公園は研究所から遠く、しかもハイドは殺人犯として警察に追われる身と来ては、薬で再びジキルに戻るためには友人のラニョンに頼るほかなかった。ラニョン宅へ行って薬品によりジキルに戻ると、その過程を見守ったラニョンは大きな衝撃を受け、それが命取りになった。
家に戻ったものの、自然発生的な変身の頻度は増し、また元に戻るために必要な薬の量も増える一方で、今や無力感に囚われている。
以前エンフィールド、アターソンとの会話を突然中断し、窓を閉めて姿を消したのも、変身が始まろうとしていたからだった。
やがて薬品の調合のために使用していた特殊な材料の備蓄が不足し、新しく調達した材料で調合したものの、従来の化学変化が現れない。
最初に購入した材料に含まれていた不純物が重要な効果をもっていたものと推測し、それを探し回らせたものの、すべて失敗。
ハイドからジキルに戻る薬品はまさに尽きようとしており、この手記を書き終えた時には永久にハイドになってしまっているだろう。
ハイドが処刑されるか自殺するかは分からないが、それはもはや私とは無縁な人物に関わることで、手記の終わりが私の人生の終わりである。私は、あの不幸なヘンリー・ジキルの生涯を閉じる
と手記を結ぶ。この一文を以てこの小説は終わる。
ジキル博士のモデルウィリアム・ブロディーの人形現在のブロディーの邸宅(パブに改装)
18世紀半ばのエジンバラの市議会議員で、石工ギルドの組合長をしていたウィリアム・ブロディー(William Brodie)がジキル博士のモデルとされる。ウィリアム・ブロディーは昼間は実業家であったが、夜間は盗賊として18年間に数十件の盗みを働き、スコットランド間接税務局本部の襲撃計画が露見して1788年に処刑された人物であり、ロバート・ルイス・スティーヴンソンとウィリアム・ヘンリーは、この事件をもとに戯曲『組合長ブロディー、もしくは二重生活』を書き、『ジキル博士とハイド氏』を書く2年前の1884年にロンドンのプリンス劇場で初演している。
また、同じく18世紀半ばの外科医で解剖学者のジョン・ハンターは、その医者としての高名な昼の顔と、解剖学者(遺体を損壊し死後の復活を妨げるため同時代では嫌悪されていた)や死体調達のための墓荒しをしたとされる裏の顔、また建物が表通りに面した医院と裏通りに面した解剖学教室・死体搬入口という構造がジキル博士の家に類似するモデルとされている。
また、ジキル博士が自作の薬を自分に使用するエピソードは、フランスの医師シャルル=エドゥアール・ブラウン・セカールが、性的能力を回復する目的でモルモットとイヌの睾丸から抽出した液体を自分に注射した事件がインスピレーションを与えたといわれる[2]。 映画化、テレビドラマ化、ラジオドラマ化、ミュージカル化、ゲーム化などがされている。 舞台を日本に置き換えた翻案作品や、後日談を含む。詳細はリンク先を参照。
日本語訳
『ジーキル博士とハイド氏』新潮文庫 新潮社 (翻訳:田中西二郎) ISBN 4102003010
『ジーキル博士とハイド氏』岩波文庫 岩波書店 (翻訳:海保眞夫) ISBN 4003224221
『ジーキル博士とハイド氏』岩波少年文庫 岩波書店 (翻訳:海保眞夫) ISBN 4001145529
『ジーキル博士とハイド氏』角川文庫 角川書店 (翻訳:大谷利彦) ISBN 4042114040
『ジキル博士とハイド氏』 講談社青い鳥文庫 講談社 (翻訳:加藤まさし) ISBN 4061485024
『ジキル博士とハイド氏』 世界名作文庫 ポプラ社 (翻訳:百々佑利子) ISBN 4591081079
『ジキル博士とハイド氏』 創元推理文庫 東京創元社 (翻訳:夏来健次) ISBN 4488590012
『ジーキル博士とハイド氏』 明治図書中学生文庫 明治図書出版 (翻訳:清水知哉) ISBN 4186526060
『ジーキル博士とハイド氏』 恒文社 (翻訳:大佛次郎) ISBN 4770409303
『ジキル博士とハイド氏』 フォア文庫 岩崎書店 (翻訳:各務三郎) ISBN 4265010776
『ジーキル博士とハイド氏』 光文社古典新訳文庫 光文社(翻訳:村上博基)ISBN 4334751954
『ジキルとハイド』 新潮文庫 新潮社 (翻訳:田口俊樹) ISBN 4102003037
『ジキル博士とハイド氏 新訳』 角川文庫 KADOKAWA(翻訳:田内志文) ISBN 4041023254
メディア展開
原典をベースにしている作品
ラジオドラマ
ジキル博士とハイド氏(1932年)
映画
狂へる悪魔(1920年、アメリカ)ジキル博士とハイド氏(1920年、アメリカ)ジキル博士とハイド氏(1920年、ドイツ(en:The Head of Janus