スペキュレーティブ・フィクション
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例えば古くはハリカルナッソスヘロドトス(紀元前5世紀)の『歴史[12][13][14]司馬遷(紀元前2世紀から1世紀)の『史記[15][16]があり、このスペキュレイティブ・フィクションというジャンルを表す語が生み出される以前に、意図的かそうでないかは別として多くの作品が存在していたことは注意を要する。最も広義にとったときのその概念は、世界を理解し、それに反応し、空想的で創意に富んだ芸術的表現で表すという人間心理の側面を捉えたものである。その一部は、人間関係の影響、社会的・文化的運動、科学的研究やその進歩、科学哲学などを通した現実の進歩の根底にある[17][18][19]

英語では芸術や文学の分野で "speculative fiction" がジャンルを表す語として20世紀から使われている。この語の起源は、SF作家ロバート・A・ハインラインに帰されることが多い。ハインラインがこの語を最初に使ったとされている例は1947年2月8日付けの『サタデー・イブニング・ポスト』紙の記事で、サイエンス・フィクションの同義語として使っていた。次に1948年のエッセイ On Writing of Speculative Fiction では、この語の示す範囲にファンタジーは含まれないと明確に述べている。ハインラインは自らこの語を考案したかもしれないが、それ以前にも使われた例がある。月刊誌『リッピンコット(Lippincott's Monthly Magazine)』に1889年に掲載された記事で、エドワード・ベラミーの 『顧みれば-2000年より1887年をかえりみる』などの作品を指してこの語が使われている。また1900年5月号の The Bookman 誌での John Uri Lloyd の Etidorhpa, The End of the Earth の書評で「スペキュレイティブ・フィクションに興味を持っていた人々の間で多くの議論を引き起こした」と書いている[20]。バリエーションとして speculative literature という表記もある[21]

スペキュレイティブ・フィクションという語を従来のSFに対する不満の表明として使い始めたのは、1960年代から1970年代初期のジュディス・メリルや他の作家、編集者たちによる「ニューウェーブ運動」であった。彼らはそれまで主流であった大衆娯楽科学小説に哲学的、思弁的な要素を持ち込もうとし、この語を掲げた。しかしこちらの用法では1970年代半ばには既に使われなくなっていく[22]。日本ではニューウェーブに関連した作品の翻訳に伴い、1980年代まで使用されていたが、その後は歴史的な用語となっていったのは同様である。

いったんは忘れられたかに思われたスペキュレイティブ・フィクションは、2000年代になると特定のジャンルを包括的に示す便利な用語として、より広義に用いられるように変化する。スペキュレイティブ・フィクションに関するエッセイが、『エクストラポレーション』(Extrapolation)誌(1959年創刊のアメリカ合衆国のSF評論誌。ケント州立大学より刊行)、『フェムスペック』(Femspec)誌(アメリカ合衆国のフェミニズム系スペキュレイティブ・フィクション専門誌)、『ファウンデーション』(Foundation)誌[23](イギリスの代表的なSF評論誌。ノースイーストロンドン工科大学より刊行)などを含む多くの学術雑誌で発表された。
サイエンス・フィクションとの区別

スペキュレイティブ・フィクションの略語としては spec-fic、specfic、S-F、SF、sf[24] などの表記が用いられるが、最後の3つはサイエンス・フィクションの略語としても用いられるため[25]、混乱を招くこともある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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