スペースシャトル
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スペースシャトルは宇宙輸送システム (Space Transportation System, STS) あるいはスペースシャトル計画の一環としてもちいられた。STSの開発とシャトルの飛行は、基本的にアメリカの資金によって行われた。主な使用目的は、NASAのおかれた様々な政治的状況や起こしてしまったシャトルの事故も影響して、およそ10年ごとに大きく変遷してきた[1]が、数々の人工衛星宇宙探査機の打ち上げ、宇宙空間における科学実験、国際宇宙ステーション (International Space Station, ISS) の建設などである。なおシャトルはNASAによってだけでなく、米国国防総省欧州宇宙機関ドイツ等の軌道上実験にも使用された。

シャトルは再使用型宇宙往還機であり、軌道船 (Orbitor Vehicle, OV)、外部燃料タンク (External Tank, ET)、固体燃料補助ロケット (Solid Rocket Booster, SRB) の三つの部分によって構成されている[2]。ETとSRBは上昇中に切り離され、軌道船 (OV) のみが地球周回軌道に到達する。発射時には機体は通常のロケットと同じように垂直に打ち上げられるが、軌道船は水平に滑空して帰還・着陸し、再使用のために整備された。SRBはパラシュートで海に降下し、回収船で回収されて整備した後、推進剤を再充填して再利用された。
構造・飛行等の概略飛行の概略。打ち上げ、固体燃料補助ロケット (SRB) の切り離し、外部燃料タンク (ET) の切り離し、軌道上での作業、減速、大気圏再突入、着陸 の概念図

まずシャトルの構造および打ち上げ?着陸の概略を説明する。

通常は5名から7名の飛行士が搭乗した。なお、最も初期の頃に行われた、STS-1からSTS-4の4回の試験飛行のように、機長と操縦士の2名だけでも飛行できた。

発射時のシャトルの構成は、おおまかに
オレンジ色の外部燃料タンク (External Tank, ET)[3][4][5]

2本の白色で細長い固体燃料補助ロケット (Solid Rocket Boosters, SRB)

宇宙飛行士と貨物を搭載する軌道船 (Orbiter Vehicle,OV)

の三つの部分から構成されていた。なお、上記に加えて、STSのために開発された、PAMIUSと呼ばれる人工衛星打上げ用の2種類の固体ロケットを用いれば、搭載物をさらに高い軌道に運ぶこともできた。なお、シャトルには全体でおよそ250万個もの部品が使われており、人間がこれまでに製造した中で最も複雑な機械であると言われている[6]。(→#構造・メカニズム・諸元

シャトルは通常のロケットと同じように、発射台からは垂直に離陸する。その際の推力を生むのは2本のSRBおよび、(軌道船の後部に装着している)3基のメイン・エンジン (Space Shuttle Main Engine, SSME) であり、SSMEの推進剤液体水素液体酸素)は外部燃料タンクから供給される。上昇の手順はおおまかに、
SRBも含めてすべてのロケットが噴射される第一段階

SRBが役目を終えSSMEだけで推進する第二段階

のふたつに分かれていて、打上げからおよそ2分後に第二段階に移り、SRBは切り離され落下、パラシュートで海に着水し再使用のため船で回収される。機体(軌道船およびET)はその後も上昇を続け、軌道に到達するとSSMEが燃焼を停止し、ETも役目を終えて切り離される。切り離され自由落下を始めたET(巨大なオレンジ色のタンク)は通常は大気圏に再突入して空気抵抗によって消滅する。ただし、様々な用途に使用することは、構想としてはあった。

軌道船はその後さらに軌道操縦システム (Orbital Maneuvering System, OMS) を噴射することでミッションの目標としている軌道へと向かう。軌道上での姿勢は、姿勢制御システム (Reaction Control System, RCS) を噴射することで制御する。

シャトルが従来の宇宙船とは際だって異なった特徴の一つに、軌道船の胴体部分のほとんどを占めるほどの大きさの貨物搭載室を備えていることと、そこに大きな観音開きのドアがついていることである。これによって、飛行士や宇宙ステーションの建設資材などを、地球周回低軌道大気圏上層部、さらには熱圏などに運ぶことができた[7]。例えば、ハッブル宇宙望遠鏡のような大きなものを搭載し軌道に投入することや故障した衛星などがあれば、その軌道へ向かい、貨物室に回収して地球に持ち帰ったりすることもできた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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