メンタルケア先進国であるアメリカでは、1975年の「Education of All Handicapped Children Act
」の施行などにより、1970年代には既に、教育機関における心理職専門家「school psychologist」が社会的認知を得る土壌が築かれていたが、日本において心理職専門家が各教育機関に公的に参画し、「スクールカウンセラー」として特に広く知られるようになった契機は、1995年度から旧文部省が開始したスクールカウンセラー事業である[7]。同事業は、「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」として始められたもので、開始年度の全国154校を皮切りに、各都道府県の公立の小学校、中学校、高等学校へ心理職専門家としてスクールカウンセラーの配置・派遣が行われてきた。その後、2001年度からは、現文部科学省下において「スクールカウンセラー活用事業補助」と事業名を新たにし、全公立中学校への配置・派遣へ向けさらに本格的に制度化された。同事業開始後のスクールカウンセラー配置・派遣校は全国10,000校を超え、特に2008年度からは全公立学校への配置・派遣が計画的に進められている[7]。 文部科学省のスクールカウンセラー事業の直接的対象になっていない私立学校が、新たにスクールカウンセラーの導入を希望する場合や、継続的にスクールカウンセラーを配置する場合は、1975年から都道府県に対して行われている「私立高等学校等経常費助成費補助 ※「高等学校等」とは、「高等学校」「中等教育学校」「中学校」「小学校」「幼稚園」「特殊教育諸学校」を指す」を利用することで、文部科学省からの間接的補助を受けることができる[2]。 同補助事業は、同年(1975年)に議員立法として成立した「私立学校振興助成法」を法的根拠にもち、各都道府県が私立の「高等学校」「中等教育学校」「中学校」「小学校」「幼稚園」「特殊教育諸学校」に、教育条件を維持・向上するために必要な経費の助成を行っている場合、当該都道府県に対して文部科学省が補助を行うものである[18]。すなわち、【文部科学省「補助」】⇒【都道府県「助成」】⇒【私立学校「経費」】という流れで、文部科学省から私立学校へ間接的な補助が行われ、スクールカウンセラーの導入や維持に関わる経費は、同補助事業の対象となっているため[19]、都道府県側に助成の相談が可能である[2]。 また、臨床心理専門職大学院認証評価機関である日本臨床心理士資格認定協会は、各都道府県臨床心理士会と協力し「私学スクールカウンセラー支援事業」を2010年度から実施している[20]。 同事業は、これまで文部科学省のスクールカウンセラー事業の直接的対象とされてきた公立学校において、任用を受け職務に当たってきた臨床心理士が積み重ねた学校臨床の実践的知見を、文部科学省のスクールカウンセラー事業の直接的対象とされていない私立学校へ、実際の心理相談業務への従事という形で還元することを目的としている[20]。具体的には、特にスクールカウンセラーを未導入の私立学校に対し、日本臨床心理士資格認定協会がほぼ全額の経費支援を行い、私立学校側にとって低負担でのスクールカウンセラー導入機会を提供するものである。手続きとしては、同事業の ⇒募集要項にのっとり、あらかじめスクールカウンセラーの受入体制などを整えた上で、日本臨床心理士資格認定協会に ⇒応募申請書( ⇒同書記入例)を提出し、審査を通過すると経費支援が実施される、という流れの全国公募形式をとる[20]。 国公私立を問わず、小学校、中学校、高等学校、大学ほか、全ての教育機関が、新たにスクールカウンセラーの導入を希望する場合や、後任のスクールカウンセラーを配置する場合は、臨床心理士の職能団体である日本臨床心理士会、あるいは各都道府県臨床心理士会に連絡することで、登録会員臨床心理士への求人情報の周知や、臨床心理士の推薦を行う窓口となることが依頼でき、新規導入時・後任募集時の煩雑な周知広報や事務作業の一部分を、臨床心理士会の事務局に委ねることができる[21]。
私立学校対象事業
共通事業