スリーポインテッド・スター
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これは、原型の誕生時の逸話を踏まえたもので、夜空、すなわち宇宙の漆黒を表している[5]

第一次世界大戦(1914年 - 1918年)の終戦後、敗戦国となったドイツではインフレにより経済は低迷し、自動車販売も苦境にあった[8]。1900年代から競合していたダイムラー社とベンツ社は生き残りを図るために協力関係を結び、1924年頃から両社の標章を使用した共同広告を頻繁に出していた[8]

1926年6月28日、両社は合併してダイムラー・ベンツとなり、標章についても両者の重要な要素を残して融合させたものが考案された[8]。すなわち、ダイムラー社の標章からはスリーポインテッド・スターを残し、ベンツ社の標章からは月桂冠を残すという形となった[8]。合併に際して、車両のブランド名はダイムラー社の「メルセデス」とベンツ社の「ベンツ」を合わせて「メルセデス・ベンツ」となり、新たなスリーポインテッド・スターが、エンブレムやフードマスコットとして用いられるようになった[1]

ダイムラー時代の1921年11月から、スリーポインテッド・スターと円のみを使用した形のラジエーターマスコットが使用されるようになり、これはダイムラー・ベンツ車両にも引き継がれ、フードマスコットとして長く使われることになる[5](→#自動車における使用)。1989年にはこの意匠に基づいた標章がダイムラー・ベンツの正式な標章となった。一方、1926年以来のラウンデルを用いた標章はその後もほとんど変更されることなく、2020年代の今日まで車両のボンネット前端に掲げられ、使用が続けられている[8]

1926年の標章[注釈 4]。エンブレムとして用いられ、現在もほぼ同じ意匠でボンネット前端に付けられている。

1933年に追加された標章[3]

1989年に制定された標章。現在のブランドロゴ(次画像)にはこちらの標章が用いられている。

メルセデス・ベンツの現在のブランドロゴ

自動車における使用
マスコットの誕生 メルセデス・ベンツのフードマスコット

ダイムラー社の最初のスリーポインテッド・スターは1909年頃からラジエーターの装飾として導入された。その後、ラジエーターキャップの装飾として、スリーポインテッド・スターのマスコットがラジエーター上に直立して掲げられるようになった。1930年代以前に自動車会社が独自のマスコットを付けるのは当時一般的に行われていたことである。

ダイムラー・ベンツとなった後も、ダイムラー時代とほぼ同じ意匠のラジエーターマスコットが使用され続けた。ベンツ社との合併に伴い、マスコットにも月桂冠を足す試案も検討されたが、採用はされなかった[5]

1910年頃: メルセデス・ダブルフェートン(イタリア語版)。スリー・ポインテッド・スターを掲げ始めた頃の車両[1]

1923年: メルセデス・10/40PS(英語版)。ダイムラー社時代のラジエーターマスコットを装着している。このシンプルな造形が1989年に制定された標章の基となる。

1927年: メルセデス・ベンツ・W06(タイプS)。ダイムラー・ベンツ設立初期のラジエーターマスコット。

1930年: W07(770)。当時の最高級車で各国の国家元首などに愛用された。ホイールキャップにもスリーポインテッド・スターがあしらわれている。

1934年: W23(英語版)(130)。初期の例外で、リアエンジン車であるため車体前部にラジエーターがないため、マスコットを直立させずボンネット表面に沿って置いている[9]

1934年: W25。スリーポインテッド・スターが塗装で描かれている。空力的な影響を無視できないレーシングカーではしばしばこうした塗装やシールが用いられる。

1930年代: O 10000(フランス語版)。ボンネットバス/トラックでもラジエーターマスコットが使用されていた。そうした車両のフロントグリルでは「DIESEL」の文字と共に使用することが一般的だった[9]。この車両では車体正面の3ヶ所に標章が用いられている。

第二次世界大戦以降1920年代からエンブレム(「MERCEDES BENZ」と書かれている)とマスコット(もしくはフロントグリルの標章)を併用している[5]

第二次世界大戦後、ボンネット上にラジエーターキャップを置くことがなくなっていったことに伴い、自動車会社各社はボンネット上の「ラジエーターマスコット」を撤去していった[注釈 5]。ダイムラー・ベンツの場合、スリーポインテッド・スターはダイムラー兄弟の上記の着想から制定されたものであり、「幸運の星の下で安全を願う」というメッセージが込められている[9]。そのため、ラジエーターキャップが必要なくなった後もボンネット上にマスコット(フードクレストマーク)を置く伝統は続けられた[9]

こうしたボンネット上のマスコットは、衝突事故が発生した時の歩行者の安全性を高めるため、1957年からはバネが入れられ、衝突時に自動的に曲がるようになった。

1952年: メルセデス・ベンツ・300SL(英語版)(W194)。乗用車では、レーシングカーであるこのモデルからフロントグリルに標章を配するようになった[5]

ウニモグ。スポーツカーやトラックでフードマスコットは基本的に用いず、フロントグリルに大きなスリーポインテッド・スターが用いられている[5]

1998年: メルセデス・ベンツ・CLK-LM。最高時速300 km以上で走るレーシングカーにフードマスコットを装着した珍しい例[注釈 6]

2010年代: Eクラス(W213)。フードマスコットを装着。1990年代以降、フードマスコットは省略されることが増え[9]、限られた車種やグレードのみに用いられるようになった。

2010年代: Eクラス(W213)。フロントグリルにスリーポインテッド・スターを配置。同じ車種でもグレードによって使い分けられている例。

建造物における使用


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