すなわちスクールアドバイザーは、一定の期間関わることを前提とする児童・生徒との直接的な心理カウンセリングは原則として担当せず、教職員への心理コンサルテーションが主な職務内容となる[26]。 一方、文部科学省が2008年度より開始した事業に「スクールソーシャルワーカー活用事業」がある[29]。 ソーシャルワーカー(ケースワーカー)とは、主に社会的弱者への福祉相談業務に従事する福祉職専門家であり、スクールソーシャルワーカー(SSW)は、その中で教育機関において当該の任に就く者のことである。資格要件は、社会福祉士や精神保健福祉士などの有資格者のほか、過去に教育や福祉の分野において活動経験がある者も含むなど、人材の専門性は様々である[30]。文科省によると、全国のスクールソーシャルワーカーの人数は3852人(2021年度)で、配置は全国の中学校区ごとに週3時間が基本。一方、スクールソーシャルワーカーをしている社会福祉士の雇用形態調査では、94%が非正規雇用という結果もある[31]。 スクールカウンセラーおよびスクールアドバイザーとの同異については、児童・生徒、保護者、教職員へ専門的知識によって関わる点は両者ともに共通するところであるが、スクールカウンセラーおよびスクールアドバイザーが、児童・生徒、保護者、教職員などの「個人」の理解を起点として発生した問題に対応するのに対し、スクールソーシャルワーカーは、それらの個人により構築されている「環境」の理解を起点として発生した問題に対応する[30]。 すなわちスクールソーシャルワーカーは、児童相談所を始めとした行政機関や社会資源などの外部機関と当該教育機関との連携環境の構築、あるいは保護者の経済状況や就労状況などの生活面で、特に重大な困難や福祉的援助の必要性が認められる家庭への、社会保障・生活保護提供などを含めた自立支援相談が具体的な職務内容となる[30]。 しかしながら、無論スクールカウンセラーやスクールアドバイザーの職務や視点に「環境」のコーディネート
スクールソーシャルワーカー
翻って起源をたどれば、そもそもスクールカウンセラー、スクールアドバイザー、スクールソーシャルワーカーらは、旧来教職員のみで対応してきた業務を細分化し、それぞれを高度に専門化させた上で外部化した物であり、そうすることでより充実した教育相談体制・教育機関支援体制を実現することを旨とする。したがって、混乱無き様それぞれの立場の職務を今以上に明確にすることや、その上で有効利用されるために周知徹底を行うこと、そしてそれぞれが専門家資源として効果的に機能するために有機的な連携を図ることで、教育体制により一層資することが今後望まれる[30][32]。 スクールカウンセラーおよびスクールアドバイザーと、スクールソーシャルワーカーとの事例対応の対比について、近年増加傾向にある「児童・生徒への虐待が疑われる」旨の架空事例を例に、下記に双方の主な担当職務内容をまとめ、その同異を示す[33]。ただし、それぞれの項目例はあくまでも概観であり、個別の事例により職務内容の実際は異なる[34]。教育現場において、教職員らにより「衣服・身体の不衛生さ」「傷・あざなどの不自然な外傷」「給食など食事への執着」「授業・学校行事に家庭が準備する物の不備」「家庭連絡・帰宅を極端に拒否する訴え」「周囲の大人への極端な甘え方」「情緒面・行動面の不安定さ」「問題行動増加・非行傾向」「遅刻欠席増加・不登校傾向」などに当てはまる問題が認められたある児童・生徒について、学校長や教頭などの管理職教員から、スクールカウンセラー、スクールアドバイザー、スクールソーシャルワーカーに専門的介入の依頼が行われた場合[35] スクールカウンセラー/スクールアドバイザーとスクールソーシャルワーカーの違いスクールカウンセラー(SC)/スクールアドバイザー(SA)
スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーとの対比
※スクールアドバイザーは原則的に「教職員への主な対応」のみ担当
【公認心理師/臨床心理士/精神科医/大学教員】スクールソーシャルワーカー(SSW)
【社会福祉士/精神保健福祉士ほか】
児童・生徒本人への主な対応家庭環境のヒアリング
臨床心理学/精神医学的分析・考察(心理面、発達面など)
心理カウンセリング(虐待(疑い)、二次的問題など)家庭環境のヒアリング
社会福祉的判断(生活面、経済面など)
※心理カウンセリングなどは専門外
保護者への主な対応養育状況のヒアリング
心理カウンセリング(育児ストレス、家庭問題など)
心理コンサルテーション(養育への臨床心理学/精神医学的助言)養育状況のヒアリング