ステンレス鋼
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業界用語として、さらに省略して「ステン」と呼んだり、ステンレス鋼のJISの材料記号がSUSであることから「サス」と呼んだりもする[16]
歴史詳細は「ステンレス鋼の歴史」を参照イギリスで発明されたステンレス鋼について伝える、1915年1月31日付のニューヨークタイムズ記事

ステンレス鋼が発明、実用化されたのは、20世紀初頭の1910年代のことである。18世紀に元素としてのクロムが発見され、19世紀中にステンレス鋼発明につながる多くの重要な基礎研究成果があり、それらをもとにステンレス鋼の発明が達成できたといえる[17]。1900年代には、フランスのレオン・ギレやドイツのフィリップ・モンナルツが鉄・クロム合金についての特筆すべき学術的成果をまとめ、ステンレス鋼発明の土台が整いつつあった[18]

後述のように、ステンレス鋼は金属組織別に大きく5つに分類される。1912年、オーステナイト系ステンレス鋼がドイツのベンノ・シュトラウス(ドイツ語版)とエドゥアルト・マウラー(ドイツ語版)によって発明された[19]。そして1913年、マルテンサイト系ステンレス鋼が、上述のイギリスのハリー・ブレアリーによって発明された[20][21]フェライト系ステンレス鋼もこの頃に発明されたが、フェライト系ステンレス鋼の場合は誰を発明者とするかは決め難い[22]。フランスのアルバート・ポートヴァン(ドイツ語版)、米国のクリスチャン・ダンチゼン、米国のエルウッド・ヘインズ(英語版)などがフェライト系ステンレス鋼の発明者として挙げられる[23][21]。以上のようにステンレス鋼には多くの発見者・発明者が居たが、ステンレス鋼の発明者として一人を挙げるときにはハリー・ブレアリーの名を挙げることが多い[24][13]

実用化後から、ステンレス鋼は耐食性およびその他特性を活かして、産業用から家庭用まで様々な用途で需要を伸ばしてきた[25]。新たな機能・特性を持った鋼種の開発が行われ、ステンレス鋼の種類も豊富に増えていった[26]オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼は1930年代に、析出硬化系ステンレス鋼は1940年代に実用化された[27]。同時に、ステンレス鋼の量産化と生産技術の向上も進められてきた[26]。特に、1940年代の酸素脱炭法のステンレス鋼製造への適用、さらに1960年代後半のVOD法とAOD法の発明は、ステンレス鋼の生産性・品質を大きく向上し、製造コストを低下させた[28]。1950年から2019年までの統計によれば、ステンレス鋼の全世界生産量は平均 5.8 % で増加を続けてきた[29]。近年でも、製造法の改良や開発、耐食性・強度・加工性を改良あるいは兼備した鋼種の開発、省エネや省資源化を目指した鋼種の開発などが続けられている[30]
基本金属組織と合金元素の関係

ステンレス鋼に添加される合金元素は、定義のようにクロムを必須とする。さらに、各種特性向上のためにニッケルモリブデンケイ素窒素アルミニウムなどの他の元素も添加される[31]。また、リン硫黄は場合によっては有効な含有物だが、基本的に有害な不純物元素であり、普通はこれらは製造上できるだけ取り除かれる[32]炭素は、ステンレス鋼の耐食性を落とす不純物であるが、一方で、強度向上に寄与する有用な元素でもある[33][34]。一部の種類を除いて、ステンレス鋼は0.01桁%–0.001桁%といった低い炭素含有量となるよう製造されている[35]フェライト(α)とオーステナイト(γ)の結晶格子の様子。マルテンサイト(α′)の結晶格子は α とほぼ同じで、わずかに立方体から直方体となる[36]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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