スクリーン・プロセス
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モノクロ映画時代の過去の技術と思われがちだが、『ブルーサンダー』のコックピットのシーンで風防やヘルメットのバイザーに写り込む効果を狙って使われたほか、特にジェームズ・キャメロンはリアプロジェクションを好んで多用していた[注釈 1]。特殊な使われ方として、『アビス』の小型潜行艇のミニチュアに超小型プロジェクターを仕込んで潜行艇の球状の窓に見える乗員を表現している。

現在ではデジタル技術の方が自由度と結果が良いことから、ほとんど使われることはない。ただし、2019年にはディズニープラス配信開始のスターウォーズシリーズスピンオフ作品『マンダロリアン』にて導入された『ステージクラフト』に代表されるバーチャルプロダクション(舞台周辺を覆った高密度LEDスクリーン上にCGで制作した背景映像を投影し、カメラの動きと同期させることで俳優とCG背景を同時に撮影する技術)の普及が進んでいる。原理上はリアプロジェクションと同義であるため、古典的なこの手法が最新技術に置き換えられつつ継承されているともいえる。
フロントプロジェクションフロント・プロジェクション
スクリーンカメラとの中央にハーフミラーを設置することで光軸を一致させる。左下のイメージがカメラからの映像

演技する俳優の背後に専用のスクリーンを設置し、カメラと映写機の一体となった特殊な装置で、別に撮影した映像をカメラの位置から投射しつつ、手前の俳優の演技と同時に撮影する方法。カメラと映写機の光軸が一致しているので、俳優の身体に遮られてスクリーン上にできた影はカメラには映らない。リアプロジェクションと違い、大きな背景の投影に向いており、ホットスポット(中央が明るく見える光源ムラ)が出にくい。プロジェクターの光軸に対して1度でもずれると反射光量が激減するため、パンやティルトはできないとされている(原則はフィックス)が、光軸からずれることのないノーダルポイントを中心に旋回するヘッドを使えば可能となる[注釈 2]

スクリーンには、映写機から投影された光をそのままの方向に集中して反射する特殊なものが使われる[3]。これは、交通標識などの反射材としても使われる商品「スコッチライト」と原理的に同じだが[3]、マイクロガラスビーズがむき出しの3M社製露出レンズ型再帰性反射スクリーン、ハイゲイン7610が使われる。『2001年宇宙の旅』以前にも使われていたが、この作品で実用化された[3][注釈 3]。俳優の身体にも背景用の画像が投射されてしまうが、非常に強いスクリーン反射輝度に露出を合わせると、俳優などの露出は極端にアンダーになってしまう(ちょうどシルエットのような状態だが、わずかに投影された映像は見える)。そのスクリーン輝度に負けない照明を与えてやると、結果的に俳優にも投影されている背景映像はかき消されてしまう。俳優などが面積が少ないものがスクリーンの手前にある場合に適するが、前景の一部や全部に炎などの発光体やガラスや金属、白いシャツなどの反射輝度の高いものを使用するとその回りにグロウが生じるので、事実上そのような被写体には向かない。

リアプロジェクションと比べ、合成される映像がスクリーンを透過しないことから鮮明度が高く[3]、合成結果が比較的自然に見えるというメリットがあるが、透明なガラス越しなどは投影する光が現実と違って二度通過するため、その部分が暗く写り、不自然になる傾向にある[注釈 4]

現代では高輝度かつ高精細のLEDウォールスクリーンの登場とコンピュータグラフィックスの進歩とにより、背景画像を映写ではなく発光素子であるLEDマトリックスアレイに直接送って背景画像を描画するインカメラVFXが利用できる。カメラ・被写体・背景画像の三次元関係をリアルタイムで計算し(マッチムーブ)、カメラ位置に合わせた背景画像を高輝度のLEDマトリックスアレイで構成される巨大スクリーン[注釈 5]に描画するものである[5]

インカメラVFXは、カメラワークに対して自然な背景画像の移動および、カメラレンズの焦点位置に制約されない自由なカメラワークを可能にした。特に実写ロケが予算上、制約を受けるテレビドラマにおいて、背景を別撮りしつつもクロマキー合成を要せずカメラ内で合成が完結する点で、時間と天候に左右されない撮影を可能にした[6]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ターミネーター』『ターミネーター2』など。
^ 例:『ターミネーター』で爆発するタンクローリーの前にてリンダ・ハミルトンが逃げるカット。フロントプロジェクションなのにカメラはパンしている。
^ 『2001年宇宙の旅』は8×10インチのスチル投影に65ミリフィルム撮影。
^ 特に戦闘機のコックピットやコップの水など、屈折が絡む部分は極端に暗くなり、非常に不自然に写る。
^ 一例を挙げると、曲面長 9,000 ? 縦 4,450 mm のサイズ[4]

出典^ a b .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}"スクリーンプロセス". 精選版 日本国語大辞典、デジタル大辞泉、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2023年1月30日閲覧。


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