スペイン語
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

[18]Vosotros/as も同様で、vos だったが、vos が単数の敬称として使われるようになると複数形はそれと区別するため (vos otros/vos otras→) vosotros/vosotras となった。Vos を敬称として初めて用いたのは宮廷においてで、vosotrosももともと貴族の言葉である。宮廷文化をもたないアンダルシアや中南米では vosotros の使用は浸透せず、ustedes が汎用2人称複数となった。


冠詞

定冠詞・数によって区別される(男性単数el、女性単数la、男性複数los、女性複数las、中性lo)。ただ、女性名詞でもアクセントのある a、または ha で始まる単数名詞の場合はelを使う(例 el agua)。前置詞 a、de の後に定冠詞 el が来る場合には縮約しそれぞれ al、del と一語のように書かれる(前置詞と冠詞の縮約はこの二つのみで、イタリア語やフランス語のように複雑ではない)。中性定冠詞 lo は中性名詞につくわけではなく(スペイン語に中性名詞はない)、形容詞・所有形容詞・過去分詞・副詞についてこれらを名詞化したり、lo que の形でフランス語の ce que や英語の what のように「もの・こと」の意味を表したりする。中性定冠詞はイタリア語やフランス語にはない特徴である。例 lo bueno 「善良さ(=la bondad)、よいもの(=las buenas cosas)」、lo pasado「過ぎ去ったこと」、lo nuestro「私たちのもの」、Lo que dices es no cierto.「君が言うことは確かではない」

フランス語イタリア語にあるような部分冠詞はない。


冠詞と名詞

名詞が職業・性質を表す補語になるときは、He is a student.のように不定冠詞を伴う英語と異なり、Es estudiante.のように通常は(フランス語等と同様)無冠詞である。逆に、Es un inutil.「彼は役立たずだ」のように軽蔑・強調の意味をもって品詞・可算を問わず不定冠詞を伴う場合がある。


名詞

名詞には男性名詞と女性名詞があるが、-oで終われば男性、-aで終われば女性という原則があるため比較的判別が容易である(ただしdia, manoなど少数の例外あり)。その他に-cion, -dad,-tad, tud, -umbre, -zなどで終われば女性、-aje, -i, -rなどで終われば男性といった原則がある。

名詞の複数形は(e)sをつけて作るが、これはラテン語の名詞の複数対格の語尾に由来し、フランス語やポルトガル語同様西ロマンス語の特徴である(ただしフランス語においては複数形の語尾 s は発音されない)。


形容詞

形容詞は基本的に名詞に対して後置される(例:un coche moderno 現代の車)が、若干の形容詞、あるいは話者の主観を述べる場合は、前置されることもある。後置される場合と前置される場合で意味が異なるものもある(la casa nueva 新築の家?la nueva casa 新居、el gran hombre 偉大な人?el hombre grande 大きな人、など)。また、修飾される名詞の性数に応じて変化する。moderno 現代の、を例に挙げれば、moderno(男性単数), moderna(女性単数), modernos(男性複数), modernas(女性複数)と変化する。


前置詞

現代スペイン語にはフランス語のenやイタリア語のne、あるいはフランス語の y やイタリア語の ci に相当する「前置詞+名詞」の代用となる副詞的代名詞は存在しない(中世スペイン語には存在した。なおカタルーニャ語には存在する。)。


動詞

動詞の基本形の語尾は-ar, -erまたは-irのいずれかである。

動詞には直説法接続法命令法がある。直説法は現在、点過去(完了過去)、線過去(不完了過去)、未来、過去未来(「可能」・「条件」・「遡及未来」という語が用いられることもある)、現在完了、直前過去完了、過去完了、未来完了、過去未来完了が、接続法では現在、過去、現在完了、過去完了が存在する(中世には未来や未来完了も存在した)。また、各時制で主語の人称・数に応じて6通り(中南米では実質5通り)に活用される。

完了形ではすべての動詞に対してhaberが助動詞として使われる。フランス語、イタリア語、ドイツ語などの完了形[複合時制]では、移動や状態変化の意味を含む自動詞(非対格動詞)の場合には助動詞として英語のbeにあたる動詞を使い、それ以外ではhaveにあたる動詞を使うが、現代スペイン語にはこのような区別がなく、この点において現代英語と似ている。

過去の出来事を表すのに口語ではおもに複合時制(現在完了形)を用いるフランス語やイタリア語とは違い、スペイン語では現代でも単純時制である点過去形(フランス語の単純過去形・イタリア語の遠過去形に相当)が口語・文章語を通じて広く使われており、現在完了形はむしろ英語のそれに近い使われ方をしている。ただし地域差があり、スペインの多くの地域では「今日」「今週」など現在を含む副詞をおく場合基本的に現在完了形が使われる一方、中南米やスペインのガリシア州などでは現在完了形をあまり用いない傾向がある。これは現在完了形を多用するイギリス英語と過去形を多用するアメリカ英語の関係に類似している。なお、ガリシア州でスペイン語とともに話されるガリシア語には現在完了時制が存在しない。

英語のbeに当たる動詞がserとestarの二つある。serはSoy espanola.「私はスペイン人です」のような性質を述べるときに用い、estarはEstoy cansado.「私は疲れている」のような一時的状態、Osaka esta en Japon.「大阪は日本にある」のように所在を表すのに用いる(このような区別はフランス語にはないが、イタリア語にはある(essereとstare))。またestar+現在分詞でEstoy llorando. 「私は泣いている」のように英語の進行形に似た意味を表すのはフランス語やイタリア語にはない特徴である。ただしこの形は英語の進行形ほどよく使われるわけではない。現在形の動作動詞が進行相をも表し、また過去時では線過去形(イタリア語やフランス語の半過去形に相当)に過去進行形的な不完了(imperfective)相を表す機能があるからである。


