ジョック
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背景には、スポーツ以外の「情熱的な趣味」を持つ者をあくまで変人と見做す風潮があり、加えて、その者が持つ趣味の「知識」の要求の度合いが大なればなるほど、その者が受ける他者からの「ナード」としての認識も強くなり、もって「ジョック」の対極に近づいてゆく[2][3][9]コンピュータ・ギークのハッカーエイドリアン・ラモ

例として、

ギーク(コンピュータ系おたくなど)

あらゆる文化系

音楽系(パンクメタルEMOなどに代表される、ロック系統の特定の音楽に傾倒する者)

バンド・ギーク吹奏楽マーチングバンドなどに携わる者)

ゴス

インテリ

などが挙げられる。「ナード」は、男の王道たるジョック、女の花道たるチアに対して、これら「メインストリーム」から外れた二流の者の至る道――平易には「敗者の受け皿」であるとしばしば捉えられる[2][3][10][5]

ジョック対ナードという対立の図式は、高校や大学などの学校社会のみならず、米国における社会や文化を語るうえで不可欠となってくる要素の一と考えられている。例えば、政治を語るときにリベラル左派)の多くがナードを出自とするということは無視できず、大衆文化を語るときにほぼ全ての文化人がナードを出自とするということは無視できない、などである[11][5]。特に映画監督などはナードの出自の物が多く、ナードが特殊能力を手に入れてヒーローになる、といったストーリーはアメリカの映画でよく見られる。その場合、ジョックは犠牲者、あるいは脅威に対する噛ませ犬として描かれることになる。

多くの同性愛者らも、ジョックに性的関心や憧れを抱くと同時に、ジョックらからいじめを受けたりや無視されたりすることがしばしばである。ゆえに合衆国の社会における性的マイノリティーの立場を彼らが初めて体感する相手でもある。
階層構造の図象青;男子 桃;女子 緑;男女双方にあり得る。なお、形がピラミッド型であるのは便宜のためであるに過ぎず、必ずしも各層の厚みを意味してはいない。ポール・グレアムなどはこれについて、おおよそセイヨウナシのような形を持つのではないかと推測している[3]

アメリカ合衆国の学校社会において形作られるヒエラルキーの序列は概ね次のように捉えられる[2][12]

ジョック(Jock)

クイーン・ビー(Queen Bee):直訳では「女王蜂」、意訳では「学園女王/プリンセス」。溢れるカリスマと美貌。多くの場合チアリーダーのレギュラーメンバーやキャプテン、まれに演劇部の主演女優級部員。総称「クイーンズ」(Queens)。[13]

サイドキックス(Sidekicks):クイーン・ビーの脇侍。1名のクイーン・ビーに対し、通常、2名からなる。

プリーザー(Pleaser):女子の場合はクイーン・ビーおよびサイドキックスの取り巻きで、取り巻きながらねだること(Please)もできる立場。男子の場合は、下の立場の者へのたかり(Please)を活発に行う、ジョックの子分。

ワナビー(Wannabe):クイーン・ビーおよびサイドキックスの取り巻きで、取り巻きながらも立場の上昇―サイドキックスになること―を夢見る(Wanna be)立場。

メッセンジャー(Messenger):使い走り(パシリ)の者。

プレップス(Preps):文化系の上澄み、(男子の場合)ボンボン。プレッピー(Preppy)とも。大学進学を目的としたプレップ校(Prep school。私立高校)から。

以上がWinner(勝者)。以下はLoser(敗者)。

スラッカー(Slacker):抜け作、馬鹿。

フリーク(Freak):マニア、奇人。

ギーク(Geek):おたくなど。ナードに属する。

ゴス(Goth):ゴス。ナードに属する。

ブレイン(Brain):ガリ勉。ナードに属する。

被虐者(Target):いじめの標的。ただし必ずしもナードに属するとは限らない。

不良(Bad boys&girls):不良少年および不良少女、ギャングなど。階層外(The Out of caste)。

不思議少女(The Floater):はぐれっ子。典型は常に図書館にいる者など。階層外。

こうした階層構造の様相と、その各々の構成者達の類型については、アメリカ合衆国の社会において一般性の高いステレオタイプであることから、大衆文化の枠内においては、学園を舞台とする物語作品などでの常道にあたる題材・素材となっている[14]
大衆文化

米国の映画テレビドラマなどでは、青春をテーマにしたものを除けば、必ずといってよいほど悪者として登場し、ことにホラー映画などではしばしば殺害(自殺含む)の対象となる。その背景には、テレビディレクター映画監督といった職業の多くがナード出身者で占められているという事情、また、比率からして受け手の多くが非ジョックスであるということを念頭に置いた、マーケティングの点での事情があるものと見られる[15]

題材とする娯楽作品は枚挙に暇がないものの、近年のものでは、『ミーン・ガールズ』、『ゴシップガール』、『glee』『パパにはヒ・ミ・ツ』、『ナーズの復讐』、『ハイスクール・ミュージカル』、『バフィー ?恋する十字架?』、『ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT』、『RWBY』などといった映像作品群がその典型として名高く、ジョックとあわせてナードという表現も劇中に登場する。

対する「ナード」に焦点を当てた近年のものとしては、コメディミュージシャンアル・ヤンコビックが発表した「White & Nerdy」という楽曲がポピュラー音楽の舞台に名高い[16]。その映像を主因として好評を博すに至ったこの作品は、「ナード」の最たる典型像としての「ダサくひ弱な白人ギーク」たちが、それとおおよそ遠く懸け離れた存在(→ねじれの位置)としてのギャングスタラッパーたちと共演するもので、そのシングル盤はこれを収めたアルバムとともに、その発売からたちまちビルボードHOT 100に代表される数多の音楽チャートを席巻することとなった[16][17]

女の子にモテず、チビで容姿も悪く運動もダメなひ弱なギークを主人公として、彼がある局面で英雄的勇気を示すことで認められ、憧れの女の子の心をつかむサクセスストーリーも人気が高い。


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