スクールカウンセラー
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現状のようなスクールカウンセラーの勤務形態の不安定さは、児童・生徒・学生、保護者、教職員などの利用者側への影響だけでなく、スクールカウンセラー任用者の処遇的観点からも問題点があるとして不備が指摘されている[7]。例えば、文部科学省諮問機関である「教育相談等に関する調査研究協力者会議」が取りまとめた調査研究[70]によると、教育臨床現場において、時に自殺自傷行為虐待を始めとした事案の訴えがあるなど、思春期前後の多感な発達段階にある利用者の生命身体精神生活の根幹への関わりを日常的業務とし、そのほかにも、様々な価値観を持つ保護者や様々な信条を持つ教職員への助言・援助、ならびに緊急時の心のケアや予防的メンタルヘルスケアも業務範囲に含むとされるスクールカウンセラーの平均時間給は、全国的に約5000円前後の水準[70]とされ、一見すると数字上は要求される高度な専門性と比例し高給であるように見えるが、文部科学省の任用規程に掲げられている「週8?12時間」の勤務形態のうち、いまだ活用体制の整備が遅れている自治体があるため、実際の平均的な勤務形態は「週4?8時間」に留まっている現状がある[7]

したがって、平均月給換算すれば「8万円?16万円」程度でしかなく、さらに「非常勤任用」のために、保険料年金などの福利厚生出張費などの諸経費病気休暇傷病手当金などの社会保障も認められないことが多い[7]。その上、春休み夏休み冬休みなど、教育機関の長期休暇中は実勤務不可能として報酬が支払われないことが多く、賞与なども無いため、通算の実勤務は「年間35週」前後と見積もられている[70]。すなわち、スクールカウンセラーの平均年収は、額面で「140万円(最低70万円?最高210万円)[7][70]」という現状で、臨床心理学修士号医師免許の取得が必須要件とされるレベルの職務への任用にもかかわらず、収入はいわゆるワーキングプア水準[7][70]であり、1ヶ所の教育機関に勤務しただけでは安定した生活を送ることが困難であるため、複数の教育機関を掛け持ちしていたり、別の医療機関研究機関にも所属していたり、あるいはクリニック・相談室の私設開業と並行しながら、スクールカウンセラーとして活動している専門家が多い。

ただし、不安定な勤務形態が逆に奏功している点として、来校頻度が低いことで、児童・生徒・学生、保護者などの利用者や他の教職員との馴れ合いが生じにくく、その結果「第三者性・外部性の確保」を支持している側面があるため[7]、勤務形態の増加・拡大や常勤化を実施する際は、単に機械的に行うのではなく、「第三者性」「外部性」を継続的に確保できるよう、業務上の配慮や他の教職員との共通理解が特に必要とされる[7]
名称をめぐる混同

スクールカウンセラーという名称のため、「スクール」の部分を「学校」と和訳し、「カウンセラー」の部分から「心理士」を連想し、その2つを組み合わせ「スクールカウンセラー」=「学校心理士」と誤解される場合がある。確かに「学校心理士」という資格自体は日本に存在し、大学院課程修了を一部要件に含む専門性の高い心理士資格であるが、教育職員免許状の所有や教職員活動経験が基本要件とされている資格取得条件上、学校心理士有資格者には教員在職者や教職員OBが多く、そもそもとして既存の教職員関係者とは異なる「第三者性」「外部性」を有する心理職専門家であることが「第三者性・外部性の確保」として倫理的な大前提とされている文部科学省の任用規程においては、学校心理士は「スクールカウンセラーに準ずる者(準スクールカウンセラー)」のひとつという位置付けである[24]。なお「スクールカウンセラーに準ずる者(準スクールカウンセラー)」は、正規のスクールカウンセラー資格要件を満たす高度な心理職専門家人材が少ない地域などにおいて理由に合理性が認められる場合に任用されることがあり[24]、「スクールカウンセラーに準ずる者(準スクールカウンセラー)」も、便宜上自身を広義のスクールカウンセラーと呼ぶ場合はある。

また、日本のスクールカウンセラーは、アメリカにおいては「school psychologist」に相当する。アメリカにも「school counselor」という職種は存在するが、その業務は日本においてのキャリアカウンセラーに近い。一方、上記の「学校心理士」資格の英語表記は「school psychologist[71]」とされており、こちらも混同されやすい。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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