スノースタイル
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その名残として、現代でもフランスヴァン・ショー: vin chaud)、ドイツグリューヴァイン: Gluhwein)、北欧グレッグ: Glogg、: Glogg)といったものが飲用されている[10]。さらに、中世は蒸留酒錬金術師たちによって作り出された時代でもあり、様々なカクテルが誕生した時代でもある。この時代に生まれたものとして特筆されるのはイギリス陸軍大佐フランシス・ニーガス(: Francis Negus)が考案したニーガス(: Negus、ポート・ワイン+湯+砂糖+レモンナツメグブランデー)、インドが発祥といわれる「パンチ・スタイル」がある[注 4]

近年では、を用いた「コールド・ドリンク」が主流であるが、そうしたカクテルが登場するのはずっと後、19世紀末から20世紀初頭になってからのことである。「氷は近代になるまで貴重品であったから」というのがその理由であった[11]が、1876年にカール・フォン・リンデが製氷機を開発したことによって、一年を通していつでも氷を入手できるようになった。これにより、「マティーニ」や「マンハッタン」といった、新しいジャンルの、現在ではカクテルの代表格とされるレシピが発案されていったのである。

それらの新しいカクテルはアメリカで生まれたものであったが、第一次世界大戦禁酒法により職を失ったバーテンダーヨーロッパへ移っていったことによって、全世界に広がっていくことになったのである。

1920-30年代のヨーロッパにジャズなどのアメリカ文化が流入し、その一端としてカクテルブームが起きた。イギリスでは第一次世界大戦以前はディナーの前に酒を飲む習慣はほとんど無かったが、アフタヌーン・ティーの時間に女性も含めた仲間が連れ立ってホテルのバーなどに集まり、強いカクテルを飲むことが当たり前のようになった[注 5]。カクテル・タイムと呼ばれるこの新しい習慣は、若い世代を中心にあっという間に受け入れられた[12]
語源

「酒+その他の酒 and/or その他の副材料」を指して「カクテル」と呼ぶようになったのは、1700年代[注 6]とも1800年代に入りすぐ[注 7]とも言われている。前者の説を「イギリス説」、後者の説を「アメリカ説」と言う[13]

その語源については諸説あり、例えばバーテンダーの団体間で統一するといったことはなされていない。以下にいくつかの説を示す。
「メキシコ王の娘」説

サヴォイ・カクテルブック』で、「カクテルという言葉の起源」として特に紹介されている説[13][14]

19世紀のはじめ、アメリカ合衆国南部陸軍とアホロートル8世 (Axolotl VIII) 率いるメキシコ軍の間には小競り合いが絶えなかった。しかしある時、休戦協定が結ばれることとなった。休戦協定交渉にあたり、まず最初に酒が供された。自身が調合したらしき飲み物を満たした杯を持ち、美女がその場に現れたが、その杯がひとつしかなかったことで、その場の雰囲気が不穏なものとなる。杯がひとつだけということは、アメリカ軍の将軍かメキシコ王か、どちらかが先に飲むことを意味しており、後に回された方が「自らを侮辱している」と感じるのではないかという懸念があったからである。しかし、その美女は不穏な空気を察し、微笑みうやうやしく頭を垂れると、自らその杯の酒を飲み干した。これにより、その場の緊張が解け、交渉は成功に終わる。協定交渉の最後、将軍が機転の利くその美女についてたずねると、王は自らもその美女に会ったことはなかったにもかかわらず、自慢げに答えた。「あれは自分の娘で、コクテル(Coctel)という」。

サヴォイ・カクテルブックに示された説はこのとおりであるが、他の文献にも類似の説が示されている[15][注 8]。ただし、19世紀はじめのメキシコにはすでに王はおらず、アホロートル8世という名の王も存在していない。
「コーラ・デ・ガジョ(木の名前)」説

国際バーテンダー協会が、カクテルの語源として採用している説[16][17]

メキシコのユカタン半島にあるカンペチェという港町にイギリス船が入港したときのこと[注 9]、船員達は町の居酒屋に立ち寄り、渇きを癒していた。当時、イギリス人たちが酒を飲むときには、ほぼストレートでしか飲んでいなかった。しかし、カンペチェでは「ブランデー、もしくはラムに砂糖などをミックスした飲み物(ドラック・drac)」が流行していた。この飲み物は、酒をストレートで飲む習慣しかなかったイギリス人の興味を引くものだった。ドラックは、厚手のグラスに材料を入れ、スティックやスプーンで攪拌して作られるものであったが、金属製のスティックを使うと不快な臭いがドラックに移ると嫌われていたため、木製のスティックを使うことが多かった。ある店の少年もそうであった。


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