スラムを民間部門の自由な社会経済活動の場と捉えて、住民を草の根民活として、肯定的に評価する立場もある。農村にあっても十分な収入を期待できない場合、都市に流入する貧困者が多いが、都市に転居しても、工場労働者や事務員のように正規の雇用機会は得られない。そこで、自らが、露天、靴磨き、廃品回収などの小規模で、元手があまりかからない仕事を創出する。こうして、スラムの未熟練労働者が多数就業する都市インフォーマル部門が開発途上国の大都市で成長している。こうしたスラム住人は小規模自営の労働集約的な生業に就くことで、貧困状態にはあっても、失業者や犯罪者とは異なる地域コミュニティを形成している。 当記事ではスラムと、シャンティ・タウンを同義として記述しているが、英語における本来の意味はそれぞれ異なっている[注 1]。
シャンティ・タウン、テント・シティー
シャンティ・タウン
シャンティ[注 2]は、本建築で使われるような建材ではなく、あり合わせの主に廃材などから作られた掘っ立て小屋・あばら家・バラックなどの簡易住居のことで[8]、このような建築物からなる地域がシャンティ・タウンと呼ばれる[9][10]。貧民街やスラムとほぼ同義ではあるが、貧民街やスラムの場合は先進国の大都市の古くなった区画がスラム化し貧民街と呼ばれる場合がある。これらスラムは恒久建築物の区画であり、あばら屋からなるシャンティ・タウンとは異なる[11]。先進国のスラム街には、もともと上下水道や電気ガスなどのインフラは整備されているが、違法建築
テント・シティー(英語版)
仮設の簡易住居という点ではテント・シティーもシャンティ・タウンと似ているが、テント・シティーには自治体や軍・国家などの公的組織により設置される被災者、難民、兵士を収容するための住居群であり、公認の地区である。またテント・シティーには先進国におけるホームレスの人々により設営されるテント群も含まれるが、これらは道路わきや公園などにテントが張られるものであり、これらのテント住民に向けての公的な支援はない。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 英語版ではスラムとシャンティ・タウンはそれぞれ独立記事となっているが、スラムの記述内容は主にシャンティ・タウンについてとなっている。それぞれの記事のノート頁では統合・分離の議論が10年以上続いている。
^ Shantyの語源はフランス語のchantierでその意味は建設現場、作業現場、飯場などの意味と、木こりなどの山中における簡易住居の意味がある。
出典^ 永野征男『都市地理学研究ノート』冨山房インターナショナル 2009 Google Books版 2017年7月14日閲覧。
^ Slum Dwellers to double by 2030:Millennium Development Goal Could Fall Short Archived 2013年3月17日, at the Wayback Machine.
^ ⇒東京の都市下層社会と「細民」住居論『都市と技術』石塚裕道、国連大学出版局・国際書院、1995年
^ 川元祥一・藤沢靖介『東京の被差別部落』p.119、三一書房、1984年
^ 東京の貧民窟『東京学』石川天崖(育成会, 1909)
^ ⇒旧市域における都市下層の分布の変化『都市と技術』中川清、国連大学出版局・国際書院、1995年
^ a b エイモス・ラポポート『文化・建築・環境デザイン』大野隆造、横山ゆりか訳 彰国社 2008年 ISBN 9784395051014 pp.60-65,120-121.
^ Merriam-Webster shanty
^ Merriam-Webster shantytown
^ 英辞郎 「shantytownとは」
^ Quora What is the difference between slums and shanty towns?
参考文献
田野橘治『暗黒の倫敦』 (広文堂, 1903)
唐十郎『下谷万年町物語』、中央公論新社 1981年 - 戦後男娼の巣窟になった上野のスラム街を描いた自伝的小説
ウラジーミル・ギリャロフスキー 『帝政末期のモスクワ』 村手義治訳、中央公論新社、1985年。 / 〈中公文庫〉、1990年。 - 帝政ロシア時代の貧民窟ヒトロフカについての記述がある。
布野修司 『カンポンの世界 - ジャワの庶民住居誌』、PARCO出版、1991年(ISBN 4-89194-288-6)
中西徹 『スラムの経済学 フィリピンにおける都市インフォーマル部門』、東京大学出版会、1991年(ISBN 4-13-046042-0)
鳥飼行博 『地域コミュニティの環境経済学 ? 開発途上国の草の根民活論と持続可能な開発』、多賀出版、2007年(ISBN 9784811571317)
関連項目
貧困の文化
都心の荒廃
スラムツーリズム
乞食谷戸
メトロポリス
権田保之助 - 大正時代の東京市で貧民街を研究した社会学者
横山源之助 - 明治時代の阪神地方で貧民街を研究したジャーナリスト
太陽のない街 - 徳永直のプロレタリア小説
ドヤ街 - 日雇い労働者の寄せ場・宿泊需要に発祥を持つ点で、住民構成や社会的課題のあり方がスラムとは異なる。
各国におけるスラムの事例
神戸市のスラム問題(日本)
タルドンネ(韓国各地)
九龍村(朝鮮語版)(韓国・ソウル) - 韓国最大のスラム街
九龍城砦(香港)
トンド・ スモーキー・マウンテン(フィリピン・マニラ)
スモーキー・バレー(フィリピン・ケソン市)
ダラビ(インド・ムンバイ市)
ゲジェコンドゥ(トルコ各地)
バンリュー(フランス各地)
フーバービル(アメリカ各地)
ハーレム(アメリカ・ニューヨーク)
プルーイット・アイゴー(アメリカ・セントルイス) - ニューヨーク世界貿易センタービルの設計者として有名なアメリカの建築家ミノル・ヤマサキの初期の代表作。