『スラムドッグ$ミリオネア』(原題: Slumdog Millionaire)は、2008年のイギリス映画。監督:ダニー・ボイル。インドの外交官、ヴィカス・スワラップ[3]の小説『ぼくと1ルピーの神様(英語版)』(日本刊・ランダムハウス講談社)の映画化作品。インド南部の大都市・ムンバイを舞台に、実在の人気テレビクイズ番組『コウン・バネーガー・カロールパティ』("Kaun Banega Crorepati"、イギリス発祥の世界的クイズ番組『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア』のインド版。日本の『クイズ$ミリオネア』に相当)に出場したスラム育ちの青年が不正を疑われて潔白を主張する様子を通じ、インド社会の現実を描く。
第33回トロント国際映画祭観客賞、第66回ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)、第62回英国アカデミー賞作品賞受賞。第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門を受賞した。 映画は、以下の問題から始まる。 『コウン・バネーガー・カロールパティ』(以下、『ミリオネア』と略す)に出場した19歳の青年・ジャマールは、育ちが貧しく、ほとんど無学であるにもかかわらず、8つの難問クイズを突破して1000万ルピーの賞金を獲得し、翌日の2000万ルピーを懸けた最終問題の解答権を得るが、不正の疑いがかけられて、番組終了直後に詐欺罪で警察に連行され、警察署内で激しい拷問をともなう取り調べを受ける。「お前に何がわかる?」となじる警部に対し、ジャマールは「僕は答えを知っていたんだ」と訴える。警部は番組の録画ビデオを再生しながら、ジャマールを尋問していく。 (これ以降、現在=警察署、ジャマールによる少年時代の回想、クイズ番組の場面が時系列シャッフルで進行していく。)
ストーリー
序章
問題:彼はあと1問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?
第1問
1000ルピーの問題:「1973年の映画『ザンジール(英語版
ジャマールと兄のサリームはイスラム教徒の多く住むダーラーヴィー地区のスラムで生まれ育つ。ある日、ジャマールが宝物にしていたアミターブの直筆サイン入りのポストカードを、サリームが黙って映画館主に売り飛ばしてしまう。ジャマールはこのことを長く根に持つようになる。
第2問
4000ルピーの問題:「インドの国章に書かれた言葉は?」 答え:「真実のみが勝利する」
国章の文字はヒンドゥー教の経典から取られたもので、イスラム教徒のジャマールにはなじみがなかった。ジャマールは3つの「ライフライン」アイテムのうち「オーディエンス(観客に解答をたずねる)」を用いてなんとか正解する。この映像を見た警部は「インド国民なら誰でも知っていることも知らないのだから、他の答えも不正があったはずだ」といぶかしがるが、ジャマールは「パーニープーリーが1皿いくらか知っていますか?」と当てこする。
第3問
1万6000ルピーの問題:「ヒンドゥー教の神・ラーマが右手に持っているものは何?」 答え:弓矢
ある日、兄弟の住むスラムをヒンドゥー教徒の過激派が襲撃し(ムンバイ暴動(英語版))、2人の唯一の肉親だった母親は目の前で殺されてしまう。兄弟は逃げる中、少年の姿をしたラーマの幻影を見る。同じようにスラムから逃げてきたラティカという孤児の少女と知り合い、かつて少し通った小学校で習った『三銃士』に自分たちをなぞらえ、行動をともにするようになる。
第4問
25万ルピーの問題:「『クリシュナ神の歌』を書いた詩人は?」 答え:スールダース(英語版)
家を失った3人の前にママンという男が現れ、多くの子供たちとともに住む邸宅に招き、寝食の面倒を見るようになる。ママンの正体はギャングで、子供による物乞いの元締めであった。ギャングたちは同情を誘って稼ぎを多くするため、子供の目を酸で焼いて失明させることまで行っていた。『クリシュナ神の歌』を覚えさせられたジャマールは、目を焼かれるためにママンに呼び出されるが、隙を見てサリームやラティカとともに逃げ出す。兄弟は発車する長距離列車に飛び乗るが、ラティカは乗り遅れてママンに捕らえられる。