ジャスミン革命
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全国の高校・大学の閉鎖や、今後2年間での30万人に及ぶ大規模な雇用緊急措置を発表したが、一連の暴動はテロリストによるものだと非難する姿勢は変わらなかった[23][24]。各政党からは、大統領に対し警官隊による発砲の中止を求める声があがった[25]

カスリーヌでの弾圧は裏目に出た。11日、デモはチュニスをはじめ全国に広がった。暴徒は車、銀行、警察署といった政府関係庁舎への放火、また商店街において略奪行為を行った。警官隊はこれを解散させるため威嚇射撃、火炎瓶や催涙弾の使用を行った。内務省より死者は延べ23人になったと発表された(実際にはこの時点で50人以上が死亡しているとも言われた)[26]

12日には、デモの規模は10倍に膨れ上がった。首都チュニスとその周辺地域には、20時から翌朝午前6時までの夜間外出禁止令が発令された[27]

13日には、ベン=アリー大統領が軍以上に信頼を置く警察部隊が導入された。警官はデモへの参加の有無にかかわらず市民を屋上から狙い撃ちにし、チュニスで数十名の死者、数百人に負傷者が発生した。戒厳令が発令され、軍に対して市民の殺害命令が出されたが、軍部はその命令を拒否した。軍部と警察部隊で対立が生じ、大規模な戦闘の危機が生じたが、軍部は警察部隊への攻撃態勢を取らなかったため、かろうじて均衡状態が保たれた。

後ろ盾であった軍の離反を招いたベン=アリー大統領は、譲歩せざるを得ないと判断した。モハメッド・ガンヌーシ首相は、治安対策が不十分としてカシム内務大臣の更迭を改めて発表し、また、デモにおいて拘束された参加者らを釈放する方針を表明した[28]。夜の演説ではベン=アリー大統領が自ら2014年の次期大統領選挙で不出馬、退任すると発表した[29][30]。食料品の高騰に対する対策、言論の自由の拡大、インターネット閲覧の制限の解除などの政策の履行を約束した。一連の騒乱については「側近に裏切られた」と釈明し、治安部隊に対し、デモ隊への発砲を禁じたと発表した[31]。しかし夜になっても銃声は鳴りやまず、死者が発生した。秘密警察が大統領支持派を装って、街宣車で政府支持を叫びながら外出禁止令で無人状態の街中を走り回り、反体制派を脅しているという噂が流れた。市民たちは、夜が明けたら再び独裁体制へ逆戻りしてしまうのではないかと恐れた。それが14日のデモへとつながった。
政権崩壊

14日のデモは、今まで近づくことさえためらわれた内務省前にまで及んだ。政治犯が釈放され、デモ隊や支持者とともに喜びを分かち合った。ベン=アリー大統領は非常事態宣言を行い、夜間外出禁止令を全土に広げた。また、ガンヌーシ内閣の総辞職と2014年実施予定の総選挙を大幅に前倒しし、今後半年以内に実施する考えを表明した[32]

しかし、ここにきて政府は内部から崩壊し始めた。メズリ・ハダドユネスコ大使が、治安部隊がデモ隊に発砲したことに対して抗議を行い大統領に辞表を提出した[33]。ベン=アリー大統領はデモ隊への実弾使用をラシド・アンマル陸軍参謀総長に迫ったが、逆に「あなたはおしまいだ」と、不信任を突きつけられた[34][35]。ベン=アリー大統領は、政権維持の手段をすべて失った。

17時49分、ガンヌーシ首相がテレビで「ベン=アリー大統領は国を去った」と声明を読み上げた[13]
その後
ベン=アリー政権関係者の処遇

ベン=アリー大統領は、旧宗主国フランスへの亡命を希望しパリに向かった[36]が、ニコラ・サルコジ大統領がベン・アリー大統領の入国を拒否した[37][38]。そこでサウジアラビアへ向かい、そこへ亡命した[39][40][41]。脱出の際、ベン=アリー大統領の妻が中央銀行から1.5トンもの金塊を持ち出したと報じられた[42]。一部の親族は乗り込んだ飛行機の機長に離陸を拒否され、拘束された[43]。暫定政権は早い段階でベン=アリー前政権の関係者の身柄拘束に乗り出し、16日ごろにはすでにカシム前内務大臣など政権幹部の多くが拘束されたとの情報も流れた[44][45][43]

ベン=アリー前大統領が去ったあとの親族の豪邸では暴徒が略奪行為に走り[46]、1月16日には大統領宮殿で銃撃戦も発生[47]。1月26日には暫定政権がベン=アリー前大統領ら一族の逮捕状を請求し、国際刑事警察機構を通じて国際指名手配した[48][49]

ベン=アリー前大統領はサウジアラビア亡命後、前政権時代の公金横領土地不正取得、暴力扇動、麻薬密売といった容疑、また一連の反政府運動においてデモ鎮圧を軍に命じ参加者を多数死亡させた容疑などで起訴され、本人不在のまま軍事法廷が開かれた。


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