環境中のストロンチウム90を分析する場合、90Sr及びその娘核たる90Yは崩壊時にγ線を殆ど放出せず、固有ガンマ線の直接測定による分析が不可能である。そのため、試料からストロンチウムを化学的に分離してからβ線を測定するという手法を取らざるを得ない。
一般的な手法は、試料溶液から炭酸ストロンチウムの形で沈殿を生成させ塩酸で溶解後、イオン交換樹脂を詰めたカラムで妨害元素を分離し、鉄(III)塩 (Fe3+)とアンモニア水を加えて沈殿する水酸化鉄(III)と共に、共存している娘核種の90Yを共沈させて除く(スカベンジング、掃除して除くという意味)。この濾液を2週間から4週間放置して90Yを充分に生成させ、再び鉄(III)塩とアンモニア水を加えて水酸化鉄(III)と共に90Yを沈殿させて分離し(ミルキング、母牛90Srから牛乳90Yを搾り出すという意味)、この90Yのβ線を測定して90Srの量を算出する[11][12]。共存していた90Yを一旦除去した後、再びこれを生成させて測定するのは正確を期するためである[13]。なお、分析用溶液の化学処理の際に作業者が被曝する問題を有している。
別な分析方法としては、2013年に福島大学や日本原子力研究開発機構らの研究グループが開発した方法で、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を利用し、90Srに特化するものの1検体を20分程度で分析可能である。また、土壌濃度で約5 Bq/kg 程度が検出限界で、且つ自動処理で有るため作業者の被爆を抑制できる特徴がある[14]。
このほかに、液体シンチレーションカウンタを用いる方法で、4 - 5 日程度で分析可能な方法もある[15]。 他方でこの高いベータ線エネルギーや長い半減期を利用して、宇宙船、無人気象ステーションおよび航行用ブイの動作用エネルギー源の原子力電池として応用が進められている。
応用
脚注・参考文献^ “ ⇒Nuclide Information 38-Sr-90”. 2011年4月8日閲覧。
^ a b ⇒放射能ミニ知識 ストロンチウム-90 原子力資料情報室(CNIC)]
^ 三宅泰雄, 猿橋勝子, 葛城幸雄 ほか、「東京におけるCs-137及びSr-90の蓄積量