で、ステッピングモーターは、その結果に従って目的のシンボルが所定の位置に停止するよう回転を制御するために必要な技術である。仮想的なシンボルの数は、ステッピングモーター以前の技術が抱えていた物理的な制約がないため、理論的にはほぼ無限に設定できるので、出現確率が大変低いシンボルを設定して、非常に高額な当たりを提供するということも容易となった。

ビデオスロットの動作原理は、リール部分がビデオモニターに映し出されるコンピュータグラフィックスに置き換えられてはいるが、基本的には現代のリールマシンと同じである。
ビデオスロット

初めてのビデオスロットは、1970年代後半、ちょうどビデオゲームが産業として華々しく発展していた時期に登場し、最先端のハイテクノロジーを駆使したゲーム機として注目を集めた。しかし、画面にメッセージが表示できるなど多少の付加価値はあったものの、本質的には従来のリールマシンのリール部分をビデオ化したに留まるものであったためしだいに廃れ、またリールマシンにはステッピングモーターが導入されて一段と射幸心の高いゲームが提供されるようになったこともあって、一部の市場を除いてはあまり顧みられることはなくなった。しかし、2000年前後頃になると、コンピュータ技術も格段に向上し、高度なコンピュータグラフィック表現を用いたボーナスゲームなど、ゲームの魅力を高めるフィーチャーにその能力が発揮されるようになってからは人気が高まり、カジノを席巻するまでになった。2020年時点では描画エンジンにUnityが専用版を提供するなど、よりリッチな表現を容易に実現可能とする技術的な進歩が進んでいる分野である。

ビデオスロットは、また、リールマシンでは無理があるようなペイラインの設定などでも、グラフィックによる自由度の高い表現力で克服できるとして、1回のゲームによりたくさんのお金をかけることが出来るような作りにし易かったという点も、現在の隆盛を見る要因の一つと言える。
プログレッシブジャックポット

大当たりのことを一般に「ジャックポット (JACKPOT)」と呼ぶが、中でも賭け金の一定の割合を特定の当たり役の配当に加算する事で賞金を増加させるシステムを「プログレッシブジャックポット」と呼び、通常の大当たりとは区別してプレイヤーに対するより強いインセンティブとしてアピールされる。これはスロットマシンには馴染み易いフィーチャーで、1960年代には既に取り入れられているリールマシンが出現している。プログレッシブジャックポットには、以下のタイプがある。
設置されたマシン単体で賞金が積み上げられる「スタンドアロン」

単一カジノ内の同種マシンで一つのプログレッシブジャックポットを共有する「リンクド・プログレッシブ」

複数のカジノや複数の州(アメリカ)を跨ぐ同種マシンで一つのプログレッシブジャックポットを共有する「ワイドエリア・プログレッシブ」

リンクド・プログレッシブの変形で、ゲームの結果によらず、いつ、誰に、どんなタイミングで当たるかわからない「ミステリー・ジャックポット」

これらのうち、「ワイドエリア・プログレッシブ」は、バーチャルリールとステッピングモーターの導入によって膨大な組み合わせ数を作ることが可能となったからこそ実現できたもので、当選賞金の世界記録を更新するなどでときおり一般にも報道されることもあり、現代のスロットマシンを象徴するフィーチャーの一つと言える。

なお、「ジャックポット」という言葉を、「プログレッシブジャックポット」の同義語のように用いる混乱が、一般マスコミで散見される。必ずしも誤りとは言えない場合もあるが、プログレッシブ・ジャックポット以外はジャックポットとは呼ばないかのような誤解を与えかねない用法には注意すべきである。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ : coin slot
^ : coin-op machine
^ 不道徳な見えざる手 自由市場は人間の弱みにつけ込む
^ : pokie machine
^ : Bally
^ : Inge S. Telnaes(Telnausと記述する資料もある)


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