ステレオタイプ(英: Stereotype、仏: Stereotype)とは、多くの人に浸透している先入観、思い込み、認識、固定観念、レッテル、偏見、差別などの類型化された観念である。アメリカのジャーナリストであるウォルター・リップマンによって命名された[1]。
また、社会心理学においてステレオタイプとは、特定の集団に所属する人々や、特定の属性を有する人々に関する過度に一般化された信念のことである[2]。その種類は様々で、例えば、そのグループの性格、好み、外見、能力に関するものなどがある。ステレオタイプは、不正確で、古い内容が更新されにくいこともあるが、正確な場合もある[3]。このような一般化は、迅速な意思決定を行う際に有用な場合もあるが、差別の原因になる可能性がある。
社会科学の研究によると、ステレオタイプのうち、政治的所属や国籍に関するものは不正確なものが多い反面、それ以外のステレオタイプ(学業成績、性格、行動、性別、人種、社会階層、民族などに関するもの)には、正確性と合理性が認められるという[4]。
なお、“ステレオタイプ”はフランス語の“Stereotype”を英語読みしたもので、「立体的な」を意味する“ステレオ(stereo)”とは綴りは同一でギリシア語の原意と同じである。 元々は印刷術のステロ版(鉛版)が語源となる社会学の用語で、思考や観念、ものの見方・捉え方を示し、ステロ版で印刷された印刷物のように、「型を用いて作られたかのように全く同じもの」「既に完成された状態のものとして扱われているもの」という意味で、「多くの人に浸透している認識や固定観念、特に先入観、思い込み」を指す。日本語で同様の表現を示すなら、「判で押したように」「紋切型の」がほぼ同様の用語である。 フランス語で「決まり文句」など類型化された表現を意味するクリシェ(cliche) も、フランス語で“クリシェ”とはステロ版を意味するため、同じ意味といえる。 他には、英語の「Cookie-cutter」(クッキーカッター。“どこから見ても同じ見え方”)や、日本語の「金太郎飴のように」(どこを切っても似たような顔が出てくる)などがある。 「ステレオタイプな」「ステレオタイプのような」という形容詞としては"stereo typical(ステレオティピカル)という語もあり、これは日本語では「常同的」「常同性」と訳されることがある[5]。 物語やフィクションなどで造形される人物像にその典型的な形が見られ、勧善懲悪の物語では、善役はいかにも善役らしい姿や言動があり、他方、悪役は同様にいかにも悪役らしい姿や言動で表現される。 大衆向けの娯楽目的の小説や映画、ドラマなどでは、人物造形だけではなく、物語の構成やプロット、展開・結末などもステレオタイプになっているのが一般である。漫画やアニメなどでは、「Boy meets girl, and fall in love」という言葉があるが、これは最近の物語におけるステレオタイプではなく、古代の青春恋愛物語である『ダフニスとクロエー』においても同じような構成になっている。これらは、神話類型
概要
古典的な類型性漫画の悪役像
しかし近代において、大衆社会、マスコミュニケーションが成立すると、政治、経済、社会的な目的において、過剰に単純化され類型化されたイメージが広く一般の人にも流布するようになり、文字通り、紋切り型な把握や観念や思考となって定着するようになった。 多くの人が持つ観念には、先入観やタブロイド思考を含み偏見や差別的な意識とも関係している。 「紋切り型」という言葉が示すように、多数の人において同じような考え方や見方が類型化されて共有され、なぜその思考や見方が妥当と確信するのかということについても、メディアや周囲の人が皆そう言っているとか、主体的に吟味することなく、そのまま無批判に取り入れ鵜呑みにしていることが一般である。 その為、客観的根拠もなく、個々人が抱く考え方・観念に対する理解にも乏しく、底が浅く、また複雑なものごとを単純化しているため、当人は理解しているとの錯覚に陥っているが、迷妄であって固定観念になっている場合も多々ある。 ステレオタイプは効率的な近道であり、感覚を生み出すツールでもある。しかし、ステレオタイプは、個人に関する新しい情報や予想外の情報を処理することを妨げ、印象形成のプロセスを偏らせてしまうことがある[6]。初期の研究者たちは、ステレオタイプは現実を正確に表現していないと考えていた[7]。例えば、1930年代に行われた一連の先駆的な研究では、広く受け入れられている人種的なステレオタイプには経験的な裏付けがないことがわかっていた[8]。1950年代半ばには、ゴードン・オールポートが「すべての証拠に反してステレオタイプが成長することはあり得る」と記している[9]。
ステレオタイプな観念の特徴
正確性1952年3月の『Beauty Parade』誌に掲載された、女性ドライバーをステレオタイプ化した特集。モデルにはベティ・ペイジが起用されている。