ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道
[Wikipedia|▼Menu]
蒸気動力は馬の牽引する交通に比べて高価であったが、まもなくそれは実は経済的であるということが証明された。蒸気機関車は多くの貨車を牽いて高速で走れるので、1日の運行で運べる石炭の量を比較すると、馬の比ではなく多かったからである。蒸気機関車の牽引する高速列車と馬の牽引する低速列車を同じ線路の上で共存させておくことは運行の効率全体を下げてしまうことも明らかとなり、また蒸気機関車の技術の信頼度が向上してきたため、馬の牽引する列車は次第に廃止されていった。

当初は、ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道は大半の近代的な鉄道とはほとんど似つかない、従来の馬車鉄道のような方法で運営されていた。ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道は線路を所有しているだけで列車を運行せず、鉄道に対して使用料を払えば誰でも蒸気機関車や馬の牽引する列車をその路線の上で運行することができた。この線路所有と列車運行の分離は運河の形態に似ていて、運河ではしばしば運河所有会社は独自に船を運航することが禁じられていた。ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道には時刻表もいかなる形態の中央での管理組織もなかった。列車は好きな時に運行され、しばしば線路の途中でライバル会社の運行する対向列車と出会って通行の優先権を巡って争いが勃発していた。

この混乱したように見えるやり方も、馬が牽引する列車に対しては十分適用可能であったが、高速な蒸気機関車が列車を牽引するようになると、正面衝突が致命的な結果をもたらすため、実行不可能になった。蒸気機関車の登場と共に、新しい運行方式の開発が必要となった。

1833年に鉄道はミドルスブラ(Middlesbrough)まで延長された。これにより、ミドルスブラ付近でのティーズ川はもっと深かったので、海までの石炭輸送が高速化された。より上流のストックトン・オン・ティーズ周辺では川が浅くて船舶運航を妨げていたのである。1834年には競合鉄道路線のクラレンス鉄道(Clarence Railway)がやはり石炭の出荷を目的に建設され、ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道のシルドンから分岐して、ミドルスブラと川の対岸にあるハーバートン・ヒル(Haverton Hill)やポート・クラレンス(Port Clarence)まで伸びていた。
近代的な鉄道へ

1833年までにストックトン・アンド・ダーリントン鉄道は完全に蒸気機関車運行に切り替えられ、次第に近代的な鉄道となっていった。ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道自身が路線上で全ての列車を運行するようになり、複線化されて双方向の列車を同時に運行できるようになり、時刻表が定められて衝突を防ぐために原始的な信号機が導入された。これらのやり方は世界中の鉄道で標準的なものとなっていった。

ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道は財務的にも大きな成功を収め、近代的な鉄道の礎を築いた。

ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道の建設と機関車の製造でスチーブンソンとジョセフ・ロック(Joseph Locke)が得た経験は、数年後、初めての蒸気機関車専用鉄道として計画されたリバプール・アンド・マンチェスター鉄道の建設と、その革新的な機関車ロケット号へと反映された。また他の技術者にとっても技術上の経験を積むよい舞台となり、1833年にティモシー・ハックワースの見習いとなったダニエル・アダムソン(Daniel Adamson)は後にマンチェスターで成功したボイラー製造メーカーを開設した。

ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道は1863年にノース・イースタン鉄道(North Eastern Railway)に吸収され、さらに1923年にはロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道へと合併した。当初のストックトン・アンド・ダーリントン鉄道の路線は、全てではないが大半が現在でも運行されている。
脚注[脚注の使い方]^ 五十畑弘『図説日本と世界の土木遺産』秀和システム、2017年、126頁。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-7980-5223-6。 

参考文献

Pomeranz, Kenneth and Steven Topik (1999). The World That Trade Created: Society, Culture, and World Economy, 1400 to the Present. M.E. Sharpe, Inc., Armonk, NY.
ISBN 0-7656-0250-4 

Ransom, P.J.G., (1990) The Victorian Railway and How It Evolved, London: Heinemann.

Stretton, C.E., (1896) The Development of the Locomotive: A Popular History (1803-1896), London: Crosby, Lockwood and Son.

関連文献

A Place In History — ダーリントン鉄道博物館の歴史に関する本

外部リンク.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道に関連するカテゴリがあります。

Darlington Railway Centre and Museum

The History of the Stockton and Darlington Railway (North East History)

The Stockton and Darlington Railway: The Birthplace of the Railway

典拠管理データベース
全般

VIAF

国立図書館

イスラエル

アメリカ

地理

Structurae


記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:22 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef