毒は主に体表部(外骨格="殻")と、歩脚、鋏脚の筋肉に含まれるとされる。神奈川県と和歌山県の個体(2004年)では、毒は特に鋏脚部の掌節と腕節(ハサミの付け根の太い部分周辺)の筋肉に高濃度に分布し、頭胸部(胴体)の筋肉は、調査個体に関しては無毒であったことから、カニが敵に対してハサミを振りかざしたり、逃げる際に自切することなどと関連付けて、毒が捕食者に対する防御に役立っているのではないかと推察している。なお、フグ毒を持つ動物のうちトラフグ Takifugu rubripesやトゲモミジガイAstropecten polyacanthus(ヒトデの一種)などはフグ毒に著しく誘引されるとの実験結果があり、彼らが積極的に毒を摂取・蓄積している可能性も指摘されているが、スベスベマンジュウガニに関しては不明である。 本種も含め、有毒のカニが存在することは地方によっては古くから知られていたようであるが、より広く知られるようになったのはそれほど古いことではない。Hashimotoら(1967)[3]によれば、公式な記録で最も古いものは1965年に鹿児島県の環境衛生課が報告した名瀬市(現・奄美市)での中毒例であるという。この例では45歳の女性と20歳の息子が、味噌汁にして食べた甲羅の幅が約10cmの"セガニ
他の毒ガニ
スベスベマンジュウガニは本州も含めた広い分布域をもつ普通種だが、小型であるためか、これをあえて食べようとする人もいないらしく[1]、2000年現在まで、日本国内での公式の中毒事故例はないようである[1]。
同じオウギガニ科の有毒種で、暖かい海に生息するウモレオウギガニとツブヒラアシオウギガニの2種では、1984年までに日本国内だけでも全部で10件あまりの事故が記録されている。すべての事故が鹿児島県と沖縄県で発生しており、両県では観光施設、保健所などが有毒ガニを食べないようにポスター、パンフレットなどで啓蒙をつづけており、事故件数は減少しつつある。
またFresco(2001)はフィリピン農業研究局(BAR)の月報[6]において、この時までに報告された有毒蟹として、上記3種を含む下記の9種を挙げ、誤って食べないよう注意を呼びかけている。
ヒシガニ科
カルイシガニ Daldorfia horrida
オウギガニ科
スベスベマンジュウガニ Atergatis floridus
キイマンジュウガニ Atergatis integerrimus 毒性はやや弱い。
ユウモンガニ Carpilius convexus 毒性はそれほど強くはない。
イワオウギガニ Eriphia sebana
オオアカヒズメガニ Etisus splendidus 毒性はやや弱い。
ヒロハオウギガニ Lophozozymus pictor 毒性は強い。
ツブヒラアシオウギガニ Platypoda granulose
ウモレオウギガニ Zozymus aeneus 最も毒性が強いとされる。
なおスベスベマンジュウガニでは、同じ地域でも有毒個体と無毒個体とが存在する。よって他のカニについても、たまたま最初に食べた個体が無毒であっても別の個体が有毒である可能性もある。したがって、よく知らないカニ(特にオウギガニ科)を不用意に食べるべきではない。
スベスベマンジュウガニを題材にしたもの
スベスベマンジュウダニ (ダニ目・ササラダニ亜目・マンジュウダニ科)。学名:Conoppia palmicincta (Michael,1884)。日本にも分布。