規則動詞の現在時制における活用形

原形hablar(話す)comer(食べる)vivir(生きる、住む)
一人称単数hablocomovivo
一人称複数hablamoscomemosvivimos
二人称単数hablascomesvives
二人称単数 (
voseo)hablascomesvivis
二人称複数hablais/hablancomeis/comenvivis/viven
三人称単数(二人称の敬称含む)hablacomevive
三人称複数(二人称の敬称含む)hablancomenviven

不規則動詞serの活用

叙法直説法接続法命令法
単純時制現在点過去線過去未来過去未来現在過去未来
1人称単数soyfuierasereseriaseafuera / fuesefuere-
2人称単数eresfuisteerasserasseriasseasfueras / fuesesfueresse
3人称単数esfueeraseraseriaseafuera / fuesefueresea
1人称複数somosfuimoseramosseremosseriamosseamosfueramos / fuesemosfueremosseamos
2人称複数soisfuisteiseraissereisseriaisseaisfuerais / fueseisfuereissed
3人称複数sonfueroneranseranserianseanfueran / fuesenfuerensean

助動詞haberの活用

助動詞haberの活用形は、過去分詞とあわせて完了時制をつくる。下記の表では、「sido」が動詞serの過去分詞形。

叙法直説法接続法
複合時制現在完了過去完了未来完了過去未来完了現在完了過去完了未来完了
1人称単数he sidohabia sidohabre sidohabria sidohaya sidohubiera / hubiese sidohubiere sido
2人称単数has sidohabias sidohabras sidohabrias sidohayas sidohubieras / hubieses sidohubieres sido
3人称単数ha sidohabia sidohabra sidohabria sidohaya sidohubiera / hubiese sidohubiere sido
1人称複数hemos sidohabiamos sidohabremos sidohabriamos sidohayamos sidohubieramos / hubiesemos sidohubieremos sido
2人称複数habeis sidohabiais sidohabreis sidohabriais sidohayais sidohubierais / hubieseis sidohubiereis sido
3人称複数han sidohabian sidohabran sidohabrian sidohayan sidohubieran / hubiesen sidohubieren sido


上記のように、過去が点過去と線過去にはっきり分かれているのが特徴である。点過去は過去のある時点で起こったことを述べるときに用いる。線過去はフランス語やイタリア語の文法で「半過去」と呼ばれるものに相当し、過去の一定の期間における継続的な状態を述べるときに用いる。点過去と線過去を、それぞれ「不定過去」と「不完了過去」と呼ぶこともある。また点過去は単に「過去」ということもある。なお、preterito perfectoは現在完了のことであり、完了過去とも言われるが、完了過去を点過去の意味で用いる場合もあり、現在完了との意味での完了過去との区別のために、形式に注目して単純完了過去と呼ぶ場合もある
[19]。また、中南米諸国で普及している“ベリョ文法”(ベネズエラ出身でチリ大学を創始した人文学者、アンドレス・ベリョ(ベーリョ)が提唱)では、「点過去」を preterito (過去)、「線過去」を copreterito (あえて訳せば“副過去”)と呼んでいる。また、先述の preterito perfecto に関しても、「現在完了」は preterito perfecto compuesto (複合完了過去)、「点過去」は preterito perfecto simple (単純完了過去)が、スペイン王立アカデミアの文法用語として紹介されている)[20]

El avion salio el lunes.(飛行機は月曜日に出発した。)点過去の例。

El avion salia cada lunes.(飛行機は月曜日毎に出発していた。)線過去の例。


接続法は、予想・憶測・希望など、事実であると認識していないときに使われる。たとえば「?と思っている」という文では「?」の部分は事実であると認識しているので直説法が使われるが、「?とは思っていない」と言うときは、「?」を事実と認識していないので接続法が使われる。

Creo que Maria esta en casa. (私はマリアは家にいると思う。)estaはestarの直説法現在形。

No creo que Maria este en casa.(私はマリアは家にいると思わない。)esteはestarの接続法現在形。


希望から、弱い命令の意味にも使われる。

!Ojala sea bonita!(かわいいといいなぁ)seaがser(?である)の接続法。

Hable.(話してください。)hablarの接続法現在形で命令(依頼)を表わしている。


接続法過去の語尾は-ra型と-se型の2種類があるが、一般には-ra型が用いられる。-se型の活用は堅苦しい印象を与え、いわゆる文語で用いられる。

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}能格動詞は、再帰代名詞(se/me/te/nos/os)をとる再帰動詞の形で表現される[要出典]。このとき、再帰代名詞とともに一つの動詞であると考えることも多い。(levantarse, acostarse, lavarse, fumarse, irseなど。)この場合、動詞の基本形を示す際には左記のように代名詞を語尾につけた一つの単語のように表記するが、文中で動詞が活用されると代名詞は分かれて前置される。なお、命令文の場合には能格動詞が活用されても代名詞は前置されないことが多い。

No puedo levantarme tan temprano(そんなに早く起きる事はできない。) 再帰動詞が1単語として扱われる例。

Me fumo cigarrillos.(私はタバコを吸う。)fumarse → me fumoの活用の例。

!Vete rapido!(さっさと行け!)命令形の例。


脚注[脚注の使い方]
注釈^ 発音についてはジェイスモを参照。
^ スペイン語以外にも公用語がある国・地域を含む。
^ a b プエルトリコでは英語も公用語。しかし、島の住人の大多数は英語をほとんど使わず、スペイン語しか話さない。メディアを含め日常生活ではスペイン語が使われている。
^ 「ラテンアメリカ」の定義は一意ではなく、さらに英語圏やオランダ語圏の国・地域を含むメキシコ以南を総称する場合もある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:94 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef