スクリーニング_(医学)
[Wikipedia|▼Menu]
この原則は医学的スクリーニングの基本的な国際基準として、現在も広く適用されている[26][27][22]。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}
スクリーニングのWilson and Jungner基準[26][27][28]


1 その疾病は、重要な健康問題でなければならない

2 疾病に対して治療が必要である

3 診断と治療のための施設が利用可能でなければならない

4 疾病の潜伏期がある

5 その疾病に対して適切な検査や試験方法がある

6 その検査は住民に受け入れられるものでなければならない

7 疾病の潜伏期や発症してからの期間を含んだ自然経過が十分に理解されている

8 誰を治療するかについて、合意された方針がある

9 症例を発見するための総費用は、医療費全体との関係で経済的に均衡のとれたものでなければならない

10 症例発見は「一期一会」ではなく、継続的なプロセスであるべきである[29]

1968年のウィルソン基準の後、40年にわたって基準のブラッシュアップが行われてきた。そして、40年後の2008年、新しいゲノム技術の出現に伴い、WHOはこれらを新たな理解のもとに以下のように統合・修正した[30][31]
過去40年間に提案された新しいスクリーニング基準の統合


スクリーニングプログラムは、認識された必要性に応えるべきである

スクリーニングの目的は、当初から定義されなければならない

対象集団の定義が定められていることが必要である

スクリーニングプログラムの有効性を示す科学的証拠があるべきである

プログラムは、教育、検査、臨床サービス、プログラム管理を統合したものでなければならない

スクリーニングの潜在的なリスクを最小化するためのメカニズムがあり、品質保証があるべきである

プログラムは、情報に関する権利と守秘性、自律性の尊重を保証するものでなければならない

プログラムは、対象者全員に対する公平性とスクリーニングを受ける機会を促進するものでなければならない。

プログラムに対する評価は、事前に計画されていなければならない

スクリーニングで得られる利益は、害を上回るべきである[31]

スクリーニングの様々なタイプ
対策型検診と任意型検診

対策型検診」:集団全体の死亡率減少を目的として、一定の年齢範囲の住民など全員に公共政策として行う[32][33]。有効性が確立した検診であり、利益が不利益を上回ることが基本条件となる[33][2]。日本で行われている対策型検診のがん検診は、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5種である[32]
「任意型検診」:無症状の個人が自費で行う[32]。人間ドックなど[32][33][2]。詳細は「対策型検診」を参照

対策型がん検診と任意型がん検診対策型がん検診(住民検診など)任意型がん検診(人間ドックなど )
日本胃がん 大腸がん 肺がん 乳がん 子宮頸がん種々
目的対象集団全体の死亡率を下げる個人の死亡リスクを下げる
検診提供者市区町村特定されない
検診対象者検診対象として特定された集団構成員の全員(一定の年齢範囲の住民など) ただし、無症状であること。症状があり、診療の対象となる者は該当しない定義されない。ただし、無症状であること。症状があり、診療の対象となる者は該当しない
検診費用無料、あるいは一部小額の自己負担が設定される全額自己負担。ただし健保組合などで一定の補助を行っている場合もある。
提供体制公共性を重視し、個人の負担を可能な限り軽減した上で、受診対象者に等しく受診機会があることが基本となる提供者の方針や利益を優先して、医療サービスが提供される
受診勧奨方法当該がんの死亡率減少効果が確立している方法を実施する一定の方法はない
検診方法当該がんの死亡率減少効果が確立している方法を実施する当該がんの死亡率減少効果が確立している方法が選択されることが望ましい。ただし個人あるいは検診実施機関により、死亡率減少効果が明確ではない方法が選択される場合がある
利益と不利益利益と不利益のバランスを考慮する。利益が不利益を上回り、不利益を最小化する検診提供者が適切な情報を提供したうえで、個人のレベルで判断する
受診の判断がん検診の必要性や利益・不利益について、広報等で十分情報提供が行われた上で、個人が判断するがん検診の限界や利益・不利益について、文書や口頭で十分説明を受けた上で、個人が判断する。
感度・特異度特異度が重視され、不利益を最小化することが重視されることから、最も感度の高い検診方法が必ずしも選ばれない最も感度の高い検査が優先されがりであることから、特異度が重視されず、不利益を最小化することが困難である
精度管理がん登録を利用するなど、追跡調査も含め、一定の基準やシステムのもとに、継続して行われる一定の基準やシステムはなく、提供者の裁量に委ねられている
具体例健康増進事業による市区町村の住民対象のがん検診(特定の検診施設や検診車による集団方式と、検診実施主体が認定した個別の医療機関で実施する個別方式がある)検診機関や医療機関で行う人間ドックや総合健診、保険者が福利厚生を目的として提供する人間ドック

スクリーニングとモニタリング

「スクリーニング」:無症状の集団を対象に検査を行い、目標とする疾病の罹患者や発症が予測される患者をふるい分ける[1]
モニタリング」:リスクの高い無症状の個人を対象に、長期の健康状態を観察する。対象者の募集を積極的に行なわず、検査を受けるかどうかや、検査方法を決める際に、個別に医療機関と話し合いを行う[22][23]。よりリスクの高い個人向けの選択的活動であり、検査と異常が見られた場合の精密検査を受けるか否か、さらにその方法を選ぶことができる。

スクリーニングプログラムとモニタリングプログラムの特徴特徴スクリーニングプログラムモニタリングプログラム
目的無症状の人の疾病の早期発見無症状の人の疾病の早期発見
目標公衆衛生上の利益が不利益を上回る条件で、死亡率を抑え、できれば罹患率をおさえるよりリスクの高い個人が、十分な説明を基に、自分にとって利益が不利益を上回るか自分で判断し、決定できるようにする
受診者募集方法積極的な募集消極的な募集
受診者募集の目的スクリーニングプログラムの有効性確保のために、高い受診率を達成すること家族と臨床医との間で共有される意思決定
受診者質の高い科学的根拠に基づいて定義される対象集団共有型意思決定プロセスを経て、受診を希望する人
プロセス治療と結びつけた呼び出しの仕組みをもつスクリーニング手順治療と結びつけた呼び出しの仕組みをもつスクリーニング手順
有効性の根拠乳がん、子宮頸がん、大腸がんについては確立されているなし

2018年、IARCは、このスクリーニングプログラムとモニタリングプログラムの特徴が記載された「原子力事故後の甲状腺健康モニタリングについてのレポート」を公表し、原子力事故後の甲状腺健康モニタリングの長期戦略に関して二つの提言を行った。国際がん研究機関(IARC)専門家グループの提言
提言1:原子力事故後に、特定地域の全住民を対象とした甲状腺スクリーニング検査は推奨しない[34]
提言2:原子力事故後に、「リスクが高い個人(胎児期、小児期または思春期に100 - 500ミリシーベルト以上の甲状腺線量を被ばくした人)」に対しては長期の「甲状腺モニタリングプログラム」を検討すること[35][36]

2020年、国連の放射線専門部会である「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」は、福島では甲状腺被ばく線量が、最大でも100ミリグレイ(100ミリシーベルト)よりもかなり低く、福島県全体の成人では平均 5.5ミリシーベルト以下であったとしている[37]。この数値は、がんで亡くなる人が明らかに増加するとされる 100ミリシーベルトを大きく下回り、福島第一原子力発電所事故に起因する被ばくによって将来、健康影響が確認される可能性は低いと評価している[38][39]。詳細は「過剰診断#福島県」を参照
マス・スクリーニング

リスク因子のあるなしに関わらず、全員に対し行われるスクリーニング。例えば新生児マススクリーニングは国内で生まれた新生児全員に対するスクリーニングを目標としている[40]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:80 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